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パラサイト  作者: ふりまじん
秘密
105/202

100話無情

急な睡魔に襲われた私。


私は3時から7時まで休憩を貰っていたし、夜勤の経験もある夜型人間なので11時現在に、こんなおかしな睡魔が襲ってくるなんて、今までなかった。


次に考える戦慄の結論…それは、

血圧と、脳溢血(のういっけつ)…。


気がつけば私も50代…織田信長の 人生50年〜が胸に響く年頃だ。


一度、夏場の倉庫仕事で、座っていた大柄の男がバタンと倒れた時は怖かった。本当に人形みたいに無防備に倒れるのだ。


叫んでも、呼んでも、軽く叩いても動かないし、

涼しいところに移動させるのも三人がかりで大変だった。


私は、普通の体型だから、あそこまで大がかりにはならないだろうが、

派手に迷惑をかけた感じは、次の日からの出勤時に恥ずかしく感じるからできれはさけて生きて行きたい。ついでに、本気で失神するとたんこぶが出来るらしい。痛そうだ。


どちらにしても、普通の睡魔では無いのは分かる。

体がダルいし眠いのだが、意識がわりとしっかりしていて耳が生きている。


秋吉のいる撮影所の音が聞こえた。

音無の話が終わり、溶生の演奏がやんだところで、 しばらくの静寂と闇が訪れた。


そんな闇の中、誰かの唸る声がした。


う、うううっ。


不気味なうなり声に私は恐怖を感じたが、それは、自分が必死に助けを呼ぶために唸っているの自覚した。


屋敷には、長山と溶生と北城と秋吉と私。


北城は、私を最後の守りのように言っていたが、自分が真っ先に倒れることになろうとは、泣けてくる。

学生時代に暗記させられた平家物語の一節を思い出した。


中年男のうなり声に、男盛りの坂道をくだる諸行無常の響きを感じる…。



いつまでも、気楽に生きられるとは思わなかったが、死ぬときなんてあっけないのかもしれない。


これで死んだら、わたしも屋敷の怪談の一員にされてしまうのだろうか?


こんな馬鹿げたことが頭をまわり、これだけ頭が回るなら、とりあえず、脳溢血の心配は無さそうだと安心した。



私が、二階で(うめ)きながらも、冷静さを取り戻し始めた頃、

逆に現場が、緊迫してくる。


音声だけの情報ではあるが、撮影は止められたようだった。


秋吉が明かりを懇願するなかで、

溶生は立ち上がってどこか、一転を見つめているらしかった。


「若葉さん?若葉さん?ち、ちょっと、ちょっと、どうしたんですかっ。」

秋吉の慌てる声がうるさく感じる。

「あの人が…帰ってきた。」



ゾクッ。



体が麻痺しているはずなのに、溶生の言葉に鳥肌が立った。


あの人って…雅苗さんの事だよな………。


私は、なんの疑問もなく、幽霊の雅苗をイメージしていた。


幼い頃にみた、夏の心霊スペシャルが走馬灯のようにめぐる。


憑依…です。


既にこの世を去ってしまった心霊研究家の顔が思い浮かんだ。


雅苗さんの霊が…憑依したのか?


真面目にそんなことを考えた。


「溶生さん、来たって…、雅苗さんが帰ってきたって、そんな事を考えるのは、7年前、あなたが彼女を殺したからですか?」


誰かが怒鳴る声がした。


秋吉の声がしない。


これが、番組の構成なのか、違うのか、

私には、判断がつかなかったが、

少なくとも、すでに私の事なんて皆、忘れているだろう事は理解できた。


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