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6.情報屋との会談


お待たせしました。

今回も…長いですね…(この長さがデフォになる予感)



本日はこの後夕方に掲示板回をアップ予定です。

初の1日2回更新っすね!


 


「いやぁ、まさかこんな早くにレクス君に会うとはね。」

「せやな~、さすがに予想外やったわ~」


 この2人こそ、僕がギルド長面談の録画を渡そうと考えていた相手。大手情報検証クラン、"ディクショナリー"のクランマスター、通称"班長"とそこに所属する女性情報屋、"グリ"だ。


「班長にグリさん、お久しぶりです。」

「ホンマにレクスや。しゃべり方まったく変わってへんなぁ」

「グリさんだって関西弁もどきのままじゃないですか。またあの名前で呼ばれますよ?」


 βの時からグリさんはこんなしゃべり方だった。なんでも関西漫才が好きで、せっかくの仮想世界だからとβの時に関西弁キャラを始めたみたらしい。でも本人はごく普通の関東人だから微妙に本場の関西弁とは違うんだとか。そのせいであんなあだ名を…っとその話は今はやめておこう。


「二人ともこれから登録ですか?」

「そうだよ。いや、サポートAlと話し込んでいたら出遅れてしまってね。」

「まぁ自分ら情報屋やからな。気になったら色々聞いてまうんや。サポート相手ならタダやしの。」

「確かに聞けば色々教えてくれそうですもんね。僕の場合は色々省かれましたが…」

「そういえばレクス君はもう出ようとしていたようだね。登録は済んだのかい?」

「終わらせましたよ。それどころかギルド長と直接話す羽目になりましたが…」

「ほう、なんや面白そうなネタの匂いがするなぁ…」


 班長とグリさんの目付きが変わる。


「後で教えますから、とりあえず二人とも登録の方を済ませて下さい。」



 二人と後で連絡出来るように、フレンド登録だけは済ませてギルドを出た。


 あまり遠くにも行けないので、近場の露店や商店を眺めていくことにする。

 にしてもホントに活気がないなぁ。買い物客らしい住人はまばらだし、半数近くの露店は閉まっている。開いている店も、野菜や果物はある程度あるけど肉や魚、加工食品系はほとんど見かけない。鉄道運休の影響は本当に大きいようだ。



 そんな調子でしばらく歩いていると、グリさんからフレンドチャットが届いた。登録が済んだようだ。

 待ち合わせ場所は…広場にある食堂ね。じゃあ早速行くとしよう。




 指定された食堂に着いて中へ入る。見回すとすぐにグリさんのトレードマーク、グレーの髪が見えた。


「あ!レクスー、こっちやこっち!」


 客のまばらな店内にグリさんの声が響き渡る。

 もう少し静かにしたほうがいいと思うけどなぁ。


 グリさんのところへ着くと、隣で班長がメニューを見ながら顎に手をやり考えこんでいた。いつもの考察モードに突入していたらしい。

 とりあえず二人の向かい側の席に座る。


「あぁ、レクス君来てたのかい。」

「今着いたところですよ。とりあえず何か注文しましょう。」


 そう言ってメニューを開いたけど…目につくのはメニューに引かれた取り消し線ばかり。どうやらほとんどの料理が作れないらしい。


「これは中々の危機的状況のようだね…」


 班長の呟きが事態の深刻さを物語っている気がした。




 注文の選択肢がほとんど無いので、3人ともパンと季節野菜のスープを頼む。

 注文が終わって早速班長が切り出した。


「レクス君、それでさっきのギルド長の話というのは…?」

「僕が話すより観てもらったほうが早いですよ。録画してきたのでそちらに送りますね。」

「さすがレクス!わかっとるな!なぁ、ほんまレクスもうちのクラン入らんか?」


 もう何度目かも覚えていない誘いに、僕はいつもの答えを返す。


「βの時も言いましたけど、その話はお断りします。」

「グリ君、無理強いするのは違うよ。」

「せやけど…レクスほど有望なのはそうそうおらんで?」

「それは同意するけどね。でもクランに縛ってしまうより、自由にしてもらったほうが彼にはちょうどいいのではないかな?」


 班長は僕の意を汲んでくれたようだ。目線で礼をしておく。期待を込めた微笑みを返されたけどね。別に情報収集は趣味にしてるわけではないんだけどなぁ。

 とりあえず録画データをチャットで送る。二人とも食い入るように画面を観始めた。




 料理が到着しても二人はまだ観るのに夢中だ。待っていても仕方ないので先に食べることにした。あ、グリさんも食べ始めた。画面からは目を離さないけど。班長は…料理が来たことすら気づいてないな。



「これはまた最初からとんでもないのを放り込んできたね…」


 僕らが素材の味そのままの薄味スープを食べ終えた頃、ようやく班長が画面から顔を上げた。


「この件は早急に討伐隊を編成したほうがよさそうだね…序盤だしそれほど難易度も高くないと思いたいけどね…」

「班長はん、もし討伐に失敗したらどないなると思います?」

「んー、その場合はトードの討伐隊が解放するんじゃないか、と思うよ。さすがに今のままじゃセルトラクは干上がってしまうし、最初の町が廃墟寸前というのは、ゲーム的にもまずいだろうからね。」


 なるほど、たとえプレイヤー側が失敗しても、討伐自体は成功するって仕組みだね。まだプレイヤー全体の戦闘力は大したことがない。保険は用意しているってことなんだろう。この場合、プレイヤーが討伐成功したら、何かしらのボーナスがあるってことかな?


「それにしてもレクス君、なぜ君だけがギルド長と話すことになったんだろうねぇ?私らのときはそんなイベントは発生しなかったよ?」

「まさかレクス、最初に町に着いたゆうパターンか?」

「そのまさかですね…町に着いた時は銃士用の門すら開いてませんでしたし。」

「ははは!トップクランの連中を差し置いて一番とは、これはおもしろくなりそうだね。」

「はぇー、レクスやるなぁ。」


 そんなに驚かれるようなことかなぁ…


「狙撃しかしてないので一戦あたりの時間が短いんですよ。」

「なるほどね。たしかに君の腕なら序盤モンスターなんて一発だろう。討伐隊でも期待してるよ?」

「まだ参加するとは言ってないのですが…」

「まさかレクス、参加せんなんて言わんやろ?」

「それは、まぁ…」

「なら決定やね!レイドの狙撃隊指揮は任せたで!」

「今回は余裕がないからね。βの最後のレイド戦のメンバーを基軸にして、初心者の中から有望な人を選抜するくらいになるかな?他の人たちには残党狩りを任せよう。」


 適当に返事をしたら大役を任されてしまった…

 あの最後の戦いは成り行きで指示出してただけなんだけどな…


「じゃあ自分は大手クランとうちのクランの連中に、この話伝えとくから任せとき!」

「そうだね、私も掲示板に書いておくとするよ。」


 僕を置いてきぼりにして、ディクショナリーとしての方針は決定したようだ。


「それでレクス君、今回の報酬の件なんだが…」

「あぁ、報酬の方はいいですよ。今回の話は攻略手段やスキル・アイテムには関係ないですし。それに頼めば誰にでも教えてくれますよ。」

「クラン自体設立出来てないし、ディクショナリーとしてはそれは助かるんやけど…レクス、ホンマに報酬ええの?」

「いいですって。代わりに後で色々教えて下さい。僕はβの時セルトラクに来たことないので。」

「いや、本当にレクス君が聞いててくれてよかったよ。例の廃人クランなんかに握られてたらどうなってたことか…」


 廃人クラン…βの時に狩場や情報を独占し、レイド戦でも周りに迷惑かけまくってた人たちのことかな。


「あの人たちは今回も来るでしょうか?」

「まず間違いなく嗅ぎ付けて来るやろな。こっちから情報流すつもりははなっから無いんやけどなぁ。」

「でも厄介ではあるけどそれなりに実力もあるし、戦力として考えると、今回は排除するわけにもいかないんだよ。困ったもんだね。」



 その後は班長が薄味スープを食べ終わるまで、ちょっとした雑談をして店を出た。

 会計は班長がしてくれた。自分でするって断ったんだけど押し切られたよ。

 どうやら町までの道すがら、僕以上に薬草系は集めていたらしい。さすが何でも扱う情報屋だね。



 まだ情報収集をしてくるという二人と別れて、僕は教えてもらったグリさんオススメの宿に向かう。ログイン開始からまもなく5時間、現実では2時間半が経過している。風呂にも入りたいので一度ログアウトすることにしたのだ。



 宿に着き、とりあえず素泊まりで1週間部屋を取る。表を歩くプレイヤーの数は増えてきたけど、まだ宿の予約戦争は始まってないようで助かった。


 支払いを済ませて鍵を受け取り、宿の2階へ上がる。

 部屋は質素だけど掃除が行き届いていて清潔だった。さすがにグリさんオススメだけのことはある。

 武装をストレージにしまい、外套と靴を脱ぎ捨てベッドに横になる。



 柔らかい布団に包まれ、反射的に重くなる瞼に抵抗しながら、僕はログアウトボタンを押した。






初日からプレイヤー任せのイベントを投げ込んでくる鬼畜運営()


そういえばグリさんが関東人設定なのは作者が関東人だからです。

ホンマもんの関西弁とか知らんねん…





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