62話 再開
暗くなりはじめる部屋の明かりを私はつけた。
そろそろ、私も、メインの仕事をはじめなくてはいけない。
私は、秋吉達の収録用の動画の確認と、温室のショクダイオオコンニャクの動画をチェックし、
行方不明のスカラベのミイラを探す事を依頼されていた。
秋吉達、撮影チームの打ち合わせが終わったようだ。
秋吉は長山と何やら話して画面からフェードアウトする。
ショクダイオオコンニャクも、今のところ、開花の様子はない。
私は、スカラベのミイラを探す事も含めて、とりあえず、本棚の整理に取りかかる事にした。
スカラベも気になるが、雅徳さんの研究も気になった。
溶生さんの病気も心配だし色々混乱する。
そんな雑念を降りきって、本棚をひと枠づつ、丁寧に調べた。
また、例の隠し戸があるかもしれない。
が、探しても、そんなものは見つからない。
本棚には、雅苗の個人的な本や、小説の類いがあり、温室や林の昆虫の観察日記が並ぶ。
不思議なのは、ここにショクダイオオコンニャクのレポートが無いことだ。
どうして、無かったのだろうか?
雑念が浮かんでは消え、混乱を誘う。
一度、深呼吸をした。
そして、己に言い聞かせた。
仕事中だ。まずは、棚に整理した書類から、引き取り手のありそうな資料のレポートを書こう。
私は、レポート用紙をとりだし、ある程度、棚にまとめたファイルを1冊取り出した。
目を通し、レポートに題名を書き出して行く。
トントン…
集中しはじめた私の背中にごしにドアを叩く音が響く。
反射的にドアを見ると、秋吉がドアの前にバックを持って立っていた。