5.銃士ギルドと町の現状
今回長いです()
設定練りあげ過ぎた結果ですね。練りすぎて設定が液体化して流れだしそう…(執筆用の設定資料集くらい作れという話である。)
衛兵に連れられ銃士専用の入り口に着いた。
「今開けるからちょっと待っててくれ。」
そう言うと衛兵は詰所へ戻って行った。
言われた通り待っていると、やけに軋みをたてながら目の前の扉がゆっくり開く。扉の向こうには先ほどの衛兵ともう1人、少し立派な服を着たコワモテの男性が待っていた。
「待たせたな。さて、自己紹介しておこう。私はセルトラク衛兵第1中隊長、カルメンだ。」
「私は入城審査官のタンドールだ。」
「あ、旅の銃士をしてるレクスです。よろしくお願いします。」
「うむ、まぁとりあえず此方へ来い。」
タンドールさんに促され扉をくぐる。それにしても、さっきは兜でよく見えなかったけど、カルメンさんかなり綺麗な顔立ちだなぁ。女性プレイヤーに大人気になりそうだ。
通された先には学校の事務室みたいなカウンターがあった。タンドールさんの仕事場なんだろう。でもなんでわざわざ外に?
「では銃士の青年、レクスだったか?銃士証明を見せてみろ。」
タンドールさんに言われ、サイドメニューから銃士証明を呼び出す。すぐに目の前に現れた紙を彼に差し出す。そういえばクイーンってこのへんの説明全然しなかったな…いくらβテスターとはいえ省き過ぎだよ…
「うむ、間違いない。本当に銃士なんだな…」
タンドールさんがポツリと呟いた。
「本当にってどういうことですか?」
「ああ、すまない。ここ1ヶ月、旅の銃士は1人も来てないのでな。」
「1ヶ月…線路も列車が走っている感じではないですよね?一体何が?」
「そうだな。詳しい話をしてやりたいんだが仕事がな…悪いが銃士ギルドで聞いてみてくれないか?どちらにせよギルド登録をしなければならないだろう?」
どうやら今は教えてもらえないようだ。まぁあの列だし仕方ないか。そういえばあの列の人たちはどこから来たんだろう?やけに大荷物の人もいるしちょっと気にはなったけど、2人を無理に引き止めるのも悪い気がするので聞かないことにする。覚えてたら町で聞いてみようかな。
とりあえず必要な情報だけタンドールさんに聞くことにする。
「わかりました。ギルドはどこに?」
「町の中心部の広場にある。目立つから行けばわかるだろう。」
「ありがとうございます。あ、今日はこれからもっと旅の銃士が来ると思いますよ?」
「うむ、銃士ギルド本部から話は聞いている。眠りから覚めた大規模な銃士の集団を送り込むとな。まさか本当だとは思っていなかったが…さて、役所に増援を頼むか…」
ギルド本部ってそんなに信用ないのかな…?
「それではギルドの方に行きますね。」
「ギルドに着いたら私の名前を出せ。ギルド長に取り次いでくれるだろう。それと次からも門をくぐる時は銃士用のを使ってくれ。銃士の人数が増えるなら常時人を配置するようにする。」
「わかりました。ではまた次の機会に。」
「あぁ、またすぐに会うことになるだろう。よろしく頼む。」
「この町に来てくれてありがとう。それと忘れていたがセルトラクへようこそ。」
タンドールさんのコワモテ仏頂面と、カルメンさんの爽やかな笑顔に見送られ僕は町の中心部へ向かった。
それほど活気のない町の商店街通りを抜け、中心部の広場に着いた。
銃士ギルドは…たぶんあれだろうな。周りの建物より一回り大きいけっこう立派な建物だ。
扉を押し開き中に入る。控えめなベルの音が、たいして人のいないホールに響き渡る。銃士ギルドはその建物の大きさには不釣り合いなほど閑散としていた。
たくさん並ぶ受付窓口だが、開いているのはわずか1つ。女性職員がカウンターの中で事務作業をしている。とりあえず話を聞いてみよう。
「あの、すみません。」
「クエスト依頼は今受け付け中止だよ。今の町に銃士はほとんどいないんだからね。」
書類から目をあげようともせずに言われた。この扱いはさすがに想定外だ…
「えっと…クエスト依頼ではなくてですね…?」
「じゃあなんだい?銃士にでもなってくれるってのかい?」
そこで初めて女性が顔を上げる。いかにもベテラン受け付けさんって感じだ。
「いえ、すでに銃士ではあるんですが…」
「えっ!じゃああんたがまさか…本部の言っていた…」
受け付けさんの顔が驚愕に染まる。
「こりゃ大変だ…ちょっと待ってな!!」
そう言うと受け付けさんは奥の部屋に駆け込んで行った。
そういえばRPG定番の美人受け付け嬢いなかったな…
受け付けさんが消えたすぐ後、奥からいかにもって感じの壮年の男性が現れた。
「待たせたな、旅の銃士殿。セルトラク銃士ギルドのギルド長、ギムルだ。よろしく頼む。」
やっぱりギルド長だったよ。いきなりギルド長と面談かぁ…ってかタンドールさんの名前だすまでもなかったね。
「はじめまして。旅の銃士をしているレクスといいます。ギルド長自らの出迎え、ありがとうございます。」
「いや、こちらにも事情があってな。まぁ、こんなところで立ち話もなんだ。続きは奥で話そう。」
ギムルさんの案内で応接室に通される。
「さて、レクス殿は気づいているか?この町の現状に。」
いきなり本題が始まるようだ。あっ、この話は録画しとこう。後々班長のとこに検証を頼むことになりそうだ。
視界の隅で録画モードを起動しながら僕は答えた。
「レクス殿なんて…レクスでいいですよ。それで何があったんです?トード行きの列車は動いてないようですし、商店街もここも閑散としてますし。」
「ではレクスと呼ばせてもらおう。そうだな、異変が起きたのは2ヶ月前のことだ…」
要約すると、2ヶ月前トードとセルトラクの間の山脈に突如大量のモンスターが出るようになったらしい。最初は列車の本数を減らし護衛の銃士も増やして対応していたようだが、増え続けるモンスターの数にそれも難しくなり、この1ヶ月は運休状態ということだ。町から討伐隊を出したものの、山脈のトンネルに突入した結果大損害を出してしまい、町所属の銃士のほとんどは療養の為休眠中らしい。
セルトラクは付近の開拓村の中継地であり、トードの他に繋がる大きい町は北の大山岳地帯の先になってしまうそうだ。一応線路は通じてるものの、今セルトラクに残されている小型機関車ではとても山を越えられないので、定期的な運行は不可能ということだ。
周辺の8つの開拓村との線路や道は維持されているが、町に残されてる機関車はわずか3両。しかも、大規模修繕はトードの工場でないと出来ないので、壊れたらどうにもならないかなり厳しい状態だ。よりにもよって、トードに修理に出していた2両を急いで持ち帰ろうと、町唯一の大型機関車を送り出した日に不通になってしまったらしい。
今はトードの大規模討伐隊の派遣を待つしかない状況だったが、一昨日、突如として銃士ギルド本部から、休眠中だった大規模銃士集団が目覚めたので派遣するという連絡が来たらしい。それが僕たちプレイヤーってことなんだろうね。責任重大だなぁ、これ…
ちなみに、なんで銃士ギルドからの連絡が届いたのか聞いてみたら、トードの竜騎兵が伝令として飛んできたらしい。竜騎兵なんてβでも見なかったしちょっと見てみたい。
ギルド長からかなり重大な話を聞かされた後、ホールに戻り本来の用事である登録手続きをする。この登録をすることで、ギルドのクエスト掲示板を利用可能になったり、登録バッジを見せるだけで門を通過出来るようになるのだ。
登録手続きは何事もなくあっという間に終わり、ついでにいくつかの簡単なクエストを受注しておく。セルトラクまでの道すがら、目についた薬草は採取していたので、薬草集めクエストは一瞬で終わった。薬草も不足していたようで、思ってた以上の報酬金額になったのは嬉しい。不足している品物はクエスト報酬にボーナスがかかっているみたいだ。実際は、サービス開始記念の報酬倍増キャンペーン的なやつなのかな?
僕が手続きを終えた頃には、ホール内にもちらほらプレイヤーの姿がみえるようになった。ギルドの職員さんたちが慌てて窓口を開けている。
今ギルドに来てる人のほとんどはβテスターだろうと思うけど、知り合いの顔は見当たらなかった。いつ来るかもわからないので、待っていても仕方ない。次にどこに行こうか考えながら、僕は出口に向かった。
扉を開けようとしたとき、ちょうど2人のプレイヤーが入ってきた。
「おや、その顔はレクス君かね?」
「あ、レクスやん。久しぶりやな!」
どうやら先ほどの録画を渡しに行く手間が省けたようだ。
鉄道に詳しくない方だと機関車のイメージがつきにくいかもしれませんね。
わかりやすく言うと、某こども向け喋る機関車アニメの主人公が小型、スピード狂とか綺麗好きなのが大型のサイズ感です。まぁ本作の機関車はあれほどカラフルでもすっきりしたデザインでもないのですが…
次回更新は早ければ日or月曜、最低でも水曜で考えています。
それと本日100位ですが日間ランキングに入っていました。
快挙であります!大戦果であります!
というわけでみなさんありがとうございます。そして今後ともよろしくお願いします。
ブクマ・評価・感想等お待ちしてます!