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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
185/202

180話蝉

「そう…蝉ですわ。」

頭の中の雅苗が私に語りかける。


さっきまでの、妄想の男の手記を7年前、雅苗は屋敷で見つけていた。


太田務と尊行には、接点があった。


それは、文学と日本人のルーツを探る秘密クラブのようなものだった。


避暑地でもある、この屋敷には夏に学者や知識人が集まって、色々な議論を飛ばしていた。


それらは、同人誌としてまとめられ、この屋敷に保存されていた。


ミイラと昆虫についての論文で、あの男は一度、同人誌の表紙を飾っていた。

2012年、失意の雅苗が目にしたシケイダ3301の画像が、その表紙を思い出させたのだ。


羽を広げて飛び立つ蝉…


それは、偶然なのか、何者かの思惑なのかはわからない。


しかし、私には、2018年、昨年辺りから、また、エジプトで新しいミイラの発見があった事がそら寒く感じていた。


ミイラが、未知のウイルスのタイムカプセルだとしたら…

それは、発掘からまた、人を呼び込むことになるのだろう。


19世紀、イギリスでは、発掘されたミイラは燃料として燃やされたりもしたようだ。

つまり、飛沫や粉塵、燃えかすとして、3000年昔のウイルスが拡散した可能性もあるわけだ。

19世紀…それは、人の移動距離が爆発的に伸び、物資も大量に移動した年なのだ。


それは、新たな資源をもたらすものであり、

未知の感染症を撒き散らす行為でもあった。


この時代、コロリと呼ばれ、恐れられたコレラが流行し、日本でも沢山の人間が亡くなった。



「変化のスイッチは、環境に委ねられているわ。

砂漠バッタが、急に遠征を始めるように、

私達も、それに従うだけ。

昔、私達が眠りに落ちる前にも、暑い火が続いたわ。

草や木や虫が消えて、町が海に沈んだわ。


生き延びるためには…カスタマイズが必要になったのよ。


だから、私達は必要な遺伝情報(ソフト)を持つ仲間を探さなきゃいけなくなったのよ。」


草柳レイは、そう言って私に微笑みかけた。


私は、その笑顔に…近代に続く人類の文明の進化が、彼らの欲望によるものではないかと、そんな漫画チックな恐怖に背筋を凍らせていた。


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