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鮮血の月

語彙力に乏しい稚拙な文章。

読みづらい文体かと思いますが、一読お願いします。

一話 鮮血の月


朧気な陽の光と共に、瞼がゆっくりと開いた。


「もう、朝か……」


気泡が混じった窓ガラスから差す、陽の光はいつも虚ろげである。


本来なら青々と澄み渡る空も、常に灰色に濁りきっている。


外の景色は、ただ暗澹と憂鬱に広がるだけで、その下に暮らす人々の声は酷く雑然としている。


野犬の声、男の怒声、女の叫声、物乞いをする男達のうめき声。


ここには、朝の静謐とした空間など、きっとどこを探してもない。


あるのは、煤けた民家と所狭しと並ぶ娼館、酒屋、バッタものを売りつける店、奴隷市場。


まともな場所は、ここには一切ない。


オルリンド王国王都ゼルドリスのスラム街。


現国王エレノア・ド・カインのお膝元であるこの都市は、エレノアで最も発展した都市であり、エレノアの貿易都市の一つでもある。


故に、沢山の物と人とで溢れかえり、風光明媚な景観と上品な賑わいを見せるこの街だが、栄える街の裏では、都市の闇とも言うべき場所が存在する。


それが、王都ゼルドリス東区。


ここは、治安維持の行き届いた他の区とは大きく乖離した、暴力と悪が蠢く無法地帯だ。


故に、この場所には、観光客は愚か、王都民でさえも寄りつくことはまずない。


というのも、ゼルドリス東区は王都の地区の一つであるにもかかわらず、憲兵などの都市の治安維持組織の執行権が適用されないからだ。




そんな場所に棲む俺は、今年で18になるが、ここでの暮らしはまだ浅い。


家族だった、両親と兄でさえも失い、頼れる親戚さえもいない、元々身寄りのなかった俺は、11の頃に(ほっとけば無秩序と化す)この東地区を実質的に取り仕切る、"鮮血の月"のボス"エレオラ"に引き取られた。


鮮血の月、それは事実上、治外法権のこの地区を存続させている組織だ。


地区内で起きた揉め事やら事件は、ここに憲兵が近寄らない分、鮮血の月が処理している。


また、地区の居住権、区内における露店や小売店などの商店の出店、土地の売買及び貸借、娼館や賭博場の管理も彼らが全て行う。


だから、当地区外の王都民からは無法地帯と言われども、鮮血の月が自治を行っている為に、ここでの犯罪や事件が他区に及ぶことは無い。


東地区が存在している要因は、鮮血の月の影響が大きいのだ。


だが、一番大きい要因としてあげるならば、やはり、鮮血の月が政府に裏で回している賄賂だと思う。


俺も、一応、関係者だから多少なりとも知っているが、娼館や奴隷商人、賭博連中からの上納金で賄っている分、相当な額が動いている。


それを考えると、鮮血の月は国家内における、かなり影響力の強い組織だと言える。


俺自身、何でこんな連中のボスに俺は引き取られたのか、今でもよく分からない。


そんな事を考えていると、厳かな紺色の絨毯が敷かれた、部屋(自室)の外から、誰かがドアをノックする音が聞こえた。


やがて、外の人間はそのまま部屋を開けるでもなく、ドア越しに俺へ伝言だけを残していった。


「ボスがお呼びだ。

一刻後に来い。」


「わかりました」


俺は静かに返事をした後、裸の体に衣服を着させた。


上はこの国の上流階級の人間がよく着る、シルクの白いシャツに、下は一般庶民の成人男性の常服でもある綿のズボンだ。


大抵は、この格好でよく過ごしている。


自室にいる時は、裸だ。


着替えを済ませた俺は、ドアを開けて、部屋を出る。


部屋を出れば、その先には木ばりの廊下と左には長く続く窓ガラスがあり、そこからは、やはり朧気な光が差して、向いに立つ各部屋のドアを幽かに照らしている。


俺は革靴で木板を蹴りながら、洗面所、キッチン、リビング、客間、と続く部屋の扉を素通りした。


やがて、少し歩いた後、俺は目の前に佇む金色の蝶番の扉を開けて、外へと出た。


(やっぱり、一人暮らしにしては大きいよな)


外へ出て、俺は自宅を前に、向いに立ち並ぶ、こじんまりとした造りの家屋達を一瞥しながら、そんな事を思っていた。


というか、庶民では金銭的に考えられない、家というより、館といった方が適切なこの建物は、エレオラが仕事でなし得た俺の功績に、報酬としてくれたものだ。


元は、別の鮮血の月の組員の家だったらしいが、その彼が別の場所に移動したため、俺に住居を譲渡する余裕が出来たそうだ。


(……っと、いけない急がないと)


そして、俺は鮮血の月のボスであるエレオラの居館に向かった。



















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