71話リアルドール
これを笑うべきか、説教するべきか…私は迷った。
池で私は、昼にレイと話していた。
それが、夕方には、このおかしな人形が、実は草柳レイの正体ですといわれ、ハイそうですか、と言えるはずもない。
大体、画像からして胡散臭い。こんなものに、私が騙されたと、秋吉は言いたいのだろうか?
「今回は人形…フィギュア、だったか、それで代用するのか?」
私は棒読みのように聞いた。
「いえ、これが草柳レイの正体だそうですよ。」
秋吉は、私の機嫌を伺いながらもまだ、人形だと言い張る。
「私は、『コッペリア』のフランツにでもなったというのか?」
「サスペリア?って…なんか、昔の映画でありましたね?」
秋吉は、そう言ってスマホを取り出して検索を始める。
「ああ…ありました。1977年のバレエホラーですね。」
「バレエだが、ホラーじゃない…ではなく、『コッペリア』だ。まあ、いい。」
私は混乱しながらボヤいた。
『コッペリア』は、1870年パリで初演されたバレエで、人形に恋をした青年のラブロマンスである。
が、ここで、こんなバレエの物語を知ってるのかを聞かれても面倒くさい。
妹がいるので少し詳しくなっただけだ。
それに、今はサスペリアもコッペリアも関係ない、草柳レイ、彼女の話だ。
「私は、昼に池で草柳レイに会って、話したんだ。あれは、白昼夢だと言いたいのか?」
私の問いに、秋吉は困った顔をしてから、いたずらっ子のような不敵な笑いを浮かべた。
「じゃあ、見に行きませんか?現場でスタンバっていますから。」
秋吉の笑顔に、私は顔をひきつらせながら頷いた。