165話 1920
1920年代…
第一次世界大戦が終結し、人類が近代社会へと大きく歴史の舵をきった時代。
それは、飛行機や船舶、そして、顕微鏡にも及ぶ。
技術の進歩は、新たな発見を生む。
生物学の世界も、菌類から、より細かい、『何か』に予感を感じるのだ。
マッソスポラ…
通称ゾンビウイルス
彼らは、特定の蝉などに寄生し、宿主の行動を乗っ取るのだ。
感染させられた蝉は、マッソスポラの新たな宿主のために同族を誘惑する
雄雌問わず、である。
そうして、生殖器に寄生していたマッソスポラは、次の宿主に胞子をばら蒔いて増えて行く。
感染させられた蝉は、増殖するマッソスポラの為に腹が抜け落ちても、誘惑を続けるのだ。
彼らについても、性能の上がる顕微鏡で研究されたのだろう…
が、エジプトのファラオとどんな関係があるというのか?
「私は、今世紀に入ってから、集中的にモルゲロン病について研究してきました。
初めは、線虫等の寄生虫が犯人だと思っていました。
けれど、証拠は見つからず、2012年1月に原因菌が見つからないとして結論づけられました。
詐病の扱いを受け、混乱する私は、たまたま、ネットの謎の画像を見たのです。」
雅苗のを私は黙って聞いていた。
確かに、モルゲロンズ病について、CDCの結論が出たのが、2012年1月。
シケイダの謎が投稿されたのと時期があう。
何でも、謎の画像には、文字が隠されていたそうだが、我々、昆虫を扱うものとしては、蝉の羽が開いていること、そして、所々の空白の方が気になる。
3301の素数がついついるなら、素数ゼミ、
体が欠けて飛ぶ素数ゼミと言ったら、それは、マッソスポラを考えてしまうのは仕方がない。
多分、ウエストバージニア大学で研究され、後に学会誌に発表されているのだから、当時、仲間内では、そんな噂もあったと思う。
マッソスポラは、17年の周期ゼミに寄生し、活動するため、周期ゼミに合わせて準備を始めなくてはいけない。
そんな話を頭のどこかにおいて、あの画像を見せられたら、
確かに、エンジニアでもない我々は、菌類について思い至るかもしれない。