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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
196/202

190話葉緑素

「今なら、私のしたかった事、理解してくださるわね?」

草柳レイが私に笑いかける。

それは、諦めの入った悲しげな笑顔だった…

夜が、終わろうとするのを感じた。


「葉緑素…ですか。」


葉緑素を取り込んで光合成をする人間が頭に浮かぶ。

緑色の肌なんて、SFだけの話だと思っていた。

「そう…。これ以上、日差しが強くなれば、人は生きては行けないもの。

森が維持できないのだから、人が酸素を産み出す方が合理的でしょ?プラスチックを混ぜた皮膚なら、丈夫だし、火星で暮らすときにも重宝するでしょ?」

草柳レイの話を私は混乱しながらきいていた。


「そんな事…出来るのですか?」

「無理ね。」

私の問いに速攻でレイは答えた。

「なら…なぜ?」

「自然に任せたら、よ。その為に、人間を遺伝子について理解できるようにしたんじゃない。」

レイは、悪びれずにそう言って、真顔で温室ごしに空を見た。


磨かれたガラスの向こうにオリオン座が見えた。


「もう、三千年は…もたないと思うわ。」

レイの言葉に胸が締め付けられる。


「それでも…我々は、生きようとは、しますが、ね。」

北川が困った人を見る目でレイに言った。

「そうね…私も…努力はするつもりよ。

それが、無駄な事だと思っていても。」


レイは、気だるくそう言って、それから私のところへやって来た。


そして、地面にへたりこむ私の手をとり、背後を北川が見張る常態で、私の顔をじっと見つめた。


「ごめんなさいね…状況が、こんなに変わっているなんて、今、分かったの。

朝が来たら…あなたは普通のおじさんに戻るけれど…それでも、生きのびたいと願うなら、研究は進めてね。」

レイの瞳に吸い込まれそうになった。


「葉緑素の組み入れ…に、ついてですか?」

人間の遺伝子組み換えなんて、私には荷が重すぎる。

それに、遺伝子を組み換えて火星に移住なんて、昔の漫画のようで恥ずかしかった。



「別に…こだわらなくてもいいわ。それについては…他のコが始めるだろうから。

あなたは、昆虫と仲良くしてくれたら…それでいいんだわ。」

レイは笑った…そして、月の光のように淡く輝きながら私の目の前から消えていった。


「れ、レイさんっ!!」

私は彼女の手の温もりを思いきり握りしめた……


が、柔らかかった彼女の手は節くれだった固い蔓のようにかわり、美しい顔は、目玉のなくなったミイラと化していた………



「わぁぁぁぁーΣ( ̄□ ̄)!」


私はしばらくして、何を握っているのかを知って、何者かのミイラをぶん投げると、ドアの辺りまで一気に移動した。


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