表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラサイト  作者: ふりまじん
死体花
38/202

37話 完全装備

我々はしばらく温室の整備をし、20分は経過したところで、私は長山が心配になってきた。


北川は、テキパキとカメラのセッティングをしている。

なんだか、パソコンも扱って、北川は手慣れているのが不思議に感じた。


「草むしりと整理は終わりましたよ。」

と、私は北川に声をかける。

「そうですか。」

と、北川は私に笑顔を向けて時計を見た。

「20分は経過しましたし、地下室にいきましょうか?」

北川の問いかけに嬉しくなる。が、その気持ちを押さえる。

長山が来ない事が気になった。


10分たっても来ないようなら、部屋へ戻ってください。


長山の言葉が耳に残る。

20分経過しても来ない時は…どうしたらいいのだろうか?


「すいません、私、長山さんが心配なので池にいってみます。」

私はジャンパーを羽織った。

もうすぐ5時になるが、日はまだ高い。

心配するような場所では無かったが、怪しい伝説も気になった。

「それでは私もいきましょう。」

北川が穏やかにそう言った。


我々は、軽く装備をして池へと向かう。忌避材やカメラ、手袋、ロープ、(ナタ)等をリュックに詰める。


近くの池とはいえ、人が二人も消えるとなると用心はするに越したことはない。


北川は、私の慎重さを少し困り顔で見てはいたが、文句は言わなかった。


7年前、人が一人、この場所で消えたのだ。

最悪をいくつか考える。

一般の人は、淡水の池や湖、川を海より軽く考えがちだが、淡水には、多用な水棲生物、植物、細菌がいる。

雨季の砂漠が一瞬で花畑に変わるように、

池が突然できるとしたら…まあ、そこまで行かなくとも、地面の水分が増えるとしたら、菌類…キノコなどの繁殖が考えられる。

スエヒロタケなどは、希ではあるが、人間の肺に寄生する。


スエヒロダケなら、何とか対処が出来るとして、この林には、新種の何かが潜んでいるかもしれない。

夕暮れが近くなり、キノコが胞子を飛ばしていたのかもしれない。


ふと、雅苗のしおりを思い出した。

素数ゼミ…素数の年に大量繁殖するセミの事だが、7年にこだわるのは、セミだけではあるまい。

事実、ショクダイオオコンニャクは、7年たった現在、大輪の花を開こうとしていた。


それは甲虫…なのだろうか?


不謹慎に胸が踊る。

長山の黄金虫の話が頭をめぐった。


新種の…スカラベ…尊徳先生のスカラベを生きた姿で見ることが出来るかもしれない。


私の歩みが早くなる。が、池よりずいぶん手前で、私は、マスクと保護眼鏡をした上で、ロープを腰のベルトに装着した。


「すいませんが、10分経過して戻らなかったら、消防署に連絡して頂けますか?」


北川は私の完全装備に、何か言いたげな顔をしていたが、黙ってロープの端を持ち、スマホのタイマーをセットする。

「カメラ、いりますか?」北川はポケットからカメラを取り出した。

「え?」

「記録になりますし、これ、ズーム機能が凄いんです。短時間でも、広範囲の情報が集められると思いますよ。」

北川の顔を見て、私は混乱しながら頷いた。

完全装備の私をバカにしているのか、受け入れているのか…よくわからない。

それでも、私はカメラを受け取って池へと向かう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ