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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
86/202

79話シケイダ3301

「そう言うんじゃないんだなぁ。」

私が少し困ってボヤくと、北城は、少し渋味のました綺麗な口元を軽く歪ませた。

「では、ケプリ…古代エジプトの太陽神の顔でどうだ。」

北城は、少し自慢げに言う。

近い…が、違う。

と、言うより、知らないのだろうか?

尊徳先生のもらったイシスのスカラベのミイラの事を。


「北城、お前、スカラベのミイラは知ってるか?」

「ああ、確か、去年、発見されたんだよな…サッカラの共同墓地で。」

と、北城は一度言葉を区切り、興味深そうに私を見ながら聞いた。

「まさか、お前、もってるのか?」と。


やっぱ、そうだよなぁ。

と、驚く北城の顔に、自分が長山にした事を重ねて納得する。

「まさかぁ。持っていたのは私ではない。尊徳先生だよ。」

そう言って、自分の事のように胸を張ってしまった。

北城は、少し考えて、つまらなそうに笑った。


「なんだ、あれの事か。あれなら、屋敷にはないよ、確か、何年か前に研究所に保管されたんだ。

なんて顔するんだ、当たり前だろ?貴重な資料なんだから。」


ああ……。


私は、北城の言葉にしゃがみこんでしまった。


だよね、まあ、そうだよ、全くだ!


イシスのスカラベのミイラなんてものが、いつまでも個人の屋敷のコヤシになってるわけもない。


「なんだよ…そんなに悲観することか?

お前、ゲンゴロウさえいれば、幸せだろ?いつから、フンコロガシにまで広げたんだよ?」

北城は、雑な慰めの言葉をぶん投げてくる。

「甲虫は全般的に好きだし、フンコロガシはファーブルと一緒に小学生の時から好きだよ。」

私は、自分の甲虫プロフィールを力なく呟いた。


「そうか…、では、そのうち、見に行こう。招待するよ。」

北城に励まされ、私は立ち直った。


まあ、結果オーライだ。

これで、虫探しは片付いた。後は、15分。ここの資料をさらっと見てから仕事に戻ろう。


私は、嬉しくなってきた。

北城が親族なら、これから、ここに来る機会もあるに違いない。

目ぼしいものを軽くチェックしなくては。


私は、立ち上がり、まずは、色々と積み重なっている学習机…多分、雅苗のものと思われる机の上を見た。

そこには、細かい本や箱が載っていて、机の前の方に、あまりチリの積もっていない赤い表紙の本を見つけた。


それは、ハードカバーのもので、赤いカバーに縦字の明朝体で『砂金』西條(さいじょう) 八十(やそ)と書いてあった。


私は、気になって本を手にした。


内容ではなく、真ん中に金で描かれた(はね)を広げたセミの絵が気になったからだ。


周期ゼミ…なのだろうか?

金で描かれた目が赤く見えるが、表紙のせいかもしれない。


「シケイダ…か。」

いきなり、そんなことを言いながら北城が私から本を奪う。

「なんだよっ、死刑って、ちょっと見ただけだろ?」

私は、いかつい顔で表紙を見る北城に文句を言った。

北城は、私を見てあきれた顔をする。

「シケイダ3301だ。死刑ではない。」

北城の訂正を混乱しながら聞いていた。

「何かのドラマか?」


私の問いかけに、北城は、少し驚いてから、意地悪そうに口元を歪めて楽しそうにこう言った。


「確かに、ドラマ…と言えなくもない。世界を騒然とさせた、素晴らしい謎解きゲームだよ。」

北城の言葉をきいて、私は、それが海外のドラマだと思った。

シケイダ3301


なんとなく、刑事ドラマっぽいけれど、昭和風味な題名だな、なんて思いながら。


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