99話セブン
7と言う数字に脅されながら、私は資料を整理した。
トミノの地獄と新型ウイルスの感染が関連付けられていたから、一応調べてみた。
2012年、MARSの感染報告を見たときは、なんかゾクゾクした。
2005年は、無かったが、SARSが2002年〜2003年と近い時に広がったのは、少し悩んだ。
1998年は無かったが、1996年O-157。
1980年〜は、HIVと共にペニシリンが効かない耐性菌
1977年は、エボラウイルスと、なんだか、色々思い出したが、思い出してみれば、世界中、どこかで感染はおこっていて、それを周期で考えるのは難しいのはわかった。
考えすぎか……。
思わず苦笑した。
シケイダ3301と言う組織が、何を考えて回文素数なんて使ったのかは知らないし、雅苗もそこまでは考えてなかったかもしれない。
では、『トミノの地獄』は、なんの意味があるのだろうか?
ネットで調べると、戦争の悲惨さを謡ったとか、身売りの悲しさを謡ってるなんて言うものもあった。
が、ネットも、歌詞にも虫もセミも登場してこない。
地獄にトミノが向かう、そんな内容だった。
パンデミック…なんて、馬鹿げているよな。
私はため息をつく。
朝から変な事がありすぎて、漫画のような話を作ってしまうのだろう…いや、もう一つ…ミスリードさせたものがあった。
私は、『トミノの地獄』のページに張られたボッチチェルリの『地獄の見取図』を見つめた。
こんなワザワザ張り付けるのだから、何か意味があるのだろう。
そう考えれば、ダン・ブラウンの『インフェルノ』を思い出すし、そうなると、未知のウイルスなんて、つい、考えてしまう。
いかん。
私は気持ちを切り替える。
こんな謎、訳がわからない。
それに、新種のウイルスなんて、いつ発現するかなんて予測がつかないのだ。
ウイルス攻撃なんて、小説の世界の話で、実際に、そんな事は上手く行かないのだ。
ウイルスは、すぐに変異を繰り返すし、媒介する昆虫をコントロールなんて、上手くできないのだ。
遺伝子を組み替えた雌の蚊を使って、蚊の個体を減らそうとした試みも失敗している。
そうそう簡単に生態系を支配など出来ないのだ。
まして、日本の大学の助教授に、何が予測できると言うのだろう?
そう、パンデミックの予測なんて、人間が簡単に出来るものでは無いのだ。
そんな事より仕事をしなくては。
気分を変えようと温室の画像を見た。
蕾が揺れながら、ほころびはじめている。
そうだ、悪い頭で解けない謎に、挑んでいる場合じゃない。
ショクダイオオコンニャクの開花の報告をしっかりとしなくては。
私は長山の携帯に電話した。
長山は電話に出なかった。三度かけて、心配になってきた。
マナーモードにするから大丈夫だとは言われているが、撮影現場で何かあったのだろうか?
次に、北城にもかけてみた。が、こちらも応答がない。
不安が込み上げてくる。
立ち上がった。現場に直接話をしに行くために。
が、次の瞬間、私は立ちくらみがして倒れてしまった。