55話 寄生虫妄想
そこには、雅苗と溶生との出会いについて書かれていた。
一般的に言われていた、ファンの雅苗が、落ちぶれる溶生を強引に結婚に持ち込んだスピード結婚とは違う内容がそこには記されていた。
出会いは1998年。
そう、溶生が音楽をプロデュースしたゲームの販売を控えた年の事だった。
“溶生さんは、2005年、初めて会った人にするように会釈をした。”
雅苗は、そんな書き出しで過去を語る。
1998年、まだ、学生だった雅苗は、従兄妹のマンションに遊びに行き、隣の部屋に若葉溶生を見つけるのだ。
そして、あの事件…溶生が廊下で体を掻きむしり、入院、薬物疑惑を持たれた…あの騒ぎの時に、倒れた溶生の搬送を手助けしていた事が書いている。
溶生が腕を触り、皮膚のしたの何かを追うように指で腕を撫でて行く姿や、掻きむしる様子に、雅苗は寄生虫について、疑っていたと書かれていた。
それは、彼女の父、雅徳さんの死の様子に似ていたのだそうだ。
が、10代の少女の意見など、誰も聞いてはくれず、その後、溶生が回復したこともあり、そのエピソードは雅苗の心の中に仕舞われて終わったのだった。
が、雅苗は忘れていなかったのだ。
2005年に溶生と再開した雅苗は、この時、溶生の持病について相談を受ける。
溶生は、1998年以来、謎の皮膚病に悩まされていた。
雅苗は、溶生がモルゲロンズ病ではないかと、その時に感じたのだそうた。




