#1 出会いデス
今回は今まである作品の方で出てきた方が副主人公としていますが‥‥‥主人公を忘れないように注意を呼び掛けておきます。
いや本当に、主人公よりもなぁ‥‥‥
‥‥‥‥ザーッ
…‥‥ザーッ……ザザ‥ザ
【…‥‥システムチェック開始】
【オールシステムダウン確認 >復旧作業】
……ザザザザザ、ザザーッ
【復旧完了。タダシ、一部機能ニ損傷アリ。再生不可能】
【起動ニハ、認証システム稼働ガ必要不可欠。誰カ‥‥‥‥】
―――――――――――――――――――――――――――
「うーん!!今日はいい天気だなぁ!!」
昨夜の大嵐が嘘のように、晴れ渡る空を見て、僕はそうつぶやいた。
嵐が過ぎ去った後は、どこの世界でも晴天になるようである。
前世からの中途半端な知識とはいえ、当てはまるのは良いことだ。
「さてと、せっかくだから今日は釣りにでも行こうかな」
着替えを済ませ、さっさと朝食を作って食べてから、そう僕はつぶやいた。
……前世というものがあり、僕にはその前世の記憶があった。
だがしかし、その前世と言うのは何もいいことばかりではない。
当時、それなりに裕福な家だったようだけれども、大学受験を目指すころには、家族の仲は氷河期のように冷めていた。
何しろ父親も母親も不倫し、兄がいたけれども事業を起こして失敗しまくってニート化し、色々と家庭内崩壊が起きていたからね…‥‥いや本当に、凄まじいレベルだった。
そしてある時、家族内で大喧嘩が発生し、流石に止めようとしたら…‥‥激高した父に殴り飛ばされ、刃物を持って居た母が包丁を投げつけて心臓に直撃し、トドメに兄がニート化して肥え太った身体で転んで、その重量によって圧死したからね…‥‥いや、包丁が刺さった時点で既に死んでいるようなものだけどさ。
何にせよ、気が付いたときには、何処かの森の中に僕はいた。
ここがあの世というやつなのかと思ったが、どうも違うらしい。
異世界転生というやつに近いものであろうか?一応、その手の類の本はちょっと興味があったから、こっそり読んだこともあったが…‥‥自分がそうなるとはなぁ。
何にせよ、現状把握のために動いてみると、色々とわかった。
…‥‥身体、前世に似ているけれども所々で変わってますやん。
大学受験を目指していた体は、少し若返ったのか15歳ごろの容姿になり、髪の色が黒色から白色へ……いや、白髪とはちょっと違って、どちらかと言えば銀髪に近い髪色になっていた。
目は黒目のままだけど、身長的にやや小柄に…‥‥うん、成長に期待したい。
そして、異世界転生とやらに近いものであるならば、魔法が扱えるかもしれないと、色々試した見た結果、問題しかなかった。
いやまぁ、無詠唱とか、いくら使っても魔法が衰えないとか、チートじみた物が扱えたことに関してはまだ良い。
独学で試せたし、火や水、土に木、雷と言ったオールマイティ性があったから生活面に利用すれば、身の回りにおいて余り不自由が無さそうだ。
だけど、それはまだある程度の加減を行っているからであり…‥‥全力でやった時の規模がおかしかった。
…‥‥多分まだバレていないかもしれないけれど、10日ほど前、最大威力でやってみようと思いついて、向こうに見えていた山に狙いを定め、魔法としては某戦艦の艦首にあるようなものをふざけてやってみた。
その結果、その山が見事に消し飛びました。シャレにならないじゃん!!
精々数十メートルほどに大穴が開く程度かと思っていたけれども、軌道が全く変わらず、山に大穴が開いて崩壊したんだよ!!
流石にこれは不味いと思い、騒ぎになる前に僕はより一層森の奥に逃げ、そこに一軒家を立てた。
幸いというか、頭がおかしいレベルの魔法の規模を除けば、それなりの生活に使えたのでまだよかった。
生活に不自由なものだったら、どうしていたかな……?
そんな力があるならば、何処か人のいる場所へ向かって誇示して、人を支配してやればいい?
いや、そんな目立つことはしたくない…‥‥絶対に魔王とか言われて討伐されそうだし、もしくは戦争利用されるようなこともされたくない。
ゆえに、一人暮らしを始めて見たのだが‥‥‥思いのほか、ゆったりと過ごすことができた。
まだあの『うっかり山消し飛ばし事件』から10日ほどしか経っていないが、消し飛ばした犯人を捜しに来るような輩もいないようなので、当面は大丈夫そうである。いつかは来るかもしれないが、その時に備えてごまかせるようにしておかないとね…‥‥。
何にせよ、ここは森の中なので木の実とかがあるし、前世の厳しい家のおかげで料理とかもできるので、とくに問題はない。
そんなわけで、今日は昼食に魚でも食べようと思い、僕は森の中央辺りに流れている川へ訪れた。
「さてと、良い獲物が釣れるかな?」
木の枝を折り、木の皮の繊維を編み込んで縄のようにした釣り糸を付けた釣り竿だが、案外これでもうまくいくことは数日前に検証済み。
前世で違法だった電気漁とかをやることもできるが…‥‥流石にそれは面白みがないし、この世界でも違法な可能性があるからね。
寄生虫とかの心配はあるが、しっかりと奥まで焼くし、裁くのもお手の物だ。
毒があれば終わりだが、直感で何とかやっていけるしね。
何にせよ、適当に腰かけて、それなりに深い川に落ちないように魚を待っていたその時であった。
「ん?」
ふと、川の上流を見れば、何かが流れてきていた。
なんというか、どんぶらこっこどんぶらこと、棺桶のような‥‥‥‥桃太郎の桃が棺桶になったのだろうか?
いや、物凄くシンプルな黒い箱にも見え、棺桶とは言い難いかもしれない。
なんとなく気になったので、とりあえず棺桶?のようなものを拾ってみることにした。
「『アクアテンタクルス』」
何も言わなくとも魔法は発動するが、こうやって魔法名を作って唱えたほうが発動させやすいので、とりあえず川から水の触手を生やして、流れてきた棺桶らしきものを岸辺に乗せた。
近くによって見れば、シンプルな黒い棺桶だが‥‥‥いや、棺桶なのだろうか?
開くようなところがないし、黒い墓石の可能性が出てきた。どこかの墓石が流れてきたのだろうか?
「けっこう硬いな…‥‥中に何か入っているかな?」
こんこんと、軽くたたいたその時……
ヴィ――――――ッツ!!
「うわ!?」
突然、その物体から大きな音が鳴り響いた。
【生体反応感知、システム認識…‥‥認証可能ナ対象ヲ確認】
何かこう、機械音声のような音がな鳴り、周囲に響きわたる。
【コノボックスニ触レタ者ニ警告。直チニマスター登録ヲ行ワネバ、機密保持目的デ自爆スル】
「自爆!?」
【可能半径3キロ圏内。登録ヲ推奨致シマス】
こんなことを言われたら、登録するほかあるまい。
半ば脅しのようにも思えるが…‥‥
「って、どうやって登録しろと!!」
【魔法ヲブツケケテクダサイ。魔力認識デ登録シマス】
どうやら何でもいいから魔法をぶつけてみて、そこから認証する荒業のような形式らしい。
さっきのアクアテンタクルスで完了していそうなものだが、あれはノーカウントなのだろうか?
とにもかくにも、自爆に巻き込まれるのは嫌である。
こんな危険極まりないものを釣り上げたのも自業自得なので、登録を試みることにした。
魔法をぶつけるとなると…‥‥威力を控えめにした、そう、山を一つ消し飛ばした奴よりも格段に抑えた者が良いだろう。
「だったらこれかな、魔法と言えばこれが基本のような、『ウォーターボール』!!」
流石に森の中なので、「ファイヤボール」のような火魔法は扱いにくいので、川辺という事もあって水の魔法をぶつけた。
水球が出来上がり、自爆するボックスに直撃する。
バッシャァァン!!
水がはじけ飛び、一気に爆散した。
【…‥‥魔力認識完了。マスター登録ニ必要量完了。『オープン』】
そう音声が流れたかと思うと、黒い箱が光り‥‥‥‥次の瞬間、その箱は消え失せ、代わりに何かが立っていた。
すらりとした手足に、なぜかメイド服のような衣服の女性が。
金髪のロングであり、顔立ちは整っているだろう。
ただ、よく見れば耳に当たる部分が人の耳とは異なり、何と言うかイヤホンのような形状になっていた。
「…‥‥起動完了。マスター登録によって、貴方様を私の主と認めました」
口を開き、きらりと金色に光った目をこちらに向ける。
「えっと‥‥‥‥誰?」
「私デスか?私は正式名称『万能家事戦闘人型ゴーレム01』デス。どのように私を呼ぶかについては、別に貴方様…‥‥ご主人様と呼ばせていただきますが、そちらの都合で良いデス」
「え?」
なんというか、思った以上に複雑そうな名称というか、戦闘と家事を両立させていることがおかしいような‥‥‥‥、ああ、ツッコミ力が足りない。
何にせよ、このまま呼ぶのも不便だし、何と呼んでも良さそうだ。
「それじゃ、『01』の部分からゼロイチ……ワンゼロ‥‥‥‥『ワゼ』と呼ばせてもらうよ?」
「了解デス」
びしっと敬礼したゴーレムことワゼ。
衣服がメイド服だし、色々と聞きたいことはあるが‥‥‥‥とりあえず、言えることは一つある。
絶対に面倒なものを拾っちゃったよね‥‥‥‥‥‥
……この日の事は、後に生涯忘れない日となった。
それは、平穏に暮らすという望みを木っ端みじんに砕くと同時に、これまでにない経験を与えてくれた始まりの日でもあったから‥‥‥‥
16:00にも#3を投稿予定です。
どうぞお楽しみに。