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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
151/202

143話池の妖怪

死にそうになる私と真逆に溶生は私に気がつくと、安心したように立ち上がる。


「君は…見たんだね?」

若葉溶生は、憂いのある綺麗な声でそう聞いた。

「えっ…(°∇°;)」


見られてしまったの間違いじゃ…


私はパニクっていた。

ライトを床に向け、ぼんやりとした世界の中で、私は自分の心臓の音を聞いていた。

「雅苗を…見たのだろ?」

「え…あの…。どういうことでしょうか?」

私は、後ろに一歩下がり、軽くペンライトで辺りを照らした。


あれは…私の幻覚だ。


溶生の言葉の意味が理解できなかった。

「隠さなくても良いんだ。私も、彼女を感じた。」

溶生の声が、甘さを含んで部屋に充満する。

「百物語が成功したんだ。だから、彼女の霊が屋敷に来たんだよ。」


やめてくれ。


私は、薄暗い闇の中で、嬉しそうに不気味な話をする溶生の声に恐怖を感じた。


とりあえず、明かりをつけよう。


ペンライトを壁に向け、スイッチを探す。


「さあ、教えてくれないか?彼女が何を伝えに来たか?」

壁に進む私に、溶生が近づく。

彼の右腕が体にあたり、彼は幻覚ではない事が理解できた。


「幻覚を見ました。彼女は…何か、北宮家の因縁について話していました。」

因縁…そんな言葉が飛び出た事に驚いた。まるで、本当に怪談のようだ。


「ここは暗い。とりあえず、外に出ないか?」

溶生の手が、私の腕にかかる。反射的にそれを払って部屋のスイッチを入れようとした。が、溶生にそれを止められる。

「ダメだよ…灯りは…良くないものを呼んでしまうから。」


溶生の声と次の静寂に、蛙の鳴き声が耳に戻るのを感じた。


雅苗の言葉を思い出す。 「ダメですよ。侵入されたら困りますから。」


雅苗は、それを池の妖怪だとそう言った。


「い、池の妖怪が来るから、ですか?」

私は、率直にこう聞いた。

夜行虫は、光や熱に反応し集まってくる。

気絶する前にはついていた灯りが消されていた…と、いう事は、雅苗がそれを心配して消したと言うことだろうか?


「ああ、あの竜神池の話だね。」

「竜神池?」

「ああ、この辺りで、昔からある伝説のようだよ。7年に一度、池が現れそうだ。」

溶生の話に、秋吉と昼に話した事を思い出した。


ロプノールの様に消える池………


7年に一度。


心臓がドキドキした。

ここで、ある伝説が頭をよぎる。

胸ポケットの尊行さんの手帳に手を当てた。


池の平……


静岡県の水窪町の幻の池…亀ノ甲山に現れるという幻の池…


あの付箋には意味があったのだ。

尊行さんは…何かをそこで見つけたのだ…。


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