13.最後のエピソードを先に書いてみました、ほか(23~26話)
【年内には投稿しようと、思いを新たにしました】
この作品は、夏に赤道直下へと向かう旅の話です。ショウが暑さに苦しむ場面などがあって、「投稿する頃には季節に合うな」などと思って書いていたのですが、すっかり秋になってしまいました。2ヶ月に渡って読み返しているうちに、やがて、この途中で止まっている作品を見ていると、罪悪感を感じるようになってきました。
それはまるで、生きている登場人物たちを氷の中に閉じ込めているよう。
いつしか、「年内には完結させて投稿しよう」と思いを新たにしました。
しかし、書かないのではなく、書けないので第23話で止まっているのです。同じことを繰り返してもどうにもならないので、第23話を書くのを諦めて、別の手を打つことにしました。
【最後のエピソードを先に書いてみました】
最後のエピソードは、宇宙人プレイヤー姉弟に異変が生じるところから始まります。順番を飛ばしてその場面を書いてみました。すると。拍子抜けするほど、スラスラと筆が進みます。
そして、続く細かなプロットも自然と浮かんできました。ただ、そんなプロットの中に、少し理屈をつけないと不自然になりそうな展開があり。そこに第23話で登場させたくてできないでいた宇宙人を絡めさせる糸口を見つけ、続きを書けそうな気がしてきました。
更にもう少し戻って、大怪獣イベントの導入部も書いてみます。こちらも問題なし。情景が頭に浮かんで、書き進めることができました。
こうして2か月のブランクですっかり失っていた小説を書く感覚を取り戻し、止まっていた第23話を書き進めることにしました。
【第23話「国境」を書いてみました】
【ようやく再始動できました】
第23話は3つのエピソードのツギハギです。第22話の締めくくり、1つ目と3つ目のエピソードのあいだの旅の様子、姉プレイヤーと大物宇宙人との対談、と続きます。話を進めるに連れて、ネックとなっていた大物宇宙人の行動動機の話は第24話にずれ込むことになりましたが、なんとか書ききることができました。
思わぬ難所を乗り越え、「FWO」の終盤を書き進めていきます。
【第24話「戦場に舞う」を書いてみました】
【結局、大物宇宙人の動機は「気まぐれ」になりました】
第24話は、プレイヤー姉弟が大物宇宙人について話し合いをするところから始まります。このくだりで弟が、大物宇宙人が会いに来た理由を推測します。その正解は最終エピソードで明かす予定だったのですが、この最終エピソードが想定以上に長くなり、かつ、複数の場面に次々移り変わる話でもあるため、この第24話の伏線を回収する余裕がなくなってしまいました。結局、最終的にはこの第24話に地の一文を付け足し、大物宇宙人の行動動機は「気まぐれ」だったで終わらせることになります。何も付け足さずにおこうかとも思いましたが、それだと大物宇宙人が最終エピソードの黒幕のように見えかねないので足すことにしました。
最初からこの扱いにするのであれば、第23話はすんなり書けた気がします。苦しんだのだから、きちんと伏線回収をすれば良かったとも思います。このように反省はありますが、スランプを迎えて克服できたのは貴重な経験となりました。
【語り手を代えて、話の印象を変えてみました】
第24話中盤で、怪獣の正体は猛獣のサイボーグであることが読者に明かされます。このままだと怪獣が重い存在になりかねないので、当の怪獣たちに改造された気持ちを語らせることにしました。
当初は改造された当人たちに「気分は良くないが、嫁は喜んでいる」と語らせたのですが、まだ重い。そこで逆に嫁たち側に「主人は文句を言っていますが、報酬をもらえるから大歓迎です」と語らせました。こうすることで雰囲気はコミカルになり、旦那衆の悲哀も表現できて、ずっと良くなったと思っています。
誰の視点で語らせるかで、ある出来事の印象がとても変わることを実感できたエピソードです。
【陸の大怪獣戦は、何度書いてもこうなるでしょう】
第24話の中盤から第25話にかけて、陸の大怪獣との戦いが繰り広げられます。これまでと同様にこの戦いも、決まっているのは「結果が引き分けになる」ということだけです。
それでも書き始めると、ショウは不参加を決め込むだろう、弟は姉に突撃を命じられるだろう、姉はひたすら魔法を撃ち込むだろうと、展開が「予想」できてしまいます。そして第24話の最後に姉が舞って、第25話にショウが参戦するという流れも、自然に出来上がりました。
何度、一から書いても、この戦闘はこうなる気がします。それは、この戦いについては意表を突くような仕掛けを用意するつもりがないこともその理由でしょう。ですが、何より。主要人物たちが私の中では生きていて、皆にらしく振る舞うようにさせているから同じになるのだと思っています。
【大怪獣イベントのルールを、どこに書くかで迷いました】
大怪獣戦は制限時間到達により、終了となります。ここで制限時間の存在をどこに書くかで迷いました。作中では戦いの後に書いたのですが、読者は後出しされた感じを持つような気がしています。戦いの前に書きたかったのですが、導入部分はそれほど長いものではありません。そこに書くとそれはそれで、あからさまな仕込みに見えるように思いました。
今振り返ると、ほかのチームが制限時間より遥か前に退場していく様子をいくつか重ねておけば、制限時間の存在を明示しつつも埋もれさせることができたように思います。
【第25話「めろめろ」を書いてみました】
【女性科学者2人の台詞書き分けに苦労しました】
第25話後半から、2人の宇宙人科学者が登場します。ショウが、転移の謎を解き明かす手がかりを得られるかもしれないと、会おうとしている科学者です。この2人については、口調とその書き分けに苦労しました。全登場人物の中で、もっとも多く、そのセリフを試行錯誤したと思います。
最初この科学者は、老人男性2人にしていました。ところがどうしても冷酷な性格のようになってしまいます。そこで雰囲気を和らげられるよう、お姉さん系2人に変更しました。この科学者たちは、テンプレの、よくある研究第一主義の学者にしたいだけ。ヘイトを集める役割は不要、むしろ再度登場する最終エピソードの雰囲気が冷たくなるので、冷酷に見えてしまうのは避けたいところでした。
女性2人にしたものの、まだ研究一本槍のキャラにはなりません。「よ」「わ」「ね」を付けると女性らしくはなるものの、研究者らしさが薄れてしまいます。この2人のイメージに近いアニメキャラを参考にしようと動画サイトを検索したのですが、その登場シーンを見つけることはできませんでした。一時は語尾に「ザマス」を付けて山の手言葉にするほど、迷走しました。
そうこうして、ただの研究一筋の、でも冷酷ではないセリフ回しにしてみたものの。次は女性2人の書き分けに苦しみました。どちらも同じような喋り方になってしまいます。この科学者、別に1人でも良いのですが、2人にすれば会話でものごとを説明できるので2人にしておきたいところです。また最終エピソードの演出の都合上、2人に上下関係は作りたくありませんでした。
最終的には1人はお姉さん系、もう1人は子どもがいて少し母性が表出している、という設定で書き分けました。いろいろな作品で、似たような人物が登場しない理由が、分かった気がするエピソードです。
【第26話「在りし日々」を書いてみました】
【訛り言葉も、共通言語を設定した理由の一つです】
第26話後半、お爺さんが訛り言葉を喋って、ショウやプレイヤー弟がなんとなく言いたいことは分かる、という場面があります。これ、この惑星に様々な言語があるという設定にしていると、自動翻訳されるはずなので意味が分かるはず、となってしまいます。
執筆編06回で、「宇宙人、原生人ともに銀河連邦標準語を話している」と設定した理由を述べましたが。このエピソードを残したかったのも、そうした設定にした理由の一つです。
【表現力が欲しくなった回でした】
第26話は、なんでもない日常的なエピソードをいくつも連ね、最後のエピソードを際立てさせることを意図した回になります。
どのエピソードも物語中で実際に起こっていることなのですが、最後以外は夢の中の出来事のような幻想的な雰囲気に書いて、最後だけ今現在の出来事であるように書こうと試みました。しかし、時制を違えて書き分けるなど試行錯誤してみましたが、私の技量では到底かないませんでした。
私自身はそういった演出を妄想しているので、この第26話を読み返しているとウルっとくるのですが、読者にそんな雰囲気をどこまで届けられているものなのか。
自分の技量不足が歯がゆく感じる回になりました。




