120話引き出し
治療薬…何を?
私は混乱する。そして、動悸がするのを感じた。
「聖遺物と呼ばれるものは、大なり小なり、何かのご利益がある。
万病を治す…聖杯は有名だよな。
イエスの処刑に関係あるものには、少なからずそのような噂がある。
イエスを刺したロンギヌスの槍、
貼り付けにされた十字架。
そして、遺体を包んだ聖骸布。
そして、それらを手にすると、なぜか、世界を支配できると続く。
不思議だろ?なぜ、病気がなおると世界を支配できるのか?」
北城の声が不気味に夜の闇に広がる。
「それは……感染症の特効薬なら、それで感染爆発がおさまり、平穏に生活が出来るとしたら、巨万の富と名声が得られるから…。」
背中にゾクリと何かが走る。
パンデミック?
新たな感染症
novus ordo seclorum…ノブス オルド セグローム
1ドル札のあの文章を思い出した。
新時代の秩序…
何かが頭の中で整い始めて来る感じがした。
草柳レイの言葉を思い出した。
「1ドル札を探すなら、財布の中をおすすめするわ。」
彼女は次にこうも言った。
「お財布は平たい引き出しに入れてましたよ。」
私は操られるように机の平たい引き出しを開いた。




