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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
191/202

185話 sleep

特別な恐怖は無かった。

レイの指が冷たくて気持ちいいと感じたくらいだった。


私は目を閉じる。


尊徳先生の虫葬を羨ましいとは言ったものの、目玉を食われるのはいただけない。


それに…とても眠かった。


体が、木の葉でも積もったように少しずつ重く感じる。


終わりは近いと感じた。

レイの声がする。


「なんとか、間に合いそうですわ。

長かったけれど…報われた気持ちですわ。

何しろ…世界中から針を集める作業でしたから。」

レイの言葉に、彼女のこれまでが、見えるようだった。


彼女は、世界を巡り、そして、必要な情報をもつ仲間を探していた。


彼女は次世代生物のデザイナーなのだ。


ウイルスは、食物連鎖を回りながら、繁殖の宿主へと旅をする。

その旅のなかで、たくさんの遺伝情報をやり取りする。


そして…その情報を統括するのが、草柳レイ。



突っ込みを入れる気力も、私には既に無かった。


ただ、彼女がイシスであると、誰かが言うのを納得しながら聞いていた。


もとは同じ菌類でも、環境によって、異なる遺伝情報を手にしている。


その中から、必要な情報を検索、抽出、再構築…

これらが上手く出来なければ、新しい環境に適応できない。

イシスが、オシリスのバラバラの死体を集め、組み立てたように、


草柳レイもまた、私を再構築しようとしていた。


私が選ばれたのは…東の果ての、4枚のプレートがひしめき合う、日本列島で生息し、虫などの情報を素直に出し入れできる…それが主な理由のようだった。


しかし…そんなものは、今はどうでもいい。


ただ、眠い……眠いのだ。



私は、意識の深海へとたどり着き、その深い闇のなかで考えるのをやめた……


肌寒いくらいの快楽が、深い眠りを誘う。



多分、ここで眠ってしまったら……文字通り永眠するのだろう。


70億から選ばれた…なんて言われても、


私一人が選ばれたわけではないのだろう。


海外の高額宝くじのように、開けてみたら、一万人の当選者がいる。

なんて、オチなんだ。


だから…もう…眠らせてくれ。


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