第14話 襲撃
読んでいただきありがとうございます。ブクマも感謝です!!
今回三人称視点です。
※話が長くなったので二つに分けています。12時頃に次話が投稿される予定です。
努たち勇者パーティが魔物討伐のために王都から出発してから数時間程度が経った。少し前に四の鐘が鳴ったので、午後3時過ぎといったところだろう。
急を要することなので村の者たちが心配だと言い、一行は馬に強化をかけて急いで向かっていった。通常の馬車の速さでは1日程度はかかる道だが、それによって半日ほどに短縮できる。
もう目的地に着いていてもおかしくないだろう。
城の鍛錬場ではタロウとバリーの2人が手合わせをしていた。タロウは愛用している棒を使い、バリーは使い込まれた片手持ちの剣を使っている。そちらは刃引きもしていないものだが、どちらも気にした様子はない。
周囲では、休憩中らしく、兵士たちが体を休ませながら2人の試合を見学しているようだった。
「そろそろ目的の村についた頃だろうか…ふんっ!」
「ほっ!そうやなぁ。もう着いててもおかしないなぁ。」
両者は最小の動きで攻撃を避けては攻撃を重ねる。
玄人同士の派手ではないが極めてレベルの高い試合に、周囲で鍛錬をしていた兵士たちも思わず息を呑む。
「中級上位の大蛇が相手だ。流石に手こずるのではないか。」
「ま、問題あらへんやろ。あいつの戦いの技術はまだまだ荒削りやけど強化を使わせたらバケモンやな。もう本気を出されたら俺じゃどうにもならん。」
タロウは努の相手を何度もしており、最近では互いに強化を使いながら組手をすることが多くなった。それゆえ努の強化の恐ろしさは知っている。
それに努が強化を使い角熊の胴体に大穴を開けたことも記憶に染み付いている。
「それに他のやつらもおるし、問題なく対処できるやろ。」
「そうか、こちらでの鍛練中にも無意識に微弱な強化を発動させているようだ。確かに最近は良い反応をするようにな…った!!」
「うおっ!危ない危ない…。ふう、片腕の爺の癖にまだええ動きするやんけ。」
2人は1度手を止めて話を続ける。タロウは隻腕でなおかつ大分年をとってきたはずのバリーの動きに感心する。
「これになってから暫くは駄目だったがな。今はもう慣れた。それにまだまだ体は動く。」
バリーは片腕を無くして暫くはバランスが取りづらくまともに戦闘など出来なかった。
しかしそれからの弛まぬ努力で片腕でも戦闘出来るようになった。今でも大抵の相手には勝つことが出来るだろう。
「そら良かったな。せっかくのライバルや。動けなくなってもつまらへんもんな。」
「ああ。それにしてもツトム殿が2ヶ月足らずでまさかあれほど成長するとはな。なるほど、昔の人間たちが世界の命運を任せる訳だ。」
努はこの2ヶ月間でかなり強くなった。バリーとの鍛練中には努が無意識に微弱な強化を発動させているが、それでもすでに人の範疇ではない動きをしている。
素の動きがすでに一般の騎士が強化を使っているものと同程度であった。
あれを初めて見た者は化け物かと思うだろう。
「下地もあったことやし、筋も良かった。やはり召喚の魔法陣っちゅうのは人を選んどるんかな。」
「さてな。だがツトム殿が勇者として召喚に応じてくれたのは幸運だ。彼が居なければ我々の国も近いうちに魔王に面白半分に滅亡させられていたことだろう。」
「…せやな。悔しいけどそれは事実やな。」
今までに魔王に滅ぼされた街、村は1桁では収まらない。小国もすでに幾つか落とされている。それにその全てが遊び半分のように壊された。その国の人間たちはそのほとんどが残酷に殺され魔物の餌となるか、家畜のように扱われているという。
小国が多いとはいえ、中には国の英雄と謳われる猛者も存在していた。しかし結果は残酷なもので、それらの者たちは1人残らず殺され死体を晒された。
全ては人間たちを絶望させ、その反応を見て楽しむためだ。
「だがツトム殿について行かぬとはいえ私たちもじっとしている訳にはいかん。もっと修練せねば。」
「引退したはずやのにまだまだやる気やなぁ。」
「ああ、なぜだが最近は調子がいい。体が若返っているように感じる。」
そう、努が召喚されてから2ヶ月、肉体の衰えを感じていたのだが近頃は衰えが収まり、むしろ若い頃に戻っているように体が動くようになった。
「ほー、そりゃ結構やな。せやったらもういっぺん……いや、ちょい待ち。」
そういってタロウは片手をバリーの前に出して鍛錬場の外を見つめ出した。その目は先ほどの試合より真剣である。
「…何かあったのか。」
「なんか外が騒がしい。こりゃ喧嘩の類やなさそうや。」
そう言いながらタロウの耳はピクピク動いている、外の音を聞いているのだろうか。
バリーも外に意識を向けてみるが何も聞こえない。やはり獣人は人族よりも耳が優れているのだろう。
だがその数秒後、「ドカァァァァン!!!!」という爆発音が少し聞こえた。建物が崩れるような音で、バリーにも聞き取ることができるほどの大きな音だった。
「アカン、ちょっとやばそうやな。ちょい見てくるわ!」
「私もついて行こう!」
何かしら不穏な空気を感じ取ったタロウは騒ぎの場所に駆け出そうとし、バリーもそれに追従する。
しかしその時タロウたちの後ろから大きな破壊音が鳴った。
「なんだ!!」「一体何が起こった!!」「ぎゃあああ!!」
何事かとその場にいた者達がそちらを見ると、フードを被った何者かに壁が破壊されたようだった。
その近くにいた者たちは休憩中で気を抜いていたため、飛んできた破片などをまともに食らったようで、血を流しながら呻いている者やピクリとも動かない者がいた。
「貴様は…何者だ。」
バリーとタロウはいきなり現れた侵入者へ武器を向け、タロウは強化を発動する。
すると侵入者はシシシと息が洩れるような笑い声をあげ、口を開く。
「俺かぁ?俺はなあこういうモンだ!」
男が被っていたフードを外すと、男の顔がはっきりと見えた。爬虫類のような顔つきに細長い舌。腰から伸びる尻尾、病的なまでに白い肌。そこまでならまだ獣人の一種かもしれないが、なによりもフードを外した瞬間から伝わるのは圧倒的な魔力。
「貴様、魔族か…」
「そうだ!俺様はジャブダル!魔王様のご命令で勇者らしき人間を殺しに来た!!ついでに人間の都でひと暴れせよとのことでなぁ、シシシ!勇者君には少し俺様が遊ぶために遠くに行ってもらったのよ!」
そういうと魔族の男、ジャブダルは外装を脱ぎその白い肌を晒した。肌には鱗が付いている。
「ってことはなんや!!あの大蛇はお前が連れてきたっっちゅうことか!」
「まあそういうことだ。シシシ、それにありゃただのタイラントサーペントじゃねぇんだぜぇ。魔王様の近くで生息している魔物は通常種と比べてかなり強くなるんだ。魔人にはなれなかったがあれはお前らの基準で言えば上級中位ってところか?」
魔王のような膨大な魔力を持つものはその魔力を常に放出している。そして魔王の強力な魔力はその周囲の魔物を強化し、変化させた。素質のあった魔物は魔人となり、他は魔人にはなれずともその力を1〜2段階も引き上げた。
今回ジャブダルが連れてきた魔物は、元々ただの大蛇であった。だが魔王の魔力を浴びたため大幅に力を増した。
「バカな…」
「上級中位やて!!そんなん滅多に現れない魔物のレベルやぞ。そんなもんをほいほい連れて来たっちゅうのか!」
「シシシ!今となりゃそんなに珍しいもんでもないなぁ。どうした、絶望したか?んん?」
2人の驚きの隠せない様子にジャブダルはシシシ、シシシと楽しそうに笑う。
「良いねぇ、その表情!ここまで来た甲斐があったってもんだ!!シシシ、魔王様に感謝しなくちゃなぁ!さて、おしゃべりはおしまいだ。楽しもうぜぇ!!」
そういうと共にジャブダルは恐ろしいほどのスピードでバリーの方へと接近した。周りにいた兵士たちには予備動作すら見えずただ消えたように見えた。
「バリー!!」
タロウがバリーの方を見て叫ぶがその時にはジャブダルの鋭い爪の一撃がバリーの心臓へと振るわれる。
しかしどうにか反応したバリーは持っていた愛剣で攻撃を防ぐ。
「ぬぅっ!ぐっ!」
一瞬の押し合いの後、バリーは後方へと吹き飛ばされた。ボールのように吹き飛んだバリーが壁に叩きつけられると、轟音と共に壁が崩れて砂埃が舞った。
「なにさらすんじゃボケェ!!」
バリーが吹き飛ばされるのを見るや否やタロウはすぐそこまで来たジャブダルに対して力強く踏み込み持っていた愛用の棒で渾身の突きを繰り出す。
その一撃はジャブダルが体をずらしたことで難なく避けられる。
しかしそれは分かっていたようで、突き出した先の方の手を逆手に持ち替え、今度は横に振るう。
避けられることもなく、振るった棒は胴に叩き込まれた。渾身の一撃は普通の敵であれば肋骨は折れ、まともに立つ事もできないだろう。
「ああん?ぬるい攻撃だなぁ、おい!!」
胴に叩き込んだはずだが、まったく効いた様子はない。瞬時に棒を引き戻そうとするが、棒はジャブダルの脇で挟められまったく抜けなくなった。ねじり取ろうにも棒はピクリともしない。
「ちぃ!!」
武器を一旦諦め、手を離して後ろに下がろうとする。しかしそれよりも早くジャブダルが尻尾を鞭のように振るい、タロウは横に吹き飛ばされた。
「シッシッシ!!弱えなあ、おい!」
ジャブダルは尻尾を地面に叩きつけながらそう言った。
「反応も速度も遅え。力も弱え。張り合いが無さ過ぎるぜ!!おい、次は誰か来ねえのか?」
そう叫ばれるが周りの兵士は剣を構えながらも呆然としている。今ちょうど国でもトップクラスの実力の2人が呆気なくやられたのだ。放心もするだろう。
「来ねえのかぁ?シシシ、腰抜けどもめ。それなら軽く殺してやるよ!!」
そういうと共にジャブダルの視線の先にいた3人の兵士たちの首が刎ねられる。あまりの速さに他の兵士も対処出来なかった。当人達も死んだことにも気づかなかっただろう。
「まずは3人!…いいや、この殺し方は駄目だな。悲鳴も何も聞けやしねえ。もっといたぶらなきゃなぁ!!」
「ふざけんじゃねえぞ蛇野郎!!」「舐めるなよ!!」「カールの仇だ!!」
この国の兵士は臆病ではない。むしろ勇敢で練度も高い。ゆえにガレリオン共和国は最強だったのだ。
それを証明するかのように兵士達は気を持ち直し、次々にジャブダルへとむかう。
ある者は剣で。ある者はハンマーで。可能な者は強化を発動させながら。彼らの人生でも1番であろう渾身の一撃が次々と繰り出される。
「シシシ!そうだ、そうでなくちゃあ殺しががねえ!!もっと来い!!!」
だが結果は残酷な物で、彼らの攻撃は当たろうが当たらまいがまったく効果はなかった。
接近した者たちから血を流し倒れていった。
1人はその鍛えられた肉体が自慢だった。また剛腕の持ち主である彼は他の兵士より大きなハンマーを使っていた。だが彼はまるで紙でも切り裂くかのように腹を裂かれ臓物を撒き散らした。
そしてまた1人は隊の中でも随一の俊足の持ち主だった。今回もその足を生かして敵の後ろに回り首を掻っ切るつもりでいたのだが、その前にその自慢の足は両足とも消し飛ぶことになった。
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気づけば無事な姿の者はいなく、辺りは血に染まっていた。部位を欠損している者が多く、そのままにしておけば出血多量で死ぬだろう。
時間にしてみれば1分足らずのことだった。たったのそれだけで屈強な兵士たちは倒された。
「シシシ!もう終わりか?それにしても物足りねえなぁ。こいつらあんまり叫ばねぇし…、行きがけに殺した兵士たちもそうだった。ええおい、お前。痛ぇかほら。」
「ぐぅっ!!」
つまらなさそうに言ながら近くに倒れていた兵士の腹を尻尾で抉る。兵士は歯を食いしばって耐えていたが、暫くすると力が抜け完全に動かなくなった。
「ちっ、死んでやんの。だーめだこりゃ。弱いし叫ばねえんならやっぱ俺が市街地の方行けば良かったぜ。」
兵士たちから興味を失ったようで頭を掻きながら視線を外へ向ける。どうやら市街地の方には彼の部下が向かったようだ。
「もう遅いか…いや、まだ間に合うか?どうせほっといても死ぬだろうしまだ時間はある。市街地で遊んでから城に向かってもいいだろ……おお!?」
外に出ようとすると、横から水の刃が高速で放たれた。それを体皮で防ごうと手を出すと、浅くではあるが切り傷がつけられ赤い血が舞った。
ここに来てから初めて受けた傷に少し驚き、水の刃が放たれた方向へと目を向ける。
「なんや自分…少し舐め過ぎちゃうかこら?」
そこには先ほど吹き飛ばされたタロウの姿があった。体のあちこちから血が出ていて、茶色の毛を赤く染めている。
だが全身の毛は逆立っており、尻尾も上向きにピンと立っている。どうやらかなり怒っているようだ。
手にはいつの間にか落としたはずの棒を手にしている。
そしてタロウの横にはバリーの姿もあった。見た目はそこまで大きな怪我はなく、その鋭い眼光はジャブダルを睨んでいる。
「確かに少し舐め過ぎている。よくもまあこんなにも暴れてくれたものだ。」
辺りに倒れている兵士を一瞥しながらバリーは言った。表情は変わらないが、静かに怒っていることが分かる。
「シシシ、俺に一撃で吹き飛ばされた爺さんと犬っころがよく吠えるなぁ。次はちゃんと殺してやるよ。」
戦闘描写が圧倒的に苦手(;´・ω・`)




