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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
79/202

74話疑惑

夕闇が迫り、レイの瞳のほの明るさに意識が向かう。

これは人ではない。

柔らかい白目の光が、私を警戒させる。


本当に、コレが昼間に出会ったレイだと言うのだろうか?


白昼に舞うオオミズアオ。自然界では有り得ない幻想的な世界。

緑がかった白く美しい(はね)を広げて微笑む軽やかな姿を、私は、目の前のレイから見つけることが出来なかった。


「そうね、漂う…と、言った方があっているかもしれないわ。

私…この池に沈められたの。水中の虫が私の体を貪ったわ。そうして、精霊になったのよ。」


ふと、池のレイの台詞を思い出した。

あの時、7年前に池に来たとか、おかしな話をしていた気がする。

いや、待て、その前に、もっと、根本的な間違いを忘れている気がする。


私は頭を働かせた。

それは、何か、言い知れない恐怖に急かされるような感じがした。


秋吉を見て、そのモヤモヤの原因にたどり着く、

そう、池で秋吉がこう私に言ったんだ。


「それ、7年前に若葉さんと騒がれた女性です。

あの騒ぎで事務所を解雇され、芸能活動を辞めたって…。若葉さんの前では、そんな冗談、言わないでくださいよ。」と。


つまり、7年前に芸能活動していた女優だって、秋吉が言ってたのだ!

それが、夕方にはロボになったなんて、童話でもあるまいし。



段々、腹だだしくなってきて、秋吉を睨んでしまう。

秋吉は、何か、私の顔に危機を感じて愛想笑いを浮かべて、私から距離をとろうと後ろへ下がる、が、私の方が距離を縮めて秋吉をレイから離れた場所へと押して行く。

壁に当たる。その辺りで、人のようにレイに気遣いをしている自分に気がついて苦笑する。


「嫌だなぁ。池上さん、壁どんなんて。」

秋吉が笑いながら意味不明の台詞を吐いていたが、頬が緊張で引きつっているのが見てとれる。

「昼間の話だ。お前、草柳レイは、若葉さんと噂があったNG女優だって、そう言ったよな?」

私の質問に、秋吉は少し安心したように目を細める。

壁どんとか言いながら、私より長身の秋吉が上から私を見つめる形になるので、なんだか、バカにされたようで腹が立つ。

容姿端麗、健康的で、社交的。

私に無いものを全て持っている笑顔をみると、なんだか、よくわからない怒りを感じる。と、同時に、憎めない自分の気持ちを自覚する。


「ああ、その事なら…」

と、秋吉が口を開くタイミングで明かりがついた。


「な、何してるんですかっ?」

長山の責めるような声が応接間に響いた。


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