104話設定
私は、少し叙情的に話を盛り上げて書いた。
キツネボタンの話には、春先の牧草が少ない時、飢えに耐えきれずにキツネボタンを食べた牛と、病気の妹を重ね合わせ、決死の選択を演出した。
西条八十のプロフィールと100年目を迎える詩集に触れて、著作権の説明を軽く書いた。
投稿する。
どれだけの人間が見るのかはわからない。
しかし、アクセス数はどうでもいい。
ただ1人、雅苗さんに届く事を願う。
北城が言うには、もし、故意に雅苗さんが失踪したのだとしたら、blogが更新される事を想定し、更新の知らせが入るようにしてるだろう。と、言うことだった。
投稿が終わって北城に言うと、彼は、私に変な事を聞いてきた。
携帯を新しく変えないか?と。
「おかしくはないだろ?5Gが始まるんだから、買い換えないか、と聞いたんだ。」
上級め…(-"-;)
日雇い作業員の私の身分が胸に刺さる。
「いらないよ。別に携帯なんてメールと電話で十分だから。それより、下は大丈夫なのか?」
私は話をそらした。
海外凱旋の男に、早期退職の話なんてしたくは無かった。
いや、北城なら、変な誤解をしながら羨ましがるかもしれない。
「そうか、では、私が新しいのを買ってやるから、そのアドレスを貸してくれないか?」
北城の言葉に、サイコパスを感じる。
「文脈おかしいぞ、メールアドレスを変えるつもりも、携帯を変えるつもりもない。」
私は、少し不機嫌に北城を見る。昔の携帯のセールスじゃあるまいし、本体を貰っても毎月の携帯料金が上がっては仕方ない。
「困ったな…。このblogの連絡用に借りたかったのだが…。」
北城は困っていた。が、自己中な困り方だと思った。
「北城…それなら、お前のスマホでやればいいだろ?親族なんだし。」
私は不平を言う。北城はそれを口をへの字にして聞いていた。
「そうだな…。私は、この通り口が上手くないから、どう切り返して良いのか分からないし、正体が知れたら逃げられそうだが仕方ない。」
えっ…(°∇°;)
確かに、北城にそう言われると心配になってきた。
7年行方不明だった親族が、中二病なゲームのはてに連絡してこられたら…
確かに、雅苗さんだって辛いに違いない。
「わかった、それなら、私のメールで登録するよ。
北城…お前は、説明が分かりづらいんだよ。
つまり、blogの更新があって、登録のメールアドレスが変わっていたら、何か、本人がアクションするかもしれないと考えたんだろ?
だったら、登録して連絡が来るかもしれないから、私に登録して欲しいと、そう言えばいいんだよ。
新しい携帯なんて要らないし、それぐらい、友達なんだから、やってやるよ。」
私は、呆れながら、blogの設定欄に自分のアドレスを入力し、コメントがきたら連絡が来るように設定した。
設定を完了させると、なんだかドキドキしてきた。
馬鹿馬鹿しいとは思うが、それでも、謎の組織からコメントが来たらどうするべきか、などと考えずにはいられなかった。




