108話 モルゲロン
モルゲロンズ病…
それは、21世紀初頭のアメリカで名付けられた皮膚疾患の寄生虫妄想の事である。
とはいえ、本人達には、深刻な病気で、ある日、自分の皮膚から何か、未知の繊維がわいてでてくるのだそうだ。原因は不明。
しかし、2005年頃、マスコミに取り上げられて、様々な医療関係者が研究をした。
その結果、衣服などの繊維によるもので、謎の飛び虫による様なものではないと一次の決着を見たのだった。
雅苗は、このモルゲロンズ病の研究に携わり、そこで、夫となる若葉 溶生と再会することになるのだ。
「モルゲロンズ……。ここに来て、モルゲロンズがどうかかわるんだ?」
と、北城に聞きながら、もう、なんでもアリな気がしてきた。
本当に、ドッキリとかじゃないかとカメラをつい、探してしまう。
「モルゲロンズ…この名前を聞けば、ノストラダムスとの関連性は明らかではないか!」
北城は、小学生の漢字テストが出来ない子のように私を扱う。
が、21世紀にアメリカで騒がれた病気と、16世紀の予言者…この場合、疫学者との関わりが見えなかった。
「まさか、コロンブスがアメリカから持ってきた奇病とか、言い出さないよな?」
私は冗談混じりに笑っていった。が、北城は笑わなかった。
「コロンブスをここで登場させるセンスは認めるが、まだ、良くわかってないようだな。」
と、北城は、懇切丁寧に説明をしてくれた。
まず、アメリカの謎の飛び虫による奇病のネーミングであるが、2002年に、息子さんに発病した奇病に母親のメアリー・レイタオさんが命名したのだそうだ。
17世紀のフランス作家トーマス・ブラウンの随筆にあった『ラングドックの子供達の風土病』、モルゲロンからの命名だった。
「ラングドックを調べると良い。」
北城に言われて検索すると、そこは、フランス南部の地域だった。
「確かに、これは…プロバンスの話になるな。」
私は、バラバラのピースが怪しげに重なりあうのを感じた。
そう、ラングドックと呼ばれた地域は、モンペリエを含んだ、ノストラダムスの生まれ馴染んだ地域である。
そこでの奇病なら、モンペリエ大学を始め、ヨハネ騎士団との関連も考えられる。
そして、21世紀のモルゲロンズ病を研究した雅苗も、これに気がついたはずだ。
なるほど、予言者ではなく、疫学者としてのノストラダムスに興味がわいた意味が納得できた。