107話ダ・ヴィンチコード2
北宮 雅苗
生物学者であるが、お嬢様。
ポップスターだった若宮 溶生と結婚し、7年前に謎を残して失踪した。
今から100年前、1919年に出版された『砂金』に自作のケースを被せ、そこにシケイダ3301のセミを描いた。
そして、『トミノの地獄』のページにボッチチェリの『地獄の見取り図』と言う絵を張り付ける。
失踪後、誰かに謎解きを迫るようでもあり、
段々、違うような気持ちもしてきた。
ボッチチェリの『地獄の見取り図』は、2013年…彼女が失踪した翌年の作家ダン・ブラウンのヒット作だからだ。
しおりを見ながら北城は言う。『ダ・ヴィンチコード』だと。
「雅苗さんは、ダン・ブラウンのファンなのか(-"-;)じゃあ、次はバチカンの何かもあるんだろうか。」
私は雅苗さんのミーハー感覚にイライラしはじめていた。
『ダ・ヴィンチコード』
『天使と悪魔』
『インフェルノ』
は、主人公ロバート・ラングントンの映画の三部作として有名だ。
ここで、『天使と悪魔』で思い出した。
2013年…ローマ教皇の退任劇があったのを思い出した。
確か、ベネディクト16世の辞任という、珍しい形での新教皇だったはずだ。
バチカンに雷が落ちたり、聖マラキの予言があったりと、色々な噂があったのを思い出す。
でも…そんな事、2012年の夏に予測出来るのだろうか?
基本、ローマ教皇は生涯変わらない。
普通なら、病気など予測もつくだろうが、今回は、突然の話だったから、ノストラダムスも聖マラキもこうなるなんて想像できなかっただろう……。
「何を考えている?」
耳に北城の声が飛び込んできた。
「雅苗さんは…何を考えてたんだろう?」
私は、不思議な謎にうすら寒さを覚えた。
「私は、池上、お前の事が心配だ。
なんだ、いきなり、ダン・ブラウンの話なんて。」
北城は不気味そうに私を見る。
「お前が『ダ・ヴィンチコード』なんて言うから。」
私は、戦犯にされた事に不服を言った。
「今年は2019年だからな、砂金は1919年に出版されて100周年になるが、今年はダ・ヴィンチの没後500年でもあるんだ。
この年に何かを考えていたとするなら、ノストラダムスより、ダ・ヴィンチを想像すると考えた。
ヨハネ騎士団は、テンプル騎士団とも縁があるし、確か、『ダ・ヴィンチコード』には、レンヌルシャトーが登場にからな。」
北城に言われて、私は絶句する。頭がついて行かない。
「で、『砂金』には、『インフェルノ』で使われた『地獄の見取り図』が張り付けられてるだろ?
それなら、『天使と悪魔』のバチカンの何かもあると考えるじゃないか。
これは、夏祭りの子供用の謎かもしれないぞ。」
そうに違いない。と、真面目に思った。
が、北城は私の説明を一通り聞いて爆笑した。
本当に、失礼なくらい楽しそうに馬鹿笑いをかましてくれた。
腹が立った…が、困った子供を見る顔で私をみて、
「『インフェルノ』の公式発表は2013年1月だ。
その半年も前に、日本の片田舎の夏祭りで公表されるとは!」
北城はそう言ってまた、笑った。
「悪かったな、世間知らずで。しかし、公式発表がいつかなんて、普通、知らないだろう。」
と、不機嫌に文句を言う。
「そうか?確か、本の後書きに書いてあるぞ。」
北城はそう言いながら、なだめるように私の肩をポンポンと叩く。
「知らないよ。全く。でも、だったら、なんで、あんな意味ありげにボッチチェリの絵なんて張り付けたんだろう?」
私は、文句をいいながら、雅苗さんは、やはり、北城の親族だな、と、思った。
「さあ、まだ、わからないが、このしおりについては、思い付いたことがある。」
「なんだ?」
「モルゲロンズだ。」
北城はそう言った。