61話 道
パソコンの画面が眩しく感じて、辺りが薄暗くなってきたのを理解した。
この日記を読む分には、病に冒されていたのは、若葉 溶生であり、雅苗は、それを何とかしようとしていたようだった。
彼女は目に見えないトビムシが、人間の皮膚から侵入して病をおこすと考えていたようだった。
が、治療は上手くはゆかなかった。
それはそうだろう。
そんな虫は、はなから居なかったのだろうから。
モルゲロン病をベースに考えるとそうなる。
モルゲロン病は、虫ではなく、化学繊維によるアレルギーであると結論がほぼきまった。
21世紀初頭、雅苗は、同じような皮膚病に冒されていた患者を非公式に治療、研究をしていた。
が、他の人と同様にそれらしい寄生虫の兆候が見えないまま、時が流れていた。
そして、寄生虫が見つかることが無いまま、患者は精神疾患と判断され、抜けていった。
聡明な雅苗も、普通なら、服飾などの繊維による皮膚病で、寄生虫が幻想だと普通なら、気がつけたはずだ。
それが出来なかったのは、父親の残したレポートのせいだろう。
そのレポートを読みたい。
雅苗の日記をそこまで読んで、私は無性にそう思った。
本棚にはそれらしいレポートは無かった。
雅徳さんの論文をネットで調べてみる。
彼は、私よりも20年位年上だったと思う。
尊徳先生が、旧来型のコレラなどの疫病と戦うために東南アジアへ向かわれたのと真逆に、70年代、雅徳さんはアメリカの清潔なラボで遺伝子について学ぶ道を選んだ。