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#244 待ち遠しくも焦りは禁物なのデス

SIDEシアン


‥‥‥ハクロが身籠ってから2週間。


 春も近付いてきたこの頃、どうやらようやくある時期になったようだ。


「ふむ‥‥‥殻の形成もできているようですし、そろそろ卵を産む時期デス」

【そう言われても、まだしっくりこないんですよね‥‥‥‥】

「まぁ、本能でどうにかなると思いマス」


 ハクロの質問に対し、ぽんぽんっと聴診器のような物を当てながら答えるワゼ。


 卵胎生であるアラクネは、ある程度子が中で育ったところで、卵の中に入れて排出するらしいが、どうもその時期がもう間もなくらしい。


 というか、子を身籠っているという割には…‥‥


「にしても、ハクロのお腹が大きくなったようにも見えないけど‥‥‥子供いるよね?」

「ええ、間違いないデス。まぁ、お腹と言ってもこちらの方ではなく、こっちデス」


 ハクロの上半身の人部分ではなく、下半身の蜘蛛の部分をワゼが指し示す。


 上部分は性交で、子を身籠る時はこっちの方らしい。


 というのも、お腹が大きくなると動きにくくなり、重心の関係上そうなるようになっているのだとか。


「体形の崩れなどを気にしなくても良いのは良さそうですが…‥‥そこって普段糸出してますけど、産むときに大丈夫ですの?」

「そこははっきりと言えまセン。アラクネという種族の産卵方法などを考えると、人間とは異なりさほど痛みはなさそうですが…‥‥情報によれば、たまに絶叫もあるそうデス」

【それって滅茶苦茶痛いってことでしょうか?】


 何にしても、子供もとい卵を産む時は近いらしい。


 念には念を押して、色々と態勢を整えているらしいが、待ち遠しさもある。


「まずは卵からか‥‥‥普通の出産とは違う感じなのがちょっと妙な感じがするけど、それでもやっぱりドキドキするな」

「妹なのか、弟なのか、そこがはっきりしてほしいにょ」

「ああ、将来的にわたくがも産むときがある事を考えても、やっぱり気になりますわね」


 一応、現在までにワゼが診察を行っているが、結局ハクロの中で育っている我が子の性別や種族は不明。


「誕生するまでは分かりまセン。何しろ、生命反応を確認することはできても、詳細確認センサーがはじかれてしまいますからネ。‥‥‥‥流石ご主人様の子供というべきか、驚愕すべきか…‥‥複雑デス」


 ワゼのセンサーをはじくとか、我が子何者?いやまぁ、物凄く頼もしそうな子であるなら親であればそれはそれで良いが…‥‥





 まぁ、それはそうとして経過が順調なのは良いだろう。


 あとは産卵し、抱卵し、孵化まで待つだけの手順で良いらしいが‥‥‥それでもやっぱり緊張する思いはある。


【んー、でも順調に育っているのならばいいのですが…‥‥やっぱり不安ですね】


 不安そうにしながらも、自分の蜘蛛部分のお腹をさするハクロ。


「大丈夫だとは思うけどね。僕とハクロの子だし、きっと元気な子が産まれるよ」

「まぁ、卵が先らしいですが、わたくしとしても同じ意見ですわね。‥‥‥まぁ、二人の子供と考えるとこちらとしては色々不安もありますけどね」


 ミスティアの言葉に、僕らは苦笑する。


 今代の魔王と絶世の美女の子…‥‥聞くだけでもなんか厄介そうな気がするが気にしないほうが良さそうだ。


「でもロールがお姉ちゃんになるのは決定しているにょ!だから、おかあしゃん早く産んでにょ!」

【いやいや、都合よくいきませんよ】


 ロールの言葉に、あははっと皆が笑う。


 空気も特に重くもないし、明るいこの雰囲気。


 温かさを感じるというか、前世では絶対に無かったこの空間が非常に心地よい。



「あ、そう言えばハクロの出産‥‥‥この場合産卵?とにもかくにも子供ができるのは初めてだけどさ、子育てに関しての資料とかってどの程度集まったっけ?」

「かなりの量が集まっていマス。それに、隣人で一番都合のいい方もいましたからネ」

「隣人?‥‥‥ロイヤルさんか」

「そうデス」


 この森にすむフェンリル一家、ポチの奥さんであるフェンリル。


 考えてみればあの人(?)も、もう間もなく巣立ちの時が来るとは言え、現在も子育て中らしいし、子どもに関しての知識とかもあるだろう。


 結構頼りになるし、ハクロと良い母親関係になるだろうな。



‥‥‥そう考えると、ポチに関しては父親同士になるのかな?僕は流石にあのような父親にはならない‥‥‥とは思うけどね。うん、不安しかないや。



「それは考えないほうでいいかな…‥‥とにもかくにも、何時でも万全の態勢で大丈夫ってことだよね」

「ハイ。後は、産まれてくるのを待つだけデス」


 もう間もなく産まれてくる我が子…‥‥いや、この場合卵か。


 それでもやはり、その時までリラックスしたり緊張したりと繰り返し、その時を待つ。


 春も間近だし、できればちょうどいい時ぐらいになってほしいなぁ…‥‥


【それはそうとシアン、子供の名前をどうしましょうか?】

「それもそうだよね。男の子か女の子なのか分からないけど‥‥‥候補をいくつか考えないといけないよね」

「どうなるのかわかりませんが、わたくしも名付けしたいですわね」

「ロールがお姉ちゃんとしてつけたいにょ!」



―――――――――――――――――――

SIDEドーラ(いつものシャゲシャゲ語ではなく、日本語訳でお届けいたします)


‥‥‥ハルディアの森の地下深く。和気あいあいと、シアンたちが産まれてくる我が子への名前を考えている中、ドーラはそこにいた。


 『冬季地中友の会』専用地下バー…‥‥いや、もう間もなく春になるので、閉店の時期が迫っている店である。


【あらぁドーラちゃん、久しぶりねェ】

【久しぶり】


 バーテンダーの挨拶にドーラは返し、席に着く。


【もう間もなく次の冬季まで閉店になる前に来たかったからというのもあるけど、今日はちょっとした用事があってここに来た】

【というと?】

【今代の魔王の子が出来たようで、その子供が産まれた時に備えてある程度の贈り物とかをしておきたい。フェンリル一家の方の子供はもう間もなく巣立ちだし、こちらはこちらで記念のものとかを考えているんだけど‥…何が良いだろうか?】

【うーん、難しい問題ねぇ。モゲーラさん、ボンブリーズンさん、答えられるかしら?】

【いや、無理】

【こっちにも子供がいたらいいのだが…‥‥残念ながら独身だからなぁ】


 バーテンダーの問いかけに対して、同じくここにいた他の友たちはそう答える。


【そもそも魔王の子供か…‥‥その子って魔王子とか魔王女になるのかね?】

【いや、無いだろうな。魔王はいわば一代限りで世襲制でもない。その子は普通の人生を歩める‥‥‥はずだと思いたい】

【ふーん、そういうものなのね】

【先代の魔王に関しても同様だが…‥‥いや、あの魔王は色々とひどすぎる。自分が言えた立場でもないが…‥‥その時に例があればよかったがな】

【あら?その口ぶりだと何かあったのかしら?】

【悪の魔王であった先代は確かに性欲などは普通にあった。が、確か子供はできなかったはずだ。呪いとかをぶちまけたり戦闘に関して才能を見せていたが…‥‥そっち系統は0というやつか】


 ドーラの過去…‥‥ドーラであってドーラではない者の時に、その様子はたまに見ていることがあった。


 破壊・殺戮・蹂躙を好むあの先代。性欲も確かにあったはずだが、それに見合わないほどのレベルでそっちはダメダメであったのだ。


【先代の前の先々代はどうだったかな…‥‥自分ではない自分の時の記憶とは分からないものが多いし、そこははっきりしないな】

【ややこしいわねぇ、その言い回し】


 何にしてもこのバーで良い情報は得られなさそうだなと思っていると、別の客が来店してきた。



【あれ、ドーラっち?久しぶりだなー】

【ん?ああ、ガストロンか】


 やって来たのは、この友の会の中で友人ともなったモンスター。


 本来ならば海中生活をするはずなのに、何故か地中生活に適応してしまったカニみたいなモンスター『パールクラブ』のガストロンである。


 真珠のような光沢を持ちつつ、その身は極上、殻は加工すれば一級品以上の装飾品となるモンスターでもあり、狙われることが多いのだとか。


 まぁ、案外強さはかなりのもので、そう簡単にやられることはない。


【久しぶりに見たけど、今日は何のようでここにいるのだなー?】

【ちょっと久し振りに来て相談していただけだ】

【相談?】


 とりあえずカクカクシカジカと手短に伝えると、ガストロンはその内容を理解した。


【なるほど、今代の魔王の子供誕生用の祝い品だなー。それなら抜け殻でもあげるのだなー】

【良いのか?その抜け殻ひとつで人間が眼の色変えるだろうに】

【別に良いのだなー。新しい命はめでたいし、それに今代の魔王という事は今のうちにある程度関われば面白そうなのだなー】

【あらぁ、案外打算が多いわねぇ】

【‥‥‥まぁ、正直なのは良い事か】


 何にしても、ガストロンの抜け殻を貰えるのであれば、それを加工すればいい。


【ん?でもドーラちゃんってガストロンちゃんの殻の加工が出来たかしら?植物モンスターでもあるし、火を使って加工するようなことはできないんじゃ?】

【そこは問題ない。ちょうど頼める相手もいるしな】

【ああ、たまにここで話すメイドさんかしら?…‥‥本当に何者と言いたいレベルのとんでもなさだけど、できるのかしらね】

【できるとは思う】

【メイドかー…‥‥しかもメイドゴーレムというやつだなー?どこの誰かが作ったとはわからないらしいけど‥‥‥あ、そう言えば】


 そこでふと、ガストロンが思い出したようにポンッと手を打った。


【何かあるのか?】

【その滅茶苦茶ぶりを前にも聞いたときに、どこのどいつが作ったのか興味を持った時があったのだなー。そこで実は、製作者の捜索をしたのだなー】

【‥‥‥見つかったのか?】

【無理だなー。そのメイドゴーレムの姉妹機?兄弟機?というよりも、試作機らしいものぐらいしか見つからなかったのだなー】

【十分とんでもないものをみつけているじゃないか!?】


 さらっと出されたその言葉に、思わずドーラは飲んでいたものを吹き出す。


【いや待て、なんで試作機といえるんだ?】

【こう見えても、手先は器用でね。ある程度修理して、性能を把握して見たら聞いていたのに近いかったのだなー。多分、この試作機を元にして作られたとは思うんだなー】


 カニのようなハサミの手を持ちながらも、このガストロンは意外にも手先が器用。


 ゴーレム系統の修理を行う程度の知識も持ち合わせており、密かに色々行ったらしい。


【まぁ、修理程度で主人認定は無かったのだなー。いや、その認定する機能を修理できていないというか‥‥‥今度持って行って、確認してもらうのが良さそうだなー】

【そうしたほうがいいかもな。いや、今晩にでも見せたほうがいいかもしれない】


 あのメイドゴーレムの元になったかもしれない機体の情報を聞き、ドーラは驚愕しつつもそう答える。


 とにもかくにも急いで診てもらった方がいいと思い、ガストロンの案内を受けて、抜け殻と機体を確保した後、急いでワゼの元へ向かうのであった‥‥‥‥

もう間もなく卵が出てきて、抱卵?

ああ、産まれるまで待ち遠しい。

だがしかし、どうも平穏というのはそうやすやすと滞在してくれないようで…‥‥

次回に続く!!


‥‥‥さらっととんでもない発言が出た。考えて見れば、何かを作る時って大抵その前に試作品とかを作ったりするし‥‥‥あってもおかしくは無いか。

でも、ワゼの試作品版ってどういうものなのかな?あのぶっ飛び超絶無茶苦茶ぜっぺ‥‥‥‥あ。

背後から何かスゴーイ嫌なk、(…‥‥失言、気を付けましょウ。そう書かれた文字が、残っていた)

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