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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
85/202

79話甲虫

「しかし、君は気がつかなかった…。」

北城の台詞が胸にグッサリと刺さる。

それを言われると、ぐうの音も出ない。

「すまん。」

小さくボヤき、北城のクールなどや顔に閉口する。


「が、みんな、変だと思っていたぞ。そうだ!秋吉は…。」

と、ここで私は、言葉を失った。

そう、秋吉は音無不比等を疑ったのだ。


軽いめまいがした。


前に、作家、音無不比等の怪しげなオーディションで弄ばれた秋吉。


怪しげなカクテルで、からだの自由を奪われ、そうして音無は…秋吉の口に、グロテスクなカプセルを飲まそうとしたらしい。


謎のネット作家・音無が、私の友人北城だとしたら…。


私は、自然と険しい顔になる。

聞いていた音無のイメージに北城は、ピタリとはまるのだ。


「北城…お前が、音無不比等なのか?」

なんだか、二時間ドラマの刑事のような芝居がかった口調になる。

北城は、私の顔を薄ら笑いを浮かべて見つめていた。

バカにしているわけではない。

この顔をする時、奴は、物凄く頭を使っている時なのだ。


「どうして、そう思った?」

北城は、実験体に問いかけるような目で私を見る。

「秋吉がそう言ってた。

正確に言うと、私は、音無不比等と言う人物にあった事はない。」

私は素直に答えた。

北城は、少し考えてから、穏やかな顔になる。


「結論から言うと、私は、音無不比等ではない。

彼の作品を知らないが、私の文章は小説向きではない。」

北城の台詞に私は、深くなっとくした。


そう、コイツは、顔もまずまずで頭も良かったが、口が悪くて、女の子と付き合った事がない。


告白をされても、1日奴と付き合える女の子はいなかったのだ。

読者に夢を見せるなんて…恋愛サスペンスなんて、書くどころか、設定すら難しいに違いない。


「確かに、そうだな。」

私は脱帽した。

「わかれば良い。」

と、少し不愉快そうに北城は言って、軽く息を吐いてから続けた。

「秋吉くんが何を思おうと、面識がないから気にしなくて良い。

私の正体は、長山くんも理解している。知られていけないのは、あくまで若葉 溶生(ときお)一人に対してだ。」

北城は淡々と語る。

「じゃあ、人がいない時は北城、と、呼んで構わないな。」

私は、学生時代を懐かしく思い出した。

北城は、目を少し細めて同意した。


「じゃあ、まずは、尊徳先生の資料を探させてもらうよ。

あと、20分くらいで書斎に帰らないといけないから、急ぐんだ。

ところで、お前、『スカラベ』を知ってるか?」

私は、長山に頼まれていた例の…イシスのスカラベを思い出して聞いてみた。

北城は、質問の意味を値踏みしながら、


「スカラベ…コガネムシ科の甲虫だ。」

と、言った。


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