164話マッソスポラ
長山は言った。10センチはあるスカラベのミイラがあると…
私は写真を思い出す。
あれは、蝉でもカメムシでもない。はずだ。
カメムシ目の特徴は、口が針状になっている。
タガメやアブラムシなど、多種におよぶ…
殺虫剤の製造を生業としていた手前、カメムシを悪く言いたくはないが、それでも…オオクワガタから、巨大カメムシに変わると言われると、悲しい気持ちを隠しきれない。
少年時代、林業に従事していた隣のオジサンが、オオクワガタの幼虫をくれた。
大切に飼育し、学校帰りの夏に巨大なカミキリムシが虫かごにいた時の衝撃がフラッシュバックした。
「どう考えても、カメムシ目はありえません。」
私は強く抗議した。
雅苗は、そんな私をあっさりと認めた。
「そうですね。私も、あの謎かけの答えを間違えた一人です。」
雅苗は、あっさりとそう言った。
「はぁ?」
私は顔が悪くなるのを止められない。
「え?シケイダ3301の謎の答えじゃないんですか!」
思わず叫んだ。
「そうです。彼らはシケイダ3301とは関係ありません。」
「関係ない?」
「はい。偶然、謎が重なったのです。」
雅苗の答えに私は叫びあげたくなる。
間違いって…なんだよ。
絶句する私に雅苗は静かに話始めた。
「あの謎は、公開されるとあっという間に世界へと拡散されました。
仮に、超、難解な回答の正解者が一割としたら、後の9割りの人達は、間違った答えにたどり着きます。
しかし…その間違いですら…もしかしたら、無意識の世界で、繋がっているかもしれません。」
雅苗の言葉に混乱した。
「ゾンビ蝉をご存じですか?」
雅苗に聞かれて動機がした。
「マッソスポラ…でしょうか…」
私は、蝉に寄生する菌類を思い出していた。
確か、発見されたのは1850年…
20世紀に入り、顕微鏡の技術向上により、より深く研究されている。