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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
183/202

178話オシリス

知らない記憶が頭をめぐる。


私は石畳の町にいた。


遠くには、南アルプスが見える…


が、それは私の思い違いだ。


「やはり、本家は貫禄が違いますな。」

年配の男が語りかけてくる。

が、彼は私に語りかけてはいない。

これは誰かの記憶なのだ。


彼らは、これからエジプト博物館へと向かうのだ。

トリノのエジプト博物館は、エジプトに次ぐ古代エジプトの遺物を収蔵している。


フランソワ・シャンポリオン等、ヒエログリフの解読者へ、その豊富な資料で貢献した。


私を巡る記憶の主もまた、エジプトの謎の解読に挑もうとしていた。


1922年以降…ウル、ツタンタカーメンの発見のニュースで、にわかに考古学が社会の注目を浴びていた。


彼は、自称詩人の役人のようだった。

渡欧に際し、愛読書の『ファーブル昆虫記』を携帯していた。日本語訳は、小松近江が担当していた。

あと一冊は、趣味の仲間の作った同人誌『アザリア』。

彼と志を同じくした農学生作品が納められていた。



彼は、それらの本に無限の世界を見つめていた。


虫にかける彼の情熱は、近年の発掘熱に浮かされて、古代エジプトの世界とつながりを持ち始めていた。

彼は、太田と同じ農商務省の人物である。

新種の…日本に利益のありそうな植物の採取や、農作物の病気などの研究を主にしていた。


彼は東北の武士の家系で、特に、植物に感染する伝染病についての研究で成績を上げていた。


1925年、彼がこうして渡欧を叶えることが出来たのは、並々ならない努力と、ジャガイモ飢饉についての論文が上の人間の目に止まったからだ。


ジャガイモ飢饉とは、1845年頃、欧州を襲ったジャガイモの病気による飢饉の事である。


特に、領主の意向でジャガイモの栽培に舵を切ったアイルランドは、惨憺たる状況に陥ることになる。


同じく島国の日本としては、アイルランドに学ぶところが多い。

利益だけではなく、新種の輸入にはリスクも伴うものだと言うことを、必ず頭に置いておかなければいけないのだ。



1925年のパリ万博に向けて、準備をしていた彼と太田務は行動を共にしていた。


そして、あの、ツタンタカーメンの呪いについても考えることになる。


発掘に携わった人物を襲った呪いの原因が細菌類ではないか?と、言う謎の調査に参加を許されたのだ。


そして、西洋のオカルト好きな貴族の計らいを受け、トリノにある膨大な資料を閲覧する権利を手にした。


が、しばらくすると、彼は、別のものに興味を持つことになる。


エジプトの九柱の一神、冥界の王、オシリス神である。


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