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ルカとジョーと秘密のスズラン  作者: しんた☆
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第8章 目覚めるとき 1


  王宮救護班は目の回る忙しさだった。武官の中には命を落とした者もいて、アーチャーは、すぐさまアレックスと今後の対応について協議していた。


「ルカ、腕は上がるか?」

「師匠、治癒魔法をありがとうございます。もう、ほとんど違和感もありません。」

「そうか、それは良かった。では、これからフィリップと出かけてくれ?」

「分かりました。」


 ルカが立ち上がると、ちょうどジョーが部屋に入ってくるところだった。


「ルカ、怪我をしたんだって?」

「ジョー!もう起きても大丈夫なのか?」


 同時に声をあげて、同時に笑い合った。


「とりあえず、今から姉上を救出してくるよ。義兄上、よろしくお願いします。」


 フィリップはバイオリンケースを握り締めて立ち上がった。


「アーチャーがビヨンテと会見を開くことになっている。きっと例のチェダーコフもそれを阻止するべくやってくるだろう。おまえたちには、その隙にスカーレット救出作戦を遂行してもらう」

「分かりました。」

「ルカ、気を付けて!」

「ありがとう、ジョー!」


 馬車に乗って国境付近まで来ると、馬車を待機させてルカがグリフィンに変化して空からの移動となった。人目につかなそうな森にいったん着陸すると、あとは何食わぬ顔でチェダーコフ侯爵邸まで歩いて行った。アリアの魔法で、服装はイーダでは至って普通のスーツ姿。変化したときは、お互いを指さして笑い合ったものだ。


 そして、ついに侯爵邸に辿り着くと、さっさと塀を飛び越えて、屋敷の中に紛れ込んだ。


「まったく、なんだろうねぇ。ここの住人は! 最高級のサプリメントを与えられているって言うのに、文句ばかり言ってるそうじゃないか。」

「しかたないよ。なんでも、他国から誘拐され…」

「しーっ!うかつなことを言うもんじゃないよ!」


 どうやら下働きらしい夫婦が、文句を言いながら離れから本館に戻っていくところのようだった。潜入組の二人は、思わず頷き合った。そっと建物に近づくと、カーテンの隙間から様子を伺った。


「冗談じゃないわ。あんなもの、気持ち悪くて食べられない!」

「仕方ないですわ。この国はこういう物を食べて暮らしているのでしょう。」


 フィリップは小さくため息をついて、他の建屋を見回した。すぐ隣にも似たような建屋がある。フィリップはすぐさまそちらに近づいて、中の様子を伺った。すると、いきなり管楽器の大きな音がして、もう少しで声をあげてしまうところだった。


 やはり、ここではなかったのか。唇をかみしめていると、不意に袖口が引っ張られ、ルカが目で合図する。それに従って付いて行くと、もう少し奥に、やや小ぶりな建屋が木々に隠れるように建っていた。

 そっと違づくと、微かにバイオリンの音が聞こえてくる。


「これは!」


 フィリップは本館とは反対側に身を隠しながら、出来るだけ小さな音で、背負っていたバイオリンを弾き始めた。 途端にタタタっと足音がして、玄関のドアが開けられた。

 そこには、口に手を当てて、声を出さないようぐっと堪えているスカーレットがいた。

 ルカは、すぐさま二人をその建屋に押し込んで、ドアを閉めた。


「フィリップ!!」

「スカーレット、無事で良かった!」


 二人は弟がいるのも忘れて、ヒシっと抱き合った。それを目に入れないように、ルカは窓辺に向い、外の様子を伺った。


「ねえ、ここは早々に抜け出した方がよさそうだよ。さっきの建屋の人が、どこかに連れていかれてる。」

「分かった。ルカ、頼めるか?」

「ああ、いいよ。姉上、荷物はないの?」

「ええ、ここで与えられたものなんて、何もほしいものはないわ。」


 それを聞くと、すぐさまグリフィンに変化したルカが、二人を連れて飛び立った。 


「フィリップ、前に私のバイオリンで曲を弾いてくれた?」

「え、どうしてわかったんだ?」


 驚くフィリップを改めてじっと見つめて、スカーレットは美しいアメジストに瞳に幸せな色をにじませる。


「攫われて、しばらく部屋に閉じ込められていたの。どうすることもできなくて、それならいっそ死んでしまいたいと思った時、あなたが演奏するバイオリンの音が聞こえたような気がしたの。それで、もう一度、ゆっくりとあなたのバイオリンを聞きたい。聞けないままは死にたくないって想えたの。」

「スカーレット、よく耐えてくれた。」


 二人は再びぎゅっと抱き合った。


「はぁ~、そんな人の背中の上でラブシーンとか、やめてよ。」

「フフフ。悔しかったら、あなたも早く彼女を見つけなさい。」


 楽しそうな姉の声が聞こえる。ちぇっと言いながら、日常を取り戻せたんだと実感するルカだった。


「よし、国境を越えたよ。馬車はすぐそこだ。」


3人は、止めておいた馬車に乗り込んで、王宮へと戻っていった。


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