75話時給1500円
「きゃーっ(^O^)」
と、両手をクロスして胸を隠しながら、秋吉は私から離れた。
その勢いで、転びそうになった私は、何か「キャー」だ、と、腹が立ったが、雇い主にサボりを見つかった衝撃の方が勝って、時計を確認する。
休み時間…だよな、まだ、私はっ。
私は、時計の針に自分の認識を裏付けされて気持ちを落ち着けた。
「すいません。すぐ戻ります。」
一呼吸して、冷静に長山に言った。
長山は、私を軽く見てから、少しいかつい顔で秋吉を睨む。
「秋吉さん、現場で遊ばないでください。」
そう言われて、秋吉は苦笑する。
「…すいません。」
秋吉が直立して真面目に謝った。
私は、慌ててフォローに入る。
「すいません。私が、草柳さんに会いたいと言ったものですから。」
と、言いながら、何か、割りきれない気持ちが込み上げてくる。
そうだ、長山。
長山が、池の話を聞いて、慌てて温室を出ていったりするから、混乱したのだ。
「そうですか…。」
長山は何かを考えるように一度、床に視線を落とした。
「草柳レイさんとは、この方なのでしょうか?」
私は、思いきって聞いてみた。
そう、長山は私の話を聞いて池に向かった。
この…ロボが本当に草柳レイだとしたら、池にいるわけがない。
だとしたら、長山は何に驚いたと言うのだろう?
「はい、そうです。だから、驚きましたよ〜。レイさんが池にいるなんて、池上さんが言うから。」
はあっ……○_○)!!
目眩がしてきた。確かに、いま、ソファーに座る彼女が、池にいるなんて言われたら、ビックリするに違いはない。
穴があったら入りたい(///∇///)
私が、恥ずかしさで頭がおかしくなりそうになっていると、長山はぼやくようにこう続けた。
「本当に驚きましたよ。1号を若葉さんが、池に運んだのかと思いましてね。」
「い、1号!?」
だ、ダメだ、1号とか言われると、昭和のロボアニメのオープニング曲が頭を回る。
「確かに、そうですよね?7年前の話ですからね。俺だって学生だったし。
ほら、あの時給1500円でロボットが派遣されたときには、俺、働いてましたから。」
秋吉が懐かしそうに話をする。
その内容に、自分が随分と老け込んだような気がした。
ペッパーくんが時給1500円で派遣されたのは、2015年のことのようです。
その後、2018年には辞めてしまったようですが、2012年、随分と昔の話になったのですね。