12.第22話「レベリング」を書いてみました、が
【第22話「レベリング」を書いてみました】
【筆が鈍り始めました】
ヤワヤワな設定を元に書き始めたのが6月中旬。第1話から第21話までは、波はありましたが、1週間に2話以上のペースで初稿を書き上げていました。ところが8月に入ってのこの第22話で、筆が鈍り始めます。
その原因は自覚していました。第20話、第21話は登場人物が増えて賑やかな話で書いていても楽しかったのですが、第22話は元の人数に戻り反動が出てしまったのです。よくアニメやドラマの最終回後に「〇〇ロス」という言葉が流行りますが、なんと自分の書いている話に喪失感を感じて、書けなくなってしまったのです。
【登場人物たちの行動をシミュレートしました】
メインプロット上は、陸の大怪獣戦まで空白になっていました。小ネタも、山間地帯に入って猛獣たちが強くなる、という程度しかありません。長距離を動物に乗って移動しているという旅情感を出したくて、すぐには大怪獣戦に話を移したくありませんでした。
しかしどうにも話が思い浮かびません。期間を置くことにしました。そのうちなんとかなるだろう、無理せずに行こうという姿勢だったこともあるのですが、2週間過ぎて夏休みも生かせず。
時間を置いてみても状況は変わりません。ここで話を創ろうとするのを止めました。かわりに「登場人物たちは、置かれている状況なら何をするか」を想像するようにしました。彼らの行動をクリエイトするのではなく、シミュレートすることにしたのです。
この際、キーとなったのは宇宙人プレイヤーの弟です。その姉のほうは「FWO」というゲームを積極的に楽しんでいるので、狩りも積極的に行ってレベル上げをすることが「予想」できました。ショウはプレイヤー姉弟についていくだけなので、予想は容易いです。問題なのは弟。彼もショウほどではないにしても狩りには消極的なのですが、ここで話が転がるように、彼が狩りにもう少し前向きになるよう一押しすることにしました。具体的には、この後に控える大怪獣戦を、単純な遭遇戦ではなく、プレイヤー間で競い合うイベント戦である、という設定に変えました。
こうして、姉弟は大イベントに向けてレベリングをしようとする、山間地帯の強い猛獣を前にしてショウも積極的に利用しようとする、その影響でついにショウは初めて猛獣を殺す、というプロットを起こすことができました。
戦いに新鮮味を出すために姉弟にもパワーアップギミックを追加し、第22話が書き上がった頃には9月が目前になっていました。4000文字強の執筆に一ヶ月近くかかったことになります。
【ショウに猛獣を殺させました】
第22話後半でショウが初めて猛獣を殺すのですが、ここまで時期がずれ込んだのは意図したものではなく、私が殺させることができなかったからです。物語上は猛獣たちは住民に被害を及ぼしている存在であり、駆逐することに大義名分を持たせてあるのですが、残虐な気が拭えませんでした。宇宙人プレイヤーたちには猛獣を殺させていましたが、こちらも書いてはいるものの躊躇いはありました。
この作品は基本ほのぼの系なので何とかなりましたが、自分が嫌なシーンでも書けるようにならないと、作品の幅に限界が生じるだろうなと思います。
【R15に変更しました】
ショウが猛獣を殺す際、新たな魔法が強力であるため、頭部が破裂するという残忍な殺し方になっています。これについてはギリギリ投稿直前の読み返しで、R15に該当する可能性があることに思い当たりました。年齢制限については、性的な表現しか意識していなかったので、それまではまったく気にしていなかったのです。
表現をR15に抵触しないように書き換えようとすると、新魔法の凶悪さがどうにも表現できません。後半、ほかにも2場面ほど抵触しそうな場面があり、どちらもショウの感情の爆発に直結していたので、書き直しは諦めてR15に変更しました。
途中で作品のレーティングを上げるのは反則だと思います。注意不足でした。
【そして筆が止まりました】
つづく第23話は更に苦戦しました。大怪獣戦に入る前にもう1話入れたかったのですが、これが難産でした。大怪獣戦のあとは一気に最終エピソードに入るプロットなのですが、その前に、ある大物宇宙人をプレイヤー姉と会わせたくなったのです。この大物宇宙人は、プレイヤー姉が高収入を得られる理由に直結している存在です。ここまで彼女の香水が高収入の源泉であることは説明済みなのですが、超科学文明であってもそれを複製できない理由については説明できていませんでした。この点を読者が不思議に思うかどうかは分かりませんが、気づかれた方にご都合主義な設定だなと思われるのは避けたく感じました。
このように大した理由では無かったのですが、この大物宇宙人を登場させようとして、そのエピソードをなかなか作ることができませんでした。動機そのものを用意する必要があったので、第22話のときのように登場人物たちの行動をシミュレートして話を作る、という手法も使えません。
【奇策を用いるのは思い留まりました】
あまりに書けないので、プロットを捨てて予想外の展開に持ち込もうとしたことも。以下は知人からの受け売りなのですが。
予想外の展開にするためには、まず読者に「予想」をしてもらう必要があります。例えば、「3……、2……、」と続ければ、普通は次に「1」が来ると予想します。そこで「A」とか「猫」とかを出せば予想外の展開になる、といった次第。
第22話まで、ショウ一行は目的地に向かって旅をしていたので、読者は目的地に到着して何か起こるのだろうと予想しているはずです。ここで目的地を変えるとか、目的地に向かうという目標を変えてしまえば、予想外の展開になるのですが……
幸い、そんなことをしても続きを書けるような気はせず。それはただの自暴自棄だと、思い留まりました。
【読み返して満足する日々が続きました】
これはここまでの執筆過程でも生じていたことなのですが。推敲するために一旦書いた文章を読み返すと、それで満足してしまうようになり始めました。第23話で詰まった頃は、特に顕著になります。
推敲には、執筆編03回で取り上げた「入力文字読み上げソフト」で読み上げさせて、引っ掛かりを感じたら修正するというやり方を取っていました。それでこの読み上げを聞いていると、自分の作品がとても面白く感じてしまうのです。なに自画自賛しているのだという話ですし、読者のみなさんが読んでそうなるとは思いません。ですが、何しろ自分の書いた文章なので、書かれている内容以上の情報が汲み取れるし、書かれていない内容も補完できてしまいます。アニメを見ているかのように、物語が脳内に展開されてしまうのです。そうして第22話まで見直し終わると、「続きを読みたいけど、自分が書かないと続きを読めない。でも筆が進まない」とジレンマに陥りつつも、また最初から読み上げを繰り返していました。
すでに書き上げた文章の量は、3時間分に達しており。
飽きもせずに自分の作品を読み返して、自己満足に浸る日々を続けることになります。それが2か月近く。
9月どころか10月を通り越して、11月になりました。




