163話アメンヘテプ
「お分かりになりました?
1922年、ツタンカーメン王墓の発見から、始まっているのですわ。
いいえ…この場合は、その3301年前…紀元前1375年から…なのでしょうね。」
「紀元前1375年…」
私は、自分の計算外違っていたことに混乱する。
今から100年前、1922年、ツタンカーメン王の王墓が発見される前のその数字に何があるというのだろう?
1922年から2019年までのおおよそ100年の激動を考えると、100年は長いが、
古代エジプトの歴史なんて引っ張り出されても…
100年なんて誤差の範囲に思える。
「アメンホテプ4世が誕生したとされるのが、紀元前1372年…3年の誤差はありますが、興味深いと思いませんか?」
はあ……
私は、間抜けな顔で雅苗を見つめる。
歴史は…それほど得意というわけではない。
アメンホテプ4世の生年月日がどうだというのだろうか?
そう思いながら、ネット検索をした私は、王の別名にドキリとした。
イクナートン
彼は、ツタンカーメン王の父親であり、私の記憶が正しければ…
彼が人類最初の一神教の教祖であり、
80年代にはヘビーメタルとオカルトブームによって私でも聞いたことのある王である。
何となく、怪しげな魔術やUFOが頭を駆け抜けるのを必死に押さえながら考える。
彼は、古代エジプト史に残る革命をおこしていた。
一つは、首都をテーベから移したこと。
そして、アテンと言う新しい神を信仰した事だ。
彼の独特な石像は、王が生まれながらに病気を患ったのでは?
と、いまだに謎の多い王なのだ。
彼の病気と…3301の奇数…
こんな偶然があるのだろうか?
私は、子供の頃に見た冒険スペシャルの探検家を思い出し、不謹慎だがワクワクした。
確かに、3年…違ってはいるが、それでも…たった3年だ。
2012年…突然現れたインターネットの謎。
いまだに完全解決されていないシケイダ3301のリアルな物語に、男なら、この壮大な馬鹿話にのって見たいと思っても仕方ないじゃないか!
一瞬、少年時代に憧れた探検家と今の自分が重なってときめいた。
が、次の瞬間、正気に戻る。
「確かに、興味深いですが、シケイダは『蝉』です。
古代エジプトなら『スカラベ』ではありませんか?」
そう、スカラベ…立派な甲虫のミイラを探していたのだ…
蝉はカメムシ目なのだ。
カメムシには悪いが、やはり、ここは甲虫でお願いしたい。