57話 新興感染症
雅苗の父であり、遺伝子学者でもある雅徳さんは、モルゲロンとは言わなかった。
が、空気中を漂い、人間に寄生する謎の寄生虫について研究をしていたらしかった。
と、言うより、地球環境の変動による、地球による人類への報復について、考えていたようだった。
まあ…80、90年代は、そんな問題がクローズアップされた時代ではあった。
森やジャングルの砂漠化や、極移転、オゾン層の破壊などが問題視されていた。
あれから…新世紀を無事に迎え、色々あったとしてもこうして、平和に生きているのだから、ノストラダムスの予言なんて馬鹿馬鹿しいインチキなのだと思う。
が、確かに、ここ最近の暑さは、何か、尋常で無い気はしてはいるが。
私は、日がくれはじめた室内で、まだ、焼かれるように暑く感じる空気に不安を感じる。
ノストラダムスは、笑って聞き逃せるが、
雅徳さんの予言は、確かに不気味なものだった。
彼は、70年代から登場をはじめる、
エボラ出血熱
エイズ
などの新興感染症について調べていたようだった。
ワクチンや抗生物質、上下水道の環境整備と共に、天然痘や、結核などの流行を人類は、食い止めるに至った。
が、しかし、70年代に入ると、それと変わるように現れたのが、新興感染症と呼ばれる新しいウイルスである。
遺伝子学もまた、70年代から発展をはじめた学問である。
コレラ等の感染症と共に、尊徳先生が舞台の中央から退くと、
雅徳さんが遺伝子学と共に舞台の中央に躍り出る。
が、雅徳さんの学説は、少し、突拍子も無い感じがした。
人は、虫を概して、ウイルスと、否、地球の意思と通信している、と、言う…どちらかと言うと、オカルトな学説だからだ。