01 ゲームスタート
「ゲーム? 一体なんのゲームだ?」
『はい、簡単に言ってしまえば、鬼さら逃げる、即ち《鬼ごっこ》です。』
「は? 私達は、そんなくだらない子供の遊びをするためだけに、ここに連れてきたっていうの? 私は帰るわ!」
帰るって、この人どうやって帰るつもりだろう。閉じ込められているだろうし、出れたところで、ここがどこさすら分さらないでしょうに。
ガチャっ
「鍵すらかけてないなんて、ほんとに馬鹿なのね。」
え、開くの? それならみんな簡単に逃げれちゃうけど、、、
『まだ、話の途中です。勝手に出られるのであれば、貴女、殺しますよ? 言っておきますが、これはただの鬼ごっこではありません。本物の殺人鬼が殺しにくる、鬼ごっこなのです。退屈はさせません。しかし、ゆうことを聞かないなら、今さら1人向かわせますよ?』
「そ、そんなこと、貴方達にはできないわ。そんな勇気ないでしょ。」
この人、めっちゃ、足ブルブルしてる。怯えてるみたい。強気の口調だけど、意外と気弱なタイプだろう。
『残念ながら、その勇気はあります。そうでないと、こんなことしませんよ。』
「う、分かったわよ、戻るわ。」
『さて、気を取り直して説明していきます。先程も言った通り、今から、本物の殺人鬼から逃げてもらいます。』
「お、おい。本物の殺人鬼から逃げるってどういうことだ!」
「口を挟まないでください。弟切さん。」
『この古屋から出ると、半径10Km程の広いエリアがあります。色々な建物、道具、食料、障害物があり、それらを駆使して、殺人鬼から逃げ切ってもらいます。期限は今から5日間です。ですが、ずっと逃げているのは、さすがに無理なので、9時~18時の9時間だけ。それ以降は、絶対に殺人鬼は襲いません。』
『しかし、19時まで、この古家に帰らなかったら、どうなるか、分かりますよね?』
『ちなみに、最後まで生き残れたら、このゲームの主催者から、新たなる名誉と賞金100億円を勝ち取ることができます。しかも、生き残った人全員に。』
『このゲームに招待されているのは、ある分野の天才達です。互いに自己紹介してみては?』
~~~~~~~
あれから、あーだ、こーだ、あって、自己紹介が始まった。
それにしても、"ある分野の天才"という所が気になる。僕は、別にずば抜けて凄いところなんてないんだが、、、
「全部で12人だな? それじゃ、私から時計回りに行こうか。」
まぁ、反対する意味もないし。
「私は、弟切霜夜。これでも、一応探偵をやっている。『スクリーチング』という、探偵事務所を経営してるんだ。大きい事務所だから、知っている人も多いだろう。」
スクリーチング? 確か、上野の辺りにあったはず。数多くの難事件を解決してきたことで有名だ。この前も、連続殺人事件の犯人を見つけたとニュースでやっていた。でも、逃げられたんだっけ。
「時計回りなら、次は俺か。苧環学、弁護士だ。俺にかかれば、黒であろうと、白であろうと、真っ白に染めてやる。よろしくなっ!」
それって、言っていい事なのか? まぁ、この人も、かなり優秀な弁護士なのらしい。
「私は、鬼灯薊、女優よ。まぁ、私のことを知らない人なんて居ないでしょうに。この前の朝ドラにも、映画にも出てたんだから。」
あ、さっき逃げ出そうとしてた人だ。あの人、女優だったんだ。あまり、ドラマとか見ないからわからなかった。
「翁草エリカです。ちょ、調香師をやってます、、、どうぞ、よろしく、、、」
調香師か。だから、この人からはいい匂いが漂っているのか。でも、なんか、近寄り難い感じがする。僕が言うのもなんだけど、友達いなさそう。
「私は、双宮左百合。こっちは、妹の、、、」
「妹の、双宮右百合です。よろしく。」
「私達は、小説家をやってます。代表作としては、『この手で世界を壊せたのなら』や『人の殺し方』などがあります。是非、読んでみてください。」
結構、グロ目な話を書いてるんだな。この小説はどっちも読んでいて、自分がかなり好きな作品だ。最初はほのぼのしているけど、最後のクライマックスは、かなり狂気的なお話だ。
双子で小説家をやっていて、2人で1つの物語を考えてるらしい。果たして、話はまとまるのか。まぁ、双子は心が繋がってるって言うし、、、
「私は、花蘇芳和蘭芹と申します。高校の教師をしております。『花蘇女子学院』の方で勤めさせて頂いてます。」
女学院の教師と言うだけあって、かなりおとしやかで、優しそうな女性だ。生徒からも好かれそうだな。
「僕は、松虫薫衣です。」
「!?っ。」
弟切さんの反応が明らかにおかしい。知り合いなのか? だとしたら、もっと早く気づいているはず、、、
「プログラマーです。前、興味本位で弟切さんの事務所のパソコンをハッキングしてしまいました。すみません。」
「お前、松虫薫衣といったな? もしかして、私があと少しのところで取り逃した、連続殺人事件の犯人、、、」
連続殺人事件の犯人? この人が? そんなことが出来そうな人じゃないと思うけど。
「え、僕が? そ、そんなわけないですよ。僕は、ハエが飛んでいても、ビックリして失神しちゃうくらいですよ? そんな僕が人なんて殺せるわけ、、、」
「私の思い違いか、、、」
「んじゃ、イイっすか? 次は俺の番ね。俺の名前は、粗毛騒話っでぇーす! まぁ、知っての通り、生物学者でーす。アラゲオオミミズとか、ソウオウムとか俺が発見したんですよォ! んまぁ、専攻は生態学だけどねぇ。」
うーん、かなりチャラそうな学者さんだなぁ。僕、こういうタイプの人嫌いなんだよなぁ。
「俺は、貶落修羅だ。元陸軍だ。よろしくな。」
「僕は、犬谷満と申します。医者です。
以後、お見知り置きを。」
最後は、僕か、、、
「ぼ、僕は、夜美月心智です。高校2年生です。よろしくお願いします。」
「あ? 子供までいるのか? ここの主催者はどうなってんだ?」
「まぁ、選ばれたってことは、何かあるんですわよね。こんな凝ったことをするはずがないですもの。」
ん、まぁ、そういうことにしといてくださいな。特に、何かあるわけじゃあ無いですけれど。
~~~~~~
『自己紹介が終わったみたいですね。それでは、そろそろ、9時になりますのでゲームを開始したいと思います。参加者の方々は、この古屋から直ちにでてください。』
『今日の鬼は、《猪突猛進》です。頑張って逃げてください。』
「お、おい、今日の鬼ってなんだ!」
『それでは、ご検討をお祈りします。』
「おい、聞いてんのかぁ!?」
はぁ、謎のゲームが始まってしまった。正直に言って、本当に怖い。嘘ではない。現に、この足の震えが止まらないのだから。