第7章 試練 4
宿舎に戻ると、ちょうどフィリップが訪ねてくるところだった。二人は開口一番異口同音に「ロベールが!」と叫んでいた。
「兄上、何か見えたのですね?」
「ああ、そっちも何か掴んだようだな。答え合わせと行くか。」
二人はすぐさまアーチャーと連絡を取り、情報共有を図った。
「ジョーの容体は大分落ち着いてきた。もう命の心配はないだろう。ただ、まだ意識は戻っていないそうだ。」
「そうですか。」
ルカは何もしてやれない悔しさにこぶしを握り締める。
「あの…。実は、さっきスカーレットの部屋に入って、見えたものがあったので、お知らせせねばと。」
「やっと見えたのか。」
「はい、彼女が連れ去られる現場を。パーラーからパレードを見ていたようなのですが。その、言いにくいのですが、銀髪の長身の男が…。」
「やっぱり!実は僕も実家で聞いてきました。義姉がパレードを見に行っていて、その場で出会った知り合いが、どうやらそのパーラーに居合わせたそうで。」
困惑する二人に、アーチャーはあっさりと言い放った。
「そうと分かればロベールを呼ぼう。」
「いや、しかし。」
「何を躊躇っているんだ。まだ人質は見つかっていないんだぞ!おい、君。ロベール部隊長を呼んでくれ。」
アーチャーは、さっさと部屋から顔を出して護衛の一人にロベールを連れてくるよう頼んだ。
「何か分かったのか?」
部屋に入るなり、ロベールは問いかける。
「まったく。ジョーも見つからないままだし、どうなっているんだ」
色素の薄いクールな彼には珍しく、焦りがにじんでいた。
「第一、その、スカーレット・コールマン伯爵夫人を誘拐する目的は何なのだ。」
「少なくとも、コートミスティの魔術師団を混乱に陥れるにはぴったりの人物ではある。」
アーチャーがあごに手を当てて考えていると、バタバタと慌てた様子の足音が近づいてきた。
「失礼いたします。首相、スタンリアの北東部、うちとの国境付近で道路が爆破されました。」
「正確な場所は?」
「ルート63、コートミスティとの国境から2Km付近のサーバル谷を渡る橋の部分です。」
「なんだと?!我々との物流を止めようということか。ロベールすぐに現場へ向え!」
「はっ!」
ロベールはすぐさま軍へと向かった。その後ろ姿になんの迷いもないが、フィリップとルカは、どうしても不安を払しょくできないでいた。
緊急事態で王宮内も騒がしく人が行きかう中、医療チームの一人がやってきた。
「失礼します。ジョー・スタンレイ殿が意識を取り戻されました。」
「分かった。すぐに行こう」
3人がジョーの病室に行くと、ジョーがベッドに横たわったまま待っていた。
「ジョー、大丈夫?」
「はは、大丈夫ではないかもね。とりあえず生きてるけど。」
軽口をたたき合うルカとジョーを止めて、アーチャーが尋ねた。
「ジョー、お前は何を見てきたんだ。」
「実は、あの夜帰った後、部隊長に鍛錬場で手合わせをしてほしいとお願いしていたんです。だけど、いくら待っても部隊長が来ないから、執務室まで行ったら、ちょうど部隊長が担架で運ばれていくところだったんです。どうやらロベール邸の執事らしき人も一緒でした。だけど、どうもそこが引っ掛かったんです。」
「どういうことだ?」
ジョーはじっくりと思いめぐらす様に考えて答える。
「主が倒れて運ぶなら、お世話になったとか、失礼しますとか言いそうなものを、ちらちらと周りを伺ってて、どうみても怪しい感じだったんです。だから、俺、変化して馬車に付いて行ったんですよ。で、しばらく身を潜めて成り行きを見守っていたんだけど、部隊長がどこかに運び込まれて、例の執事がだれかと話しているのが聞こえたんです。スカーレットさんを誘拐してコートミスティの魔術師団を混乱させて、その隙にスタンリアを叩き潰すと。」
「首相、僕も出かけてきます」
「ああ、存分に暴れて来い。あ、それと。もし可能なら、進軍してくる連中のトップを捉えてくれ」
「もちろんです。姉上の居場所を吐かせなくては!」
ルカはそのまま鳥に変化すると、すぐさま窓から飛び立った。
「アリア様、ルカをお願いします」
「ああ、承知した」
どこからか声だけが返ってきた。
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あ~、明日はUPできるかなぁ。。汗汗




