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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
83/202

77話北城

雅苗の書斎のある北棟へ通じるドアを開けて、私は北川の後ろを歩いた。


何かおかしい。


さっきから、へんな違和感を北川に感じるが、誰も何も言ってなかったし、気のせいかもしれない…。

が、温室で会った男とは、何かが違う気がした。


私は、北川の背中に違和感の答えを探しながら、どうして、自分は人間を上手く判別できないのだろう、と、悲しくなる。


そして、自己嫌悪を埋めるように、学生時代、ゲンゴロウの個体を判別し、称賛された事を思い出していた。


羊の顔を識別できる人がいる。

ゲンゴロウの泳ぎ方で、個体を識別する私がいる。

そして、人を大雑把にしか識別できない私がいる。

そんな事を考えていると、階段前で北川が止まった。

少し、ぎょっとした。


北川は、私の方を振り向くと、怒ったような、困ったような風に眉を寄せて、こう言った。


「いい加減、思い出しませんかね?」


えっ…(°∇°;)


私は、周りを見渡した。

廊下の奥は暗がりで、なにやらドアが見えている。

「!!ああっ、覚えていてくれたんですねっ。」

私は、嬉しくなって北川の両手を握りしめた。


そうだ、そうだよ、倉庫だよ!

いやぁ、すっかり忘れていたよ。


私は、有頂天になって喜んだ。

私のいきなりのテンションの高さに北川は戸惑っていた、が、知ったこっちゃない。

そう、尊徳資料を見せてくれると約束したんだから。

「この向こうの扉、倉庫ですよね?」

私は、強く聞いた。

「よくお分かりですね。」

北川は軽く驚く。

「じゃあ、行きましょう!」

私は、北川の手を引っ張った。が、逆に北川に腕をとられ、驚いて私は北川を見た。

「オイ、オイ、まだ、気がつかないのか?困った奴だな…。タガメの個体は、足の泳ぎ方だけで分かるのに…。」

北川が、そう言いながら髭をゆっくりと剥がして行く。

昔の探偵ドラマみたいだな…嘘くさいとか言ってたけれど、現実の方が嘘くさいもんだな。


私は、そんな文句を一瞬で忘れた。

 髭の無くなった顔に、学生時代の友の顔を見つけたからだ。


「北城……タガメじゃなくて、ゲンゴロウだよ。

ヒメゲンゴロウ。」

呆れながら私は言った。そう、数年来会ってない友人なのに、至極、当たりまえのように。

そうしながら、この顔に今ままで気がつけなかった私に、がっかりする。

北城は、多分、ずっと前に私に気がついていたはずなのだ。


「いけがみっ!!」

少し、間を置いてから、北城が、感極まった感じで、抱きついてきた。


それは、戦場で消えた戦友に何年かぶりに再開したような、激しさがあって混乱した。


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