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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
140/202

132話シンゲン再び

静かな夜だった…

昭和初期に建てられた、上品な板の廊下の行き止まりのドアの前で、私は、保護眼鏡とマスクの怪しい出で立ちにも関わらず名前を呼ばれた。


失踪していた若葉雅苗に。


「こんな姿ですいません。」

マスクと眼鏡を外したい衝動をぐっと押さえる。

原因が分からない何かがおこっている限り、これを外すわけにも行かない。

「構いませんわ。エアロゾルを心配されてるのでしょう?

でも、あなたは大丈夫です。と、言われても信じられないでしょうから、お好きにしてください。」

雅苗の口調はおっとりとしていて、非現実な気持ちにさせる。


いや、違う、そんな悠長な話じゃない。

そう、私は、7年、行方不明だった若葉雅苗に会っているのだ。

7年、どうしているのか、7年前に何があったのか、それらを問うのが先の気がする。


「ありがとう。」

はやる気持ちと裏腹に、それだけ口にするので精一杯だった。

自然にポケットの鍵を握りしめる。

北城がこの事を知ったら…どんなに喜ぶだろう?

そして、彼女がいれば、全ての謎を解き明かし、この屋敷を脱出できるはずだ。

が、もし、間違っていたら?


その確率が私を迷わせる。大体、マスクと保護眼鏡の怪しげな私を認識し、かつ、「池上先生」なんて呼んでいるところが怪しい。

私は、国立大学の助教授に先生と呼ばれる人物ではない。


これは幻覚かもしれない( ̄〜 ̄;)


何か、奇妙な浮遊感に包まれながらそう考えた。

軽い、めまいの中で、再び部屋の鍵を握りしめる。

もし…これが幻覚だとして…私も何かに感染していたとしたら……


幻覚に惑わされて、北城を襲う自分を想像して首をふる。


ダメだ。しっかりと確かめた後でなければ!

涙の再会は、本人だと分かってからで良いのだ。


大体、「池上先生」なんて、昔の会社の営業にすら言われた事はなかったのだから。


そう考えると、無意識に先生と呼ばれたがっていたようで胸が痛む。

それは、自慢は出来ないが、卑屈になるような人生はおくっては来なかった。

「すいません、聞いてます?私の話を。」

と、雅苗に言われて、はっとした。

「すみません、もう一度、お願いできますか?」

私は、恐縮しながら雅苗に頼んだ。

雅苗は、困り顔になりながら話をしてくれた。

「夏祭りに先生は一度、こちらにいらしてくださいましたね?虫探偵シンゲンとして。」

「(///∇///)………。」

「その時、この辺の林や山を調査されましたよね?」

「あっ…はい。」

「その時のお話をお伺いしたいのですわ。」

雅苗の言葉に困惑する。


虫探偵シンゲン……


ただ1時間の黒歴史が、波のように何度も私を叩きのめす。


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