#278 落ち着かせてくれない時もあるのデス
SIDEボラーン王国:王城内
‥‥‥王位次期継承決定選挙、次期王は誰だ選挙、次期国王決定選挙、地獄を見る押し付け合い選挙等々と、あの選挙は言われていた。
次期国王になりたくないがゆえに互いに押し付け合う王子・王女たちをどうにかしつつ、国王が隠居をするために考えた行事でもあったが…‥‥いかんせん、いざ終わって見れば、各被害状況はそれなりに酷かった。
「おーい!今月中に、あと3人ほど人手を回したいのだが」
「ああ、無理だなぁ。王女様の味見で倒れたやつがいるからね」
「首都内の人口調査、少し女性比率が下がってないか?」
「王子2名を攫ったからなぁ‥‥‥しかもまだ行方不明とか、どこに向かったんだろうか」
「楽器の修理をしなければいけないが、なんでこんなに壊れているんだ?」
「さぁ?なんでも響く音で壊れていくとか‥‥‥地獄だったらしいからなぁ」
「‥‥‥被害、大きすぎますわね」
「まったくだというか、何と言うか。むしろ選挙を行わずに国王がしっかりと決めればよかったように思うんだけど」
【悔恨残さず、しっかり公平にという目的があったようですが‥‥‥流石にこの被害状況などの紙を見せてもらっただけでも、どれだけ酷いことになっているのか、わかりますよ‥‥‥】
王城内でそこかしこから聞こえてくる、城内の使用人たちの声。
あの王位選挙の爪痕は、終わってもなおまだ残っているようであった。
「まぁ、ミスティアへの期待が高まっている声も聞こえるからいいか」
【頑張ってくださいよ、ミスティアさん。私たちは政権に関われませんからね】
「出来れば関わってほしいですわね‥‥‥一蓮托生、死なばもろともと言う言葉があるらしいですので、その通りにしたいですわ」
「いや、その後者のは意味が違うような‥‥‥」
というか、その言葉って誰が残した?前世の言葉のような‥‥‥いたのだろうか、別の転生者。
‥‥‥何にしても、こうやってたわいもなく落ち着いて話せるのは良いだろう。
愚物共も当分は来ないだろうし、しばらくは穏やかな日々が続くであろうと思うし、そう考えると結構気が楽である。
ミスティアの場合は、女王となったがゆえに国政などの仕事がさっそく山積みになっていたようだが‥‥‥僕らの家族でもある彼女に、そう負担をかけるわけにもいかない。
そこで、ミニワゼシスターズを動員して、現在仕事をさらに分担し、効率化を目指し中。ゆえに、今こうして彼女もちょっとの間は楽して話せるのであった。
「それにしても、選挙中の課題進行の被害って思ったより多いな。色々と凄まじい状態だったのは分かるけど、この被害リストなどを見るだけでも相当だろうな‥‥」
わかりやすくまとめられた、被害状況報告書。
それを見せてもらいながら、思わず僕はそうつぶやいた。
【第1王女様の謎の物体料理たちの暴徒化、第5王子の音響損害、第1,2王子達を攫った人たちの捜索願…‥‥被害というべきなのでしょうか?】
「ツッコミどころが多いから、スルーしかないなぁ…‥‥」
ついでに、第3,4王子たちについての情報もまとめられているが‥‥‥やっぱり新しい国家樹立の礎として、両方とも国王の座に就くという2国王政というちょっと珍しい状況になっていた。
「ミスティアの兄や姉たち‥‥‥僕にとっては義兄姉なのだろうけれども‥‥‥なんでこうなるのか、疑問しかないなぁ」
「それを言われても困りますわよ。わたくしだって、どうしてこうなのか色々と聞きたいところですわ」
本人たちが近くにいたのだろうに、それでも彼女にとっても謎が多いらしい。
ついでに言うのであれば、その様々な騒動の種になりかねない特技等が出来た理由については、王国7不思議とやらにも登録されているそうだ。
残り6つが気になるが、そこまで言われるレベルなのかあれ…‥‥物体Xはまだわかるが。
「何にしても、お父様はこれで隠居し、現在はお母様方と共にまた温泉都市アルバスへ向かったらしいですわね」
「温泉都市か‥‥‥まぁ、隠居先と言えば妥当なのか?」
正しくは温泉ダンジョンとでもいうべき、温泉都市ネオ・オルセデス‥‥‥何かと騒動がありまくった思いでしかないな。
「ああ、そのついでなのですが、少し調べたところある事も判明しましタ」
っと、ここで僕らの会話に、すっとワゼが入って来た。
「ある事?」
「城内地図を作製し、少し調べていたのですが、王妃・側室様方の部屋の一部に、隠し部屋が判明したのデス」
「隠し部屋ねぇ‥‥‥秘密の脱出経路とか?」
「いえ、調べたところ拷問用具系統でしたが‥‥‥そこにあった登録票を調べて見ても、10点ほどないのデス」
「‥‥‥あ、なんかもうわかったような気がする」
何を言いたいのか、ちょっと理解できてしまった。
無くしたわけでもなさそうだけど、なかったという事は……持ち出されたのだろう。
それも、あの国王、いや、もうミスティアが継いでいるから前国王というべき相手に使用するために。
「‥‥‥ああ、なんかわたくしも理解しましたわ」
【私も、なんかわかりましたね…‥‥】
彼女達もないその理由を理解したようで、苦笑いを浮かべる。
まぁ、あの前国王がどうなろうが別に良いか。いや、良くないか。ちょっと冥福を祈っておこう‥‥‥
「まぁ、それは置いておくとして‥‥‥ご主人様に、ちょっと良くない情報もありマス」
「ん?」
なんか珍しく、真面目そうな声でそうワゼが告げる。
いつも騒動は良くない類だが、そういう時はあまり言わない彼女がこうハッキリというのは何やら嫌な予感を感じさせる。
「良くない情報って?」
「ここと森をつなぐ地下通路のチェック中に、ゼロツーがあるモノを発見いたしまシタ。それは一見何の変哲もないものでしたが……少々問い合わせ、聞いてみて、判明しまシタ」
「‥‥‥問い合わせて、か‥‥‥神聖国の預言者に?」
「ハイ」
あの何かと色々と怪しいというか、隠していることが多そうというか、そういう預言者。
一応、関係上は特に問題もないのでなぁなぁの付き合い程度の交流だが‥‥‥それに問い合わせてまでの代物と考えると、嫌な予感しかない。
「‥‥‥そのあるモノってなんだ?」
「‥‥‥一見、ただの剣。けれども、魔王が現れた時にひっそりと現れるらしい…‥‥『聖剣』と呼ばれる代物デス」
‥‥‥聖剣?
聖剣って‥‥‥良くゲームとかに出るような、強力な剣というか‥‥‥いや、それ以上のものだよね?
「魔王殺しの聖剣‥‥‥そんな代物が発掘されまシタ」
その言葉に、場の空気が固まったような気がするのであった‥‥‥
‥‥‥ひと騒動終えたと思ったら、間髪入れずに面倒事はやって来た。
しばし休んでくれと言いたいのに、なぜそうホイホイと来るのだろうか。
魔王、ある意味吸引力の変わらない面倒事吸引機か?
次回に続く!!
‥‥‥魔王とくれば、当然こういう代物もあるだろう。まぁ、今まで出る機会が無かったというか、何と言うか。




