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パラサイト  作者: ふりまじん
特別な仕事

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13/202

12話 黄金虫

何が言いたいのか、長山の真意をはかりかねていた。

そんな困惑する私と自分にの為に長山はコーヒーを作る。

そして、10年近く昔の話を甦らせるためにコーヒーで体を潤すように美味しそうに飲んだ。


私も長山がくれたコーヒーに口をつけ、あの時代を思い出していた。


確か、環境問題が、温暖化が話題になっていた気がする。

パニック映画がヒットして、そのせいもあるのだろうが、動植物の生息域について話題になった。

海岸線が短くなって、日本の砂浜が無くなるとか、ヴェネチアが沈むとか、そんな話が出ていた気がする。

干潟が埋め立てられて、ゲンゴロウなどの水辺の昆虫がひっそりと姿を消していった。


そんな中で、雅苗さんも絶滅危惧種を調べていても不思議ではない。


ただ、行動範囲が遠くて北海道が限度の私からしてみれば、ファーブルの駆け回った南仏の野や山を、昆虫達を、その生体を知る人たちと大いに語れる長山の身分は羨ましい限りだ。


一体、彼はどんな話をしたのだろうか?

インターネットに論文は載ってるだろうか?


「池上さん?」

長山の声が耳に入って、私は無意味な空想を止めた。

「あっ、すいません。」

全く、私は自分の虫好きを恥ずかしく感じながら長山に返事を返した。


「変な方向に話が進んでいますから、考えてしまうのはわかりますよ。

でも、話がトンデモなくなるのはこれからです。」

長山はキッパリと私に不気味な事を言い渡す。


「トンデモ……ですか。」

私は黄金虫の新種の話を思い浮かべてワクワクした。

ファーブルのフィールドの新種。スカラベでなくとも、コガネムシ科は好きなジャンルだ。

カブトムシや、カナブンなども仲間に入るこの科は、子供たちだって好きに違いない。



「2012年…マヤの予言なんて、覚えていらっしゃいますか?」


一瞬、長山の雰囲気が変わった気がした。

いや、部屋の空気が変わった、とでも表現するべきか。

とにかく、怪談などをすると覆われる、誰かに見られるような、少し空気が重く感じたのだ。


「ええ…。」

私は言葉少なに当時を思い出していた。

雅苗ほどではなくとも、私も環境問題についての会議や講習の出席した。


ファーブルを持ち出さなくても、日本でも外来種による新たな疫病についてやら、農薬による在来種の動植物への影響、温暖化による生物の分布の変化など、それなりに忙しい思いはしていた。


マヤ歴についてはそれほど詳しくはないが、

太陽黒点との関係については少し本を読んだ覚えがある。


昆虫は、星の動きを取り入れて行動するやつもいて、例えば、糞転がしは天の川の星明かりを道しるべにしている事が最近、明らかになっている。


太陽黒点の増減が、どう影響するのか、しないのか、

古代のマヤ人はどう考えていたのか?

豊かな生態系を育むアマゾンを思い浮かべて、考えたりしていたと、思う。


「実は、私は2010年、プロバンスで雅苗さんと会っているのです。」

長山は静かにそう話し出した。


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