95話北城
しかし、なぜ、ここで北城の名前が登場したのか、私は気持ちが混乱し、世界の陰謀まで話がいきそうになるのをなだめながら、
落ち着いて考える。
そもそも、北城とは、インターネットの無い時代、
パソ通…パソコン通信と呼ばれていた時代、草の根BBSの日本ゲンゴロウ友の会で知り合ったのだ。
確かに、日本は広い、インターネットは世界と繋がってはいる。
が、しかし、子供が虫嫌いになり始めたこんな世の中で、生物学やら虫を愛する人物なんて、知れているのだ。
学習ノートからも姿を消した昆虫たち。
生物学の仲間なんて、思えばどこかで知り合いが、たぶる確率は高いに違いない。
しかも、雅苗と北城は親族らしいし、長山は地元の人間だ。
なんだか、おかしなところに哀愁を感じながら、嫌な予感を感じたりする。
長山は、生物学を学んでも、テレビの関係の仕事に就いた。
もしかしたら雅苗は、二人を小説の題材と言いながら協力させていた可能性だって捨てきれない。
何しろ、愛人役のレイはロボなんだから。
これも…何かのどっきり動画なのだろうか?
そう考えると腹立たしいが、昼間のレイの姿に別の可能性も考えてしまう。
私は妖精になったの。
白昼夢のレイの台詞が不気味に胸をついた。
私は気になって北城の名前で検索をかけてみた。
学校のパソコンを通じて知り合った少年は、後に私立の高校から、アメリカの大学へと留学し、
なんだか知らない、知りたくもないような、きらびやかな論文に囲まれて、インターネットにプロフィールをばらまいていた。
海外留学組の北城と、国立大の助教、雅苗。
それに比べて、私は高校時代の日本ゲンゴロウ友の会のパソ通メンバーで、名前を言っても、ほぼ皆、首をかしげる大学卒業。
世間の皆様からしたら、私と北城との接点が不思議に思うに違いない。
なんだか、格差を感じて少し気分がよどんで…いる場合ではない!
そうだよ。
長山。
長山は、雅苗の知り合いで、彼女の怪しげな計画を知っていた事になる。
突然、怪しさが増してくる長山。
番組を映すモニターが、薄暗さを増して、私は、急に秋吉の事が気になり始めた。
本当は、北城と長山の悪ふざけに、溶生さんと秋吉が狙われているのだろうか?




