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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
143/202

135話 尊行

「蜜蜂が居なくなったら…人間も4年はもたない


あなたが失踪した2012年、アインシュタインの台詞として世の中を流れました。でも…彼はそんな言葉を発してない、とも言われていますね。

その真実はともかく、その年は大変でした。

蜜蜂が…消えてしまう事件がありましたから。」

私は、蜜蜂の標本を見つめて話のきっかけを作る。

雅苗も標本を見つめた。

「そうでしたわね。欧米でも、それは問題になりましたわ。」

「どうして…あなたは、居なくなったりしたのですか?」

私は、雅苗を不安にさせないように穏やかに質問した。

雅苗は私を見て、少し困ったような顔をする。


仕方がない。


7年も失踪していたのだ。彼女にも色々と事情があるに違いない。


「7年前…ここで起こった出来事を、上手く説明は出来ませんわ。

原因は…もっと昔にまで(さかのぼ)るのですから。」

雅苗は机の辺りを見つめる。近づいて来るのかと、私は、一歩、机から距離をおく。

「西条八十『砂金』ですか。」

私は、数時間前に机に置いてあった本について聞いてみる。

「あなたが…見つけてくださったのですね。」

雅苗は嬉しそうに微笑んだ。

「いえ、まだ、あの表紙の謎が解けていません。

あれは…あの表紙には、やはり、何か、メッセージが含まれていたのですか?」

私は、込み上げてきた謎や不満に我慢できずに声をあげる。

「ええ……これは、北宮4代の課題なのですわ。」

「北宮…4代?」

聞き返した。

雅苗を始めに、雅徳、尊徳、ここで3代と遡る、そして、次の代と言えば……尊徳先生の父親に当たる人なのだろうが、私も、そこまでは知らなかった。


「はい、曾祖父(そうそふ)尊行(たかゆき)から始まる長い…物語です。」

雅苗は、記憶をたどるように目を軽く細めて、それから、私に微笑みかける。

「お座りください。話は長くなると思いますから。」

雅苗に言われて、私は、焦った。

人の家の家系について、のんびり聞いてる暇なんて、この状況であるのだろうか?

「いえ……私は、そろそろ、仕事もありますし…」

と、答えながら、本当に給料が貰えるのかが心配になる。いや、その前に、生きて帰れるかも怪しいが。

雅苗は、そわそわしだした私に気がついたのか、申し訳なさそうに微笑んだ。

「そう、でしたわね。でも…この話を聞いていただかないと、いえ、これも、仕事だと考えて下さってかまいません。」

と、雅苗に言われても、7年も失踪していたあなたは、私の雇用主ではない。

なんて、言い出せない、女主人の貫禄が、彼女の言葉ににじむ。

が、ひるんでばかりもいられない。

温室が…あっちもこっちも大変なのだから。

とりあえず、私は、近くにあった丸椅子に座りながら、雅苗に近づいた。

「すいません、温室で虫が大量発生しています。

説明は手短に、そして、7年前に、同じような事があったかをはなしてもらえませんか?」

私は、ここで自分がマスクと保護眼鏡をつけたままだと気がついた。

とりあえず、保護眼鏡をとった。

雅苗はそんな私を見て、無邪気な笑い声をあげた。


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