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ルカとジョーと秘密のスズラン  作者: しんた☆
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第8章 めざめるとき 5 (最終話)

長らく続けておりました「ルカとジョーと秘密のスズラン」もやっと最終話にこぎつけることが出来ました。お付き合いくださった皆様、ありがとうございました。

どうか、最後に評価をお願いします。

「おい、ルカ。例の医療体制について、教えてほしいって、陛下から連絡が来ているぞ。」

「分かった。午後には伺えると伝えてくれる?」

「了解。」

「ああ、ジョー!待ってくれ。王宮に行くなら、この書類を届けてくれ」


 隣でロベールがペンを走らせている。「まだかぁ」とせっつくジョーは余裕の笑みだ。


「よし、出来た。ローリー殿下の元に。」

「へぇ、ローリー殿下が仕事してるのか?」

「教育関係はローリー殿下が管理されるそうだ。うちの領地の教育レベルが高い理由を知りたいんだと。それにしても、よくこんなシステムを考えたもんだな、ルカ。」

「みんなが小さい時から読み書きや簡単な計算が出来たら、だまされたりバカにされたりしなくなるだろ?教育の場は貧富の差に関係なく整備したかったんだ。」


 書類を受け取ったジョーが執務室を出ようとすると、廊下の向こうから快活な足音が聞こえてきた。


「おお、ジョー。久しぶりだね。元気にしていたか?」


 挨拶して出かけていくジョーを見送って、足音の主は執務室にやってきた。


「やあ、ルカはいるか?」

「アーチャーさん!どうされました?」


 アーチャーは真面目な顔でルカのデスクの前までくると、にやりっと笑って言う。


「実は、家族で旅行に出かけようと思うんだ。ルカもそろそろ仕事にも慣れて来ただろう?あとの事、頼んだぞ。」

「えっ!ちょ、ちょっと!」

「ああ、餞別なんて気にするな。ほんの1か月ほどの旅だ。その間、首相代理として存分に腕を振るってくれ。」

「なっ!1か月も?! ローリー殿下の婚約式の準備は? 王妃様のご懐妊の公表時期についての話し合いは? 貴族たちのもろもろの陳情書については?」


 アーチャーはお腹を抱えて笑った。


「さすがだ、ルカ。今抱えている問題を全部把握しているじゃないか。それなら安心だな。では、家族を待たせているので失礼するよ。」

「冗談じゃないですよ、アーチャーさん!」


ルカが止めるのも聞かず、さっさと部屋を出るアーチャーを追いかける。


「あ、待ってよ、アーチャー! おい、浮かれてんじゃないぞ!くそ親父!」

「あははは。何年首相を続けていると思っている。首相になって初めての旅行だぞ。浮かれて当然だ!」


 笑い声を響かせて、あっという間にアーチャーは旅立った。


「ふふ、くそ親父か。ちょっと前のおまえからは考えられないセリフだな。」

「まったく、冗談じゃないよ。」


 諦めて執務に戻ると、手元にとある陳情書が届いていた。ソリターリオ山を国定公園にしてほしいとのことだった。ルカとジョーの話は、今や昔話の魔法使いの絵本の続編として、出版されており、ソリターリオ山はその聖地として、多くの観光客が押し寄せているという。


「ソリターリオか、懐かしいな。」

「ああ、お前たちがオオカミに襲われそうになって半泣きで帰ってきた山のことか。」

「ロベール、それに触れるのはやめてくれ。」

「なんだ、あの本のあとがきにもそのように書いてあったぞ。」


 眉間のしわを深くして大きなため息をつく主を、面白そうに眺めるロベールだった。


「あの本の編集、武官時代のジョーと同室だったあのマッチョだろ?はぁ、言わなきゃよかった。」


 小さなノックがして、侍女が紅茶を運んできた。カタカタと少し震えている。ロベールとルカに緊張が走った。


「お仕事中失礼いたします。奥様からお茶のお供にと…」

「そうか。ありがとう。」


 侍女の手元から目を離さずに言うと、困ったような顔の侍女がいきなり座り込んだ。


「も、もうしわけございません。私は、止めたんですが、奥様がどうしても作りたいとおっしゃって。そして、旦那様にも食べてもらうのだとおっしゃるので…。」


 まるでこの世の終わりのような侍女の嘆きにそっとトレイの上を確かめると、真っ黒に焼けた四角い物がぽつんと申し訳程度に乗っていた。


「ああ、ルカ。俺は甘いものは苦手でな。愛妻の手作りなんだし、ルカに譲るよ」


 ルカは、そんな黒い物体を顔色ひとつ変えずに手に取ると、慣れた手つきでティースプーンを使って、炭化したの部分を削り取った。すると、中から少しだけ焼け残ったクッキーらしきものが見えてくる。それをそっと口に運ぶと、困ったように侍女を慰めた。


「いつもすまないね。それで、彼女はやけどなどしなかったかい?」

「はい、十分に気を付けておりましたので。」

「ああ、今日のクッキーはオレンジの風味が効いているね。ホリーには、もう少しだけ焼き時間を短くしてくれと伝えてくれるかい?」

「ああ、なんと慈悲深いお言葉。そのようにお伝えします。」


 侍女は拝むようにしてそれだけ言うと、そそくさと帰っていった。


「ルカ、お前の寛容さには頭が下がる。ところで、最近アリア様を見かけないが、何か聞いているか?」

「ああ、僕も気づいていたんだけど、時折、王宮の壁からするりと顔を出すぐらいで、それも随分減ってきたんだ。さて、そろそろ視察に行く時間だな。留守を頼むよ。」

「ああ」


 ルカは馬車に乗って孤児院や学校を視察する。学校の無償化ができ、貧しい子供もちゃんと学校に通えるようになった。途中で、懐かしいソリターリオが見えてきた。この山に登ったあの日、出会ったオオカミたちの事は忘れない。


「ここは国定公園として、むやみに奥まで立ち入らないようにしてもらえるよう陛下に頼んでおこう。旧ゴードン邸の裏手辺りまでを出入り自由にして、スズランの苗を売ったら、喜ばれそうだ。」


 アリアはどうしているだろう。少し前からアリアと連絡が取れなくなっていることに、ルカは気づいていた。あのスズランも魔力を失っていた。魔法使いの弟子のミラー家もまだ見つかっていないけれど、これでよかったのかもしれない。コートミスティは近隣の国々としっかりとした友好関係を結んでいる。


「さて、帰ろうか。今日のクッキーについてのホリーの言い訳が楽しみだ。」



~ おわり ~


最後までおつきあいくださって、ありがとうございました♡

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