第11話 初実戦前の腹ごしらえ
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多忙につき、遅れました。なんとか1章までは間を空けないようにしたいのですが…
※マクシムの名前がちょいちょいマキシムになっていいましたので、修正しました。
そんな感じで、旅立ちまであと約2週間になった訳なんだが、今日俺はとうとう童貞を卒業する。
そう、殺しの童貞だ。
もちろん、こちらの世界でピンク色の展開などまったく望めない。いや、まだ希望を捨てた訳ではない。
この国と獣人国が例外だっただけで、他の国や種族に希望は持てる…はずだ。
取り敢えずそんなことは置いておこう。今日俺が行うことは魔獣退治だ。王都近隣の森林に赴いて魔獣狩りをするのだ。近隣の森の浅瀬には魔獣や低級の魔物がおり、特に魔獣は定期的に討伐しておかなければ繁殖して、街道に下りてきて人を襲うのだという。
まあ弱い魔獣であれば夕飯のおかずが増えるだけなのだが、強い魔獣が降りてきてしまうと、一般人にはどうすることもできない。
なので定期的に冒険者に依頼が出されて討伐される、もしくは兵士が鍛錬の一環で魔獣狩りを行うのだという。
どうでもいいけど近隣と森林って似てるな。ははは。
…いちいちどうでもいいことを挟んでしまう。可笑しなテンションだが仕方がない。
これから行うのは、いつもの鍛錬ではなく実戦だ。魔獣を相手に、命を賭けた戦いを行うのだ。さらにいえばこれから戦うのは獣である。
俺はこの世界に来てから、人間相手にしか戦ったことがない。なのでいつものような戦い方がどれだけ通用するのか分からないのだ。
緊張してしまうのは仕方ないだろう。そんな感じで、硬い表情をしていたら、ギルが近づいてきた。
「よう、ツトム!緊張してんな!」
「ああ、まあ少し…な。」
「そんなに緊張すんなよ。今回行くとこほはそんなに強い魔獣や魔物はいないしな。それに俺とマクシムのおっさんも付いていくからよ!」
今回の討伐ではギルとマクシムさん、それとタロウ師匠も付いてくるらしい。マクシムさんは騎士団を一旦引退という形になっているので鍛練をする以外今は割と暇なのだそうだ。
ギルは普段は結構自由に過ごせるらしい。羨ましい限りだ。
他のメンツは普段は別の仕事があるので旅立ちの直前までは来られないらしい。最初の顔合わせ以来サンポやグレゴリーに会っていない。
まあ旅が始まればずっと行動を合わせるわけだしいいのか。
タロウ師匠は俺の今回の戦いの評価をするために同行してくれるらしい。
直すべき点を見つけてはまた鍛練と討伐を繰り返すのだという。
「そんなことよりお前は今回城から出るの始めてだろ?」
「そういえばそうだな…。初めて城の外を見れる。」
そういえばそうだった。森まで魔獣討伐に行くということは城から出るってことだ。城下町がどのようなところか見ることかまできるのだろう。
もしかしたら観光もできるのかな…?
「行く前に城下町を回ることって出きるのか?」
「ま、城下町を自由に回るってことまではできねえけど軽く屋台で飯を買うくらいはできると思うぜ?」
「おお、やったぜ!」
どうやら屋台を回るくらいは許されるらしい。
「今回行く森林は結構近いから馬車は使わず歩いていく。城から馬車で出るなんて目立ちすぎるってワケだな。」
「そうか…、でもギルやマクシムさんは結構目立つんじゃないか?魔術師団副団長様と騎士団の分隊長だし。…ダサいローブの男とでかいおっさんだし…」
「おい、なんか後半で聞き捨てならないことが聞こえた気がするんだが?」
こういうときだけ耳がいいやつだな。
「気のせいだって気のせい。ツリーフェアリーだよ。お前のローブは格好いいって(笑)」
「…なんか最後に(笑)ってついてなかった?…まあ腹立つけどまあ今は置いておいてやろう。とでも言うと思ったかこの野郎!」
「あでっ!」
そういってギルは予備動作なしで小さな魔力弾をつくり俺の顔にぶつけてきた。痛い…。
無駄に技術の高い攻撃だ、おめぇそれ、世界狙えるぞ…
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そして俺、ギル、マクシムさん、タロウ師匠は王城から出た。
王城からでて暫くは貴族街らしく、大小様々な屋敷が並んでいた。王都にある屋敷っていうのは恐らく別邸なんだろうな。
ここら辺は道も石で綺麗に整備されており、見栄えが良い。しかし人通りはそこまで多くないようだ。
世田谷区の閑静な住宅街ってところだろうか。
そこまでは風景がほとんど変わらなかったが、しばらく歩くと塀と門があり、見張りの兵士たちが立っていた。兵士はこちらを見ると、ギルとマクシムさんの顔を確認したらしい。「お疲れ様です!」と言いながら通してくれた。
多分事前に話が通っていたのだろう。俺たちは貴族街の門を抜けた。そして…
「おぉーーー!!」
そこにはゲームで見たことのあるような活気のある町並みが広がっていた。
「さあさあどうだい兄さん!ミシルド産のトマリだ!真っ赤に熟して旨そうだろ?こいつをかじればこの暑さにも負けない体が出来ること間違いなしだ!」
「そこの旦那!灰兎のスープはどうだい?良い出汁が出て旨いぜ!!」
「奥さん、これ以上はまけらんねえよ!勘弁してくれよう。」
浅黒い肌をした半裸のおっちゃんは道行く人にトマトらしき野菜をすすめており、腹はでっぷりとしている屋台のおっちゃんはスープを売っている。そして二足歩行の熊…獣人だろうか。彼はアクセサリーを売っているようだが、客のおばちゃんから値切られている。
「すげぇ…ファンタジー感溢れる町並みだ…」
俺は感動して、思わず声をあげてしまった。異国情緒溢れるとはこのことを言うのだろう。
でもなんだろう。違和感がある…
道行く人々や売り込みをしている店の人をチラチラと観察していると理解できてきた。
女性が少なく、男性が多いのだ。
大体7割くらいは男だ。右を見ても男、左を見ても男。たまに女性と獣人。
そして男たちの3分の1くらいは皆半裸だ。見事な腹筋の人もいれば、腹はでているが、筋肉が脂肪に隠れているだけなのであろう。力士のような体型の男もいる。
…この国の住人は半裸にならないと気がすまないのだろうか。しかも大小あれど皆素晴らしい筋肉の持ち主だ。
そしてやはりというべきか、すれ違った女性のほとんどは骨太のガッシリとした体型の人が多い。太っているのとは違う、ただ頑丈そうなのである。
「やっぱりそうなのか…」
救いはないようだ。
小声で呟くと、俺の声が聞こえたらしい。ギルが不思議そうな顔で声をかけてきた。
「どうした?やっぱり元の世界とは違うか?」
「ああ、全然違う…とまでは言わないな。元の世界にもこんな感じで活気のある市場はあったしな。」
元の世界でも活気のある市場というのはまあまああった。主に観光地とかだけどな。祭りもこの雰囲気と似ている。そう答えるとマクシムさんが感心した声で言った。
「ほぉーう、そうなのか!この世界と異世界にも共通点はあるものだな!」
「はい。売っている野菜とかも元の世界にあったものに似てるなあ。ていうかあのトマリってやつまんまトマトだろ。」
そう、「トマリ」という名の野菜は見た目完全にトマトだった。その他にもいも、 かぼちゃ、ナス、キャベツなどに良く似た野菜が多く見られた。ただそれ以外には見慣れない野菜もちらほら見える。
水色をしたほうれん草のような野菜に、黒いにんじんの様な野菜など、様々なものがある。
…どんな味がするのか気にはなるけどあんまり食べたいとは思えないな。
他にも目を惹くのは、肉だ。魔獣の肉は、牛や鳥よりもよく見かける。なぜ魔獣の肉の方が多いのか、俺はギルに尋ねてみた。
「なあギル、なんで普通の肉よりも魔獣の肉の方が多いんだ?」
「ああ、単純に魔獣の肉の方が旨いんだ。それに毎日冒険者たちが常時依頼を受けて狩ってくるから供給量も多い。弱い魔獣、例えば灰兎なんかはすぐに増えるから狩り尽くしちまうこともないってワケよ。」
「ふーん、じゃああえて肉用に牛や鳥を育てる必要もないのか。」
「乳や卵を採るために飼う場合が多いな。基本的に肉にするのは年老いた牛や鳥だけだしなあ。」
「もしかして若いときの牛は食べたことないのか?」
「ああ?そんなもったいないことするやつなんざいないだろ?」
どうやら肉用に牛や鳥を育てて食べるということはないらしい。基本的に市場に出回るのは乳が出なくなった年老いた牛や鳥だけだ。日本とは違ってこの世界の老牛は多分あまり美味しくないのだろう。
それに魔獣が安価で旨い魔獣が豊富に狩れるのならあえて肉ようの牛を育てる人もいない、そういうことなのだろうな。
そう考えをまとめていると、いつの間にかマクシムさんがふらりといなくなった。いったいどうしたのだろう。
するとマクシムさんはなにやら大量の串焼きの肉を紙袋に抱えて持ってきた。どうやら買ってきてくれたらしい。
「これが魔獣化した灰兎の串焼きだ!どれ、食ってみろ!!」
そう言われて俺は串焼きを受け取り、一口食べてみる。するとあまりの旨さに声が出た。
「旨い!!」
「ガハハ!!そうだろう!!どの魔獣も魔獣化する前に比べてかなり旨味を増すのだ!」
これは本当に旨い。普通兎の肉は脂身が少なく赤身の部分は鳥のささみのような食感だ。串焼きにするとぱさぱさしてしまうはずだろう。しかしこれは噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる。これに使っている味付けは塩だけのようだが、酒か何かに漬け込んで柔らかくしてあるように感じる。
単純なのにこれだけ旨いとは、魔獣恐るべし…
「これも食ってみろ!!」
「ありがとうございます!!」
そういわれて受け取った串焼きはどうやら豚か猪のようだ。脂がかなり乗っており、太陽の光に反射し、てかてかと光っている。
一口食べると俺はこんなにも旨いのかと驚いた。かみ締めると肉の旨味が口いっぱいに広がる。脂は多いがまったくくどくない。それどころか口の中でスッととけていく。
こんなの日本の串焼きじゃあ食えないぞ!
「これも旨いですね!!」
「そうだろう、そうだろう!!それは牙猪の魔獣の肉だ。流石に灰兎よりは高いがそれでも安価な部類なのだぞ。」
「この肉が…?」
驚いた。こんなに旨い肉がどうやらここでは安い部類に入るらしい。味に関しては猪の獣臭さはまったくなく、日本のブランド豚のようだ。
これがお買い求めやすいお値段で売ってたらそら毎日買ってしまうわ。
そうして俺やマクシムさん、ギルは旨そうに串焼きを食べながら歩くが、どうやらタロウ師匠は食べないようだ。
そういえばタロウ師匠はこちらの食べ物は合わないと言っていたな。この串焼きも旨いけど味は結構濃い目だしあまり好みではないのだろう。食べ物が合わないってのは可哀相だな…
そう考えているとマクシムさんは別の袋に入っていた串焼きをタロウ師匠に渡した。
「赤牛だ。それに塩は控えめに頼んだ。これなら食えるだろう!」
「おお、こらありがたい!うれしいなあ、おおきに。」
そういうとタロウ師匠は旨そうに赤牛の肉に齧り付いている。すごい勢いだ。まるで飼い犬がたまの贅沢に牛肉を食べさせてもらった時のようだな…
…というかマクシムさんはこういった気遣いも出来るんだなあ。豪胆で大雑把な性格の人だと思っていたけど、サラッとイケメンな行動もできるみたいだ。
やだ、かっこいい…
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暫く歩くと町の広場に出た。どうやら町の中心地らしい。その広場には大きな噴水が設置されている。ライオンのような動物の顔が四方にあり、そこから水が湧き出ている。噴水の周りには色とりどりの花が飾られており、その近くでは子どもたちが走り回っている。あれは町のシンボルなのだろう。装飾にも力が入っているのが分かる。
ああ、癒されるな…
そう考えていた俺はあることに気づいた。
「あれ…、あれは女の子だよな?…普通だ。」
そう、走り回る子ども達は大体5歳くらいだろう。見た目は女の子も男の子も普通に見える。…一体女の子達は何がどうしてああなるんだ。
そう思いながら近くにいる母親らしき人をチラリと見た。ママ友であろう他の奥様方と談笑しているのだが、やはり恰幅がいい。母ちゃんって感じだな。しかし顔つき的にまだ20代半ばというところだろう。
遠い目をしているとギルが話かけてくる。
「なんかあったか?」
「ああ、いや。子どもたちの体格は普通なんだなーって思ってさ。」
「うん?そりゃそうだろう?」
ギルは不思議そうに言う。あまり言いたいことが伝わらないようだ。
「いや、この国に来てからなんだかやたらガタイの良い女性しか見てないからさ。子どももそうなのかなと思って。」
そういうとギルはこちらが言わんとすることが理解できたようだ。
「ああ、そういうことか。大体この国の女は12歳くらいからでかくなるからな。そういえば他国の女は細っこいのが多いな。あれでちゃんと子が産めるのかね。」
やはりと言うべきか、この国の女性は皆あんな感じでガタイのいい人ばかりらしい。
いいかげん気になっていたことなのでこの機会に全部聞いておこうと思い、その後もギルにこの国の女性について聞いてみた。
どうやらこの国では昔から女性の数が男性に比べて少ないそうだ。割合で言えば、女性は3~4割くらいだそうで、独身の男性も多いみたいだ。
代わりに女性は一人一人が多くの子どもを産むらしい。大体5人6人は当たり前で、10人以上産むことも珍しくないそうだ。
多分その出産に耐えられるようにと、そういった進化を遂げてきたのではないかと俺は考えた。なるほど、今までの謎が解けた…清清しい気分だ。
それと同時に俺はこの先の女性との出会い希望が見えた。救いはあったんや…、ありがとう神様。
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そうして一行は門の前に着いた。この先はしばらく街道を歩いて、森の傍まで向かう。森の前には簡易な柵があるそうだ。たまにそこから魔獣が出てきて、街道に出没することもあるそうで、門から出た時点で気は抜けない。
さて…、初めての実戦だ。魔獣や魔物相手に俺の力はどれだけ通用するだろうか。不安もあるが楽しみもある。この1ヶ月と1週間みっちり鍛錬は続けてきた。後は全力を尽くすだけだ。
「さて、行きますか!!」
そして門を通り、俺は初の町の外へと足を踏み入れたのだった。
唐突な食レポを食らえ(´・ω・`)ノ=○




