04.英数字の表記に迷いました、ほか(3~5話)
【第3話「商人」を書いてみました】
【商人の外見描写と口調の特徴づけに取り組んでみました】
第3話中盤で、国をまたがって活躍する国際商人が登場し、路頭に迷うショウを保護します。この商人について、2つの点で苦労しました。
1つは、異種族の外見描写について。
2足歩行するかっこいいキツネのような種族という設定にしていたのですが、「キツネ」という単語を用いたら負けだと思って、使わずに表現しようとしました。結局はできなくて、使うのですが。既存ファンタジーのモンスターを使わないことにしたので、キツネも使うべきではないだろうなどと、錯乱したのが敗因です。「キツネは創作物上の存在ではない」、「誰でも知っている生物なので、比喩に使っても問題ない」と、自分の中で整理をつけるまで時間をかけてしまいました。
もう1つは、口調について。
若手でやり手の商人にしたかったのですが、その喋り方をどうするのかを決めきれませんでした。何度か書き直してみても、しっくりこない。語尾に特徴をつけるようなキャラでもないのでどうしたものかと悩んだのですが、イメージに近いアニメキャラの喋り方に似せる作戦を思い付きました。この商人については思い当たるキャラがいて、それは赤い3倍速のロボットに搭乗して金髪、黒いサングラスをしている方です。似ているかどうかは別として、以後はこのキャラならこういう口調でしゃべるだろうとイメージすることで、書けるようになりました。
【再び、人称と視点に混乱しました】
この第3話についても、人称、視点がぶれて、何度も書き直しをしています。
この回は2つのシーンから構成されており、前半はモールとショウの会話とそれを見ているヒロイン、後半は商人とショウの会話です。
前半は3人称の客観視点で書けていると思います。後半は当初1人称ショウ視点で書いてしまい、3人称ショウ視点に直しました。ずっと同じ人の視点が続くと、いつの間にか1人称で書いてしまうのだと思います。
……などと書きつつ、まだ1人称と3人称特定者視点の違いが整理できていません。次作を書くとしたら、ここをはっきりさせておきたいと思っています。
【第4話「地図」を書いてみました】
【1話あたりの文字数を意識してみました】
まず第4話は、第3話と分けるのかくっつけるのか、分けるとしたらどこにするのかで、迷いました。
事の始まりは「1話あたりの長さは、短いのも長いのも良くない。2000~4000文字ぐらいを目安に」という指針を目にしたことです。そういうものかと従おうとしたのですが、すでに第3話は4000文字を超えており、ショウと商人の対談をどこかで切ろうと検討しました。
切る場面の候補は2つあって、商人が戦争が始まると告げる場面と、モールと護衛が戦闘を始める場面です。書いた時点では後者にしていたのですが、投稿前の見直しで前者にしました。時間をおいて読み直してみて、後者の戦闘は大したものではないので、そのような戦闘を予兆させて話を区切るのは大げさだと思ったからです。
そうした検討をしたものの、実は、第3話は2000文字程度でした。エディタがデフォルトで全角1文字を2文字とカウントする設定になっていることに気づくのは、少し後のことになります。文字コードをShift-JISからUTF-8に変更していて、ファイルサイズが大きめになっていたことも、気づくのに遅れる要因となりました。
その後投稿の区切りは、文字数ではなく、物語の区切りを優先することにしました。PVを意識すると話の分け方は重要なようですが、この作品にとっては雲の上の話です。一読者としても、細かく投稿が分けられている作品は、後から以前の話を振り返るときに探しづらいので困ることが多いです。スキマ時間に読む場合などは短いほうが良いのでしょうが、「FWO」は内容の区切りを優先にしました。
【全体の文字数について】
先の区切りを検討した際に、作品の文字数の相場についても調べました。
文庫本1冊が10万文字強、各社のコンテストの基準もその程度の文字数であることを知ります。これらは実際は原稿用紙枚数で語られているので、エディタ上の文字数とは無視できない差異がありますが、ここではともかく。第3話まで書いた文字数とプロットの進み具合を照らし合わせ、自分が10万文字に迫る「長編」に分類される作品を書こうとしていることに気づきました。
いきなり無謀なことをしている気がしましたが、かといって短くしなければならない理由もなく、短いロードムービー物語は逆に難度が高いようにも思え、そのまま書き続けることにしました。
【英数字の表記に迷いました】
第4話では、IDリングというショウや読者に超技術の存在を伺わせるアイテムが、その高機能を発揮します。ここで「ID」の表記に引っかかりを感じました。
この話までは意識せずに、英数字には半角文字を使用していたのですが、これも何かガイドラインがあるのだろうと調べてみます。……するとどうも、原則は全角文字を使用、数字については漢数字を使うのがしきたりのようです。ほかに縦書きの場合、2桁数字は半角文字を用いるとか。このガイドラインは煩雑で、そこまで本格的に従う気には、なれませんでした。特に「FWO」の場合はSF要素もあるので、漢数字はミスマッチ感が漂います。全角にするか半角にするかについては、全角のほうが見栄え良く感じたので、半角英数はすべて全角に修正しました。
ただそうは言っても、漢数字にするか、アラビア数字にするか、迷うケースは出てきます。「極一部の」は「極1部の」とは書かないでしょう。「四方から」も「4方から」では違和感が。「三叉槍」も「3叉槍」では無い。「一次応援部隊」あたりになると、「1次応援部隊」でも良い気がしてきます。機械的には決められないですし、記者ハンドブックを入手して調べるような気概も無いので、そのときそのとき、雰囲気重視で選択していくことにしました。
【辞書を引きまくりました】
英数字の表記の話題のついでに。
執筆中は、辞書を引きまくっています。ちょっとした言い回しでも、意味を誤認していたり、地元の方言であったりすることがあるためです。語感が良くても、意味がそぐわなくて使用を諦めた語句は多々あります。
時間を取って辞書系サイトを洗い出すこともしたのですが、これは無駄な作業となりました。気になる語や言い回しがあったら、「〇〇 意味」、「〇〇 類語」、「〇〇 対義語」と検索したほうが、いくつものサイトを横断して調べられて、有用な結果を得やすいです。
あと、読みが難しい言葉を使うのは、避けるようにしました。日本語変換に任せれば、難読語を使うのは容易。使いたい誘惑にかられるのですが、そこは我慢です。一読者として、作品内にこうした言葉が出るたびに辞書を引くのが手間なので、自分の作品ではやりたくありませんでした。もっとも「天罰覿面」など、ほかに代えの語が見当たらず、使った言葉もあります。
また、ルビの使用も止めました。いわゆる「厨二病的なふりがな(Deep Furigana)」は大好きなのですが、「FWO」の作風には合わないと判断しました。文字の上に点を打つ「傍点」の使用については迷いましたが、「なろう」ではその表記指定が煩雑なこともあり、「」でくくって語を強調することにしました。
【心理描写の度合いについて考えてみました】
第3話、第4話での登場人物の主要な心理状況は、「ショウの異世界転移に対するショック」と、「商人のショウ、モールと親交を結ぼうとする意欲」です。
ですが前者のショウの心理描写については、最小限に留めました。主要人物が抱えている重要な心の様子ではあるのですが、特に「なろう」作品では、転移に途方に暮れるというのは、ありきたりな心理状態だからです。こんなことをここで書くのは避けたほうが良いのかもしれませんが、私が読者なら超高速で読み飛ばすような、良くある心理描写にしかならないと判断しました。デメリットとしては、ショウの作品内での存在感が薄くなることが挙げられると思います。
後者の商人の心境については、商人が浮浪児を保護しようとするにはそれなりの理由がないと不自然なので、この世界での妖精の位置づけと合わせて、一通り描写しました。
【第5話「戦闘」を書いてみました】
【地味な話が続いてしまいました】
第3話~第5話を書き進めていて、マズいなと思っていたことがあります。プロットを順にこなしていたのですが、話に華がありません。早く旅を共にする宇宙人プレイヤーを登場させないと、異世界に転移して気が沈むショウを中心とした鬱々とした展開が続いてしまいます。
第5話では当初、戦争の様子を、宇宙人プレイヤーたちの集団戦で描く予定でした。しかしそれでは字数を要して、旅の仲間の登場が遠のいてしまいます。そこで、その集団戦の極一部を切り出し、1対1の戦闘がショウたちの前で繰り広げられた、という形に規模を縮小しました。これにより話を短くし、主要人物の登場を早めました。
【地の文が続いてしまいました】
第5話から戦争が始まるのですが、物語上は重要なものではありません。ショウが商人の誘いに同意する事情づくりの一つに過ぎないのです。ですので戦争が生じた理由も、ネットで、ある史実上の戦争の背景を調べてアレンジするという、即席設定で済ませました。
しかし、作中で商人が戦争の背景を語るのですが、記述を簡略化しても画数の多い文字が続き、文字の塊ができ上がってしまいました。戦争は、宇宙人プレイヤーの存在をショウにほのめかすためのイベントでもあるので、割愛することもできず。もっと簡潔に済ませたかったくだりです。
【空行について】
第4話、第5話は説明が多いこともあり、エディタで文面を眺めていても文字がミシッと固まっていて、読む気力が削がれます。
この点について調べてみると、特にスマホによる読書を意識して、段落と段落の間に空行を挟んでいる作品が多いようです。場面転換はさらに複数の空行を重ねることも……
この技法については、読者の端末環境によって長短があるように思いました。PCやタブレット端末だと、空行がなくても読むのに支障がないのに、スクロール操作が増える分、読みづらくなるところがあります。
どちらにするかは悩ましいところですが、「FWO」では、空行を増やすことはしませんでした。その代わりに読点(、)を多めに入れて、読みやすくなるようにしてみました。
【話を書く順序について】
以下はこの体験談を書く段になって、思うことです。
初めて小説を書く場合。出だしはあらすじの列挙に留めて書き進め、数話先からしっかり書くようにし、文を書くのに慣れたら戻って出だしを書くようにするのが良いかもしれません。
書き進めると少なからず文章がうまくなると思います。独自の文体らしきものも、でき上がってきます。しかし以前書いた文章を、後半と同じ調子に書き換えることは、かなり困難な作業になるでしょう。このあたりがレポートなどを書くのとは、かなり勝手が異なるように思いました。
抽象的になりますが、小説を書くその瞬間のリズムのようなものがあって、それにより言葉の選択や区切りが決まる感じ。後の修正では、そのリズムそのものは変えられないのです。直すには、全て書き換えたほうが早い気がします。
読者は普通、始めから読みます。書くのに慣れていない頃の文章より、慣れてからの文章を読んでもらったほうが良いでしょう。話を書く順序は重要な気がしています。