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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
162/202

152話噴霧

夏の土ぼこりを含んだ風が、甘く鼻先をくすぐる。

私は、シャーマンにでもなった気分で、ゆっくりと歩みを進めた。


人類は滅亡しても…新人類が現れると言う、80年代カルチャーを思い出しながら。


「既に、仲間の中で、マイクロプラスチックの攻略に成功した(もの)が現れましたの。

もうすぐ…より、軽く丈夫な体を手にする昆虫が、現れますわ。」

レイは、ウットリと月を見る。


「ハチノスツヅリガですか?」

私は、スペインのカンタブリア大学のベルトチーニ先生の小さな発見を思い出していた。

蜜蜂の巣に寄生する彼らは、ビニールも食べることがわかったのだ。

「他にも…海に山に…見えない世界で、進化は始まっているのです。」

レイは、そう言って目を細めた。


腐敗しないプラスチックを糧に生存できるなら、人類が滅亡しても…森の再生まで、彼らは、繁栄するかもしれない。


「私達は…消えて行く運命なのですね。」

私は、終わり行く自分の人生と人類を憂う。


が、レイは、楽しそうにそれを否定した。

「いいえ…新しい環境に対応するのです。

新たな共生の時代がやって来るのです。」

レイの言葉が、終焉を含んだ新しい未来に輝くのを感じる。


「さあ、一緒に逝きましょう……永遠に死のない世界に…。」

レイのしなやかな手が、私の両手をとる。


本当に…終わりなんだな。


レイの瞳に自分の魂の最期の光を見た気がした。

「はい。」

私は覚悟を決めた。


深い林の闇の中から、甘い水の香りが漂ってくる。

林の入り口で、若葉溶生が私を待っていた。

私は、闇に足を踏み入れようとする溶生の後を続いて行く…いや、行こうとした。


その瞬間、すごい勢いで、何かを噴霧された。


それは、激しい頭痛を引き起こし、しばらくして、私を正気に戻してくれた。

あの…カラフルな世界は消えていた。

若葉溶生は消え、代わりに長山が私の前に立っている……


訳がわからなくなる。


混乱する私の背後から男の声がした。


「池の妖怪に騙されては行けませんよ。池上さん…。」


振り向いた私の前には…北城…が、変装して立っていた。


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