第4話 パーティーメンバー
読んでいただき感謝しかありません!!!
ようやくパーティメンバー集合。
※2話、3話の話を少し手直ししました。また、努を召喚したこの国の名前も3話に足しました。国名は『ガレリオン共和国』です。
(男ばっかりじゃねええええかあああああ!!!)
心の中でそう叫ぶ努。それもそうだ、彼が思い描いていた勇者パーティとは程遠い。花というものがまったくないないのだから。
しかし実際のところ男ばかりになるのは仕方のないことだ。
この国では女性の数が男よりも少ない。割合にして6:4といったところだろう。もちろん女性の武人もいなくはないが、数の少ない女性をわざわざ死地に送るようなこともないのだ。
男たちは努と対面して並んで座っていた。
左から、騎士の男、剣士の男、聖職者の男、盗賊の男と、見事に男ばかりのむさ苦しいパーティである。
その中でも一際目立っているやつがいる。――まあ、努からしたらであるが――
(なんで聖女じゃないんだよ!!)
努が1番一言言いたいのは聖職者であろう黒い肌をした男のことだ。鋭い目つきに、左にいる騎士の男に勝るとも劣らない筋肉、さらにはスキンヘッド。どう見ても聖職者という風貌ではない。むしろ聖職者の格好をしただけの殺人鬼か何かではないだろうか。
もしかしたら信仰しているのは悪神なのではないか。そう努に想像させる雰囲気であった。
「何をジロジロと見ているのですか?」
努が不躾な視線を送っていると、聖職者の男は自分が見られていることに気づいたようだ。怪訝そうな顔で努に言う。
「ああ、いや。ええと…」
気まずくなった努は何か質問することはないか探す。
すると男の手の方に目が行った。
「ええっと、それはメリケンサックですか?」
そう、男が手にはめているのは元の世界で言うメリケンサックだった。
「これですか?これは『拳鍔』という私の武器です。私の修派ではこれと杖しか武器の使用を認めていないのです。」
「へぇー、そうなんですか。」
「ええ。」
努が詳しくないだけで、メリケンサックは拳鍔とも呼ばれていた。彼は言わばモンクと呼ばれる、近接戦を得意とする聖職者であった。しかしそれにしてもメリケンサックを手にはめている彼はまさにアメリカのスラム街にいるチンピラのようである。
努は何とか話題をそらせたようで、安堵した。
「んじゃあ、自己紹介と行きますか!!」
ギルが気を取り直してと内心で付け加え、元気良く言った。
「では、まずはわしからだな。」
努から見て一番左に座っている騎士の男が言う。
「わしはマクシム・ムーアクロフトという!この国の騎士団の第二大隊の隊長をやっておる!!もっとも今回の旅に参加する際に役目は副隊長のやつに譲ってきたがな!!」
マクシムはガハハと笑いながらそう語る。見た目は30後半といったところだろう。ベテランの雰囲気が漂っている。
「マクシムのおっさんはベテランの騎士だ。そんでもって昔戦争で勲を立てて騎士に昇格した実力派なんだぜ。」
ギルが努に捕捉する。マクシムはどうやら所謂叩き上げの騎士らしい。武人の多いこの国で、実力だけで騎士団の隊長職まで登り詰めたということは半端な努力では成し得ない。
「よろしくお願いします。俺は戦闘経験もないので、頼りにさせて貰いますね。」
「おう!任せておくがいい!!」
マクシムはガハハと大きく笑う。豪快に笑うマクシムの武器はバトルハンマーらしい。騎士といっても武器が剣である必要はないらしい。
彼の剛腕で振るわれたハンマーは、敵にとってかなりの脅威となるだろう。
「………カイだ。」
着物を着た男、カイはぼそりと言う。先程から口数が少ない、寡黙な男だ。年は20代前半だろう。隣のマクシムとは対称的であるが、努は必要以上のことを話さない、このような性格もまた好ましく感じる。
「あー、カイは元々傭兵でな。3年前に陛下が目をつけてスカウトした凄腕の剣士だ。出身は明かしてない…が、信用できる。それに数々の戦争をくぐり抜けてきたらしいんだけどな、傷1つつかずに多くの敵を倒してきたことから『戦場の幽鬼』と呼ばれているらしいぜ。」
ギルがカイについての捕捉説明をする。カイはほとんど喋らないので、ギルがほとんど説明することになる。
「へぇー。」
努はカイが腰につけている武器が気になった。それは、この国に来てからよく見かけるロングソードではない。
そう、日本人ならだれもが知る刀であった。
「それは…、もしかして刀ですか?」
「……そうだ。」
「やっぱり、この世界にもあったんですね!俺の国にも昔からその武器が作られているんです‼これはカイさんの故郷で作られているんですか‼」
「……そうだ。」
やはり日本人の男子としては、刀を見るだけで興奮してしまうのだろう。興奮した様子でカイに話をする努に対して、カイは変わった様子はなく、静かに返事をする。
「もっとも、最近では美術品としての価値が高くて、実際に扱える人は少ないですけどね。」
「……」
「あー、興奮するのはいいがあまり詮索はしてやるなよ?んじゃ、次行こうか。」
このままでは埒が明かないと思ったギルが、話を切る。出身のことをあまり話したがらないカイにもこれ以上はプラスにならないだろうと考えたことも理由の一つだ。
「ああ、悪い。まさかこっちで本物の刀を見れるとは思わなかったからな…」
我に帰った努は一言詫びた。やはり刀の魅力には抗えなかったようだ。
「次は私ですか。私はグレゴリー・ヴェルナーと申します。年は今年26歳になります。創造神ヴェリタス様に仕える神官です。修行のために旅に出ることが多いので、旅には慣れています。」
次に自己紹介をし始めた男はグレゴリーというらしい。努は年齢が26歳であることに驚きを隠せない。何よりも見た目がどこかで見たことがあるボクサーに似ている。
努はグレゴリーのことを、心の中でボブと呼ぶことにした。
「グレゴリーさんのような修行をして素手で戦える神官をモンクっていうらしい。このモンクってやつは神官が使える『聖気』を身にまとわせて戦うらしいぜ。あとは傷の回復もこの人がやってくれる、重要な役割ってワケだな。」
「まだまだ修行中の身です。私が纏える聖気など教皇様に比べれば児戯に等しいものです。」
実際のところ勇者パーティーに抜擢される実力だ。教皇に比べてそこまで劣る訳ではないだろう。
特にモンクになるためには生半可な努力ではなれないのだ。つらい修行の末に身に付けることができる聖気に加え、体術や棒術、などの技術も同時に身に付けなければならない。
「じゃあ、最後はオイラだね。オイラはサンポって言うんだ!年は17歳、盗賊やってます!ナイフは6つの頃から親父に仕込まれたから結構自身あるんだよ。あ、悪い意味じゃないからね?職業上の盗賊って分かる?」
「ああ、確か斥候の役割とか色々とパーティー全体の補佐ができる万能タイプって感じか?」
「大体合ってるよー!まあ、器用貧乏なんて言われるけどねー。」
「何言ってんだか…。正面からの戦いじゃなきゃお前と殺り合いたいやつなんざいないだろ。」
「うむ、仲間であれば心強いがこれが敵であったらと思うとあまり相手にしたくないな。」
謙遜するサンポに対して呆れながらギルとマクシムが言う。彼の特徴は何と言っても速さだ。戦闘中その速さを生かして相手を撹乱する。
さらに様々な道具を使い、状況に応じて多種多様な戦い方ができる。もうすでに彼を一般的な盗賊の枠にはめていいのか分からない。
「そんなことないってー。少なくともここにいるメンツ相手に奇襲かけたって成功させられる気はしないよ?」
前の国では結構自信あったんだけどなー、などというサンポに対してどう答えていいか分からない努であった。
「ああ、サンポは冒険者なんだ。もともとは国と国を回ってたみたいだが少し前からうちの国に直接仕えることになったんだ。」
サンポの情報にギルが補足を入れる。
「よし、最後に改めて俺の紹介もしとくか。」
「ん?ギルの自己紹介もするのか?」
ギルについては昨日の段階で結構聞いている。今さらではないかと努は思った。
「この流れで俺だけ言わないのも違うだろ?ってか言わせろ。」
ギルはただ仲間外れが嫌なだけだったようだ。ちなみにギルは他のメンバーとも顔合わせを済ませているし、マクシムやカイとは共に何度か戦闘で一緒になっている。
「それに昨日言ってないこともあるしな!」
「そうかー、じゃあどうぞー。」
「何か軽く流された気がするが…、まあいいか。俺は、ギルバート・サンダース、魔術師団副団長だ。」
努はいい加減にギルの性格に慣れて、あしらい方を覚えてきたようだ。軽く流されたギルは不満げに口を尖らせたが、深く考えないことにして自己紹介を始めた。さっそく知っている情報に努はすかさずからかう。
「それは知ってる。」
「茶々入れんなよ…、続けんぞ。基本的に魔術は全般扱える。基本4属性と、光属性と闇属性だな。あとは支援系魔術も俺が使えるがあまり得意じゃない。」
これは、魔術のことを有る程度知っている者であれば驚くべきことだ。現にギルとまだあまり深く関わっていなかったグレゴリーとサンポの2人は驚きを隠せない様子だ。
グレゴリーは確かめるように、
「なるほど…、噂の副団長様の実力は本当だったようですね。」と呟いた。
それに対してサンポは
「へぇー、それはすごいや!!」と大きな声で少し大げさに驚いていた。
ギルは得意げに胸をそらしているが、努の反応は薄い。努は魔術に関してまだ知識がないのだ。よってギルの凄さが良く理解できていない。
というかお前自慢したいだけだろ!とも言いたい努だがここで水を注すほどやぼではない。
「あー、ギル?俺はまだ魔術とかそこのところ詳しく説明されてないんだが…」
「そういえばそうか、それじゃあしょうがないか。魔術に関しては後で訓練をするときに教えるさ。」
「ああ、頼むな。」
やはり魔術という物がこの世界にはあるらしい。努は、憧れていた魔術が使えるのかと心をときめかせている。
「よっしゃ、これで俺らは全員終ったな。最後にツトム!お前で締めてくれ。」
「了解。じゃあ自己紹介をします!」
室内全員の注目が努に集まる。少人数だが、ここまで注目されると少し緊張してしまうが、それを表に出さないように注意する。
「俺の名前は、岩垣努です。努が名前で、岩垣が苗字になります。趣味は体を鍛えることで、体力と力には結構自信があります。まあ元の世界の基準だから、こちらの世界でどの程度通用するのかは分かりませんけどね。」
努は元々かなり鍛えていた。ただ筋トレをするだけでなく、格闘技なども齧っており、実践的な筋肉というものを意識して鍛えていたため、運動能力も非常に高い。
また、あのレオナルド王からもお墨付きを貰っていたのだ。それは、この世界でも通用するものであるという証拠になる。
「実戦経験もありませんので、最初は迷惑ばかりかけることになると思います。それに…、多分戦争ってことは相手を殺すこともあると思います。でもまだその覚悟はできていません。」
この世界に努が呼ばれたのは、魔王に勝つための戦力としてだ。もちろんそれは殺るか殺られるかの殺し合いだろう。そのため、努には殺す覚悟が必要不可欠なのだ。
「それでも俺はこの世界を救いたい。今はまだ頼りないと思う…、でもそんな俺を手助けして欲しい。」
努は敬語を使うことも忘れて話す。静かに話す努に、パーティメンバーたちも固唾を呑んで聞く。
「俺が絶対に世界を救ってみせる。だから頼む!俺に力を…、力を貸してくれ!!」
頼りない、そう考える人もいるかもしれない言葉だった。しかし、努の放った言葉は不思議と力があった。少なくとも、この場にいる者たちの心には響いたらしい。
「最後まで付き合うぜ、勇者様!」
はにかみながら言うギルバート。
「がははは!!よく言った!!わしも力を貸すぞ!!」
豪快に笑いながら了承するマクシム。
「……ああ。」
口数は少ないが、しっかりと意志のこもった目で見つめながら言うカイ。
「頼りないですが、まあいいでしょう。及ばずながら私も尽力します。」
仕方ないといった様子のグレゴリー。
「にしし、いいよ。オイラがツトムを守ってやるよ!」
楽しそうに宣言するサンポ。
全員が努を認めた瞬間であった。
努は思わず涙が出そうになったが、必死に堪えた。
「…ありがとう、みんな。一緒に頑張ろうぜ!」
最後にそう努が言い、最初の勇者パーティ全員の顔合わせは終った。
ギル君が説明キャラになってる…。
あと、努は最後まで「魔王を倒す」とは言ってないのは、彼にもまだ思う所があるみたいですね。
書いた後に「あれ、このパーティー後衛ギル君だけじゃね?」と思いましたが、大丈夫。我らのギル君はバッファーまでこなせるし、色々と説明もしてくれる有能キャラですので!
仲間はあとから少し増やす予定です。
努のキャラが未だ迷子ですが、書いていくうちに定まっていくと思うのでご理解ください(´・ω・`)