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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
149/202

141話幻覚

雅苗は、静かに私に微笑みかけていた。

長く感じたが、多分、一瞬の事だと思う。

私は、その笑顔の悲しさに胸がつかれる。


「尊行のメモ書きが机の2番目の引き出しにあります。それを読んでください。」

雅苗の言う事を私はきかなかった。


メモの代わりに私は、雅苗の頬へ手を伸ばした。


雅苗は悲しそうに私を見つめてはいたが、逃げようとはしなかった。


私の右の指は、彼女のほほを触れていた、が、感触はなかった。


「いつ…気づいたのですか?」

雅苗は、まるで私の指の感触に反応するように、せつなげに眉を寄せる。


「昔の君の姿を思い出した時に。私は、人の顔を覚えるのは苦手でね、高校の友人の顔すら忘れてしまうんだよ。

なのに、一度、イベントで知り合った少女を覚えてるなんて、おかしいんだよ。」

私は切なくなる。

雅苗は、泣きそうに笑って、私の左腕に自分の右腕を絡ませる。

「恋をした…とか、思いませんでしたの?」

「好きですよ。ウスバキトンボは、昔から大好きな虫の一つです。」

私は、あのイベントで私の頭に止まるウスバキトンボを思い出していた。


夏の青々とした稲の上を泳ぐように飛ぶトンボ…子供達の声。


私は、何かの幻覚を見ているのだと自覚していた。

雅徳(まさのり)さんの虫を媒体にしたガイア論を思い出していた。


これも…虫が運ぶ幻覚なのだろうか?


などと、感慨にふけってはいられなかった。

階段を荒々しく降りてくる足音がした。


それから、乱暴に戸を叩く音…そして、溶生(ときお)さんのよく響く怒声が私を呼んでいた。


「池上くん!はやく、雅苗から離れるんだっ。」


(○_○)!!


ビビった…そして、後ろに下がろうとしてひっくり返る。


「それは、雅苗ではない!ソイツは…」


「わ、若葉さん!す、すいません、私はっ…何も、

い、すぐでます。」

私はパニックになる。


疑われる

ボコられる

嫌われる

捕まるっ(>_<。)


どうしたら…


私はあたふたしながら、雅苗に鍵をくれるようにジェスチャーする。


そんな私に雅苗は、近づいて、私は不覚にも悲鳴をあげた。


雅苗は、尻餅をつく私に馬乗りになり、ゆっくりと左の耳に柔らかい唇を寄せてこう言った。


「私を…幻覚だって…意地悪を言ったのは、あなたよ。」



次の瞬間、私は気絶をした。


意識を取り戻した時には、暗い部屋に一人きりだった。


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