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今日も彼は治療をしています。

以前から考えていた話で、内容が煮詰まったので投稿して見ました。


王国歴998年


イグザリア王国 王都ヤサン


そこには1人の治療術師がいた。名をクラック・ガズウェル。世界的にみても、歴史的にみても最高峰の治癒術師だ。


彼の治療範囲は幅広く怪我や病気と別け隔てなく治療する事が可能。条件さえ揃えば死者を生き返らすとも言われている。


しかし、彼の治療院には患者が少ない。治療費が特別高い訳でもない。治療院の治療費は一律銀貨10枚になっている。銅貨10枚で銀貨1枚になり、市民の一般的な食事一回で銅貨5から10枚になるので、銀貨10枚で世界最高峰の治療が受けれると考えるとそう高い物でもないというのはわかる。


もちろん簡単な治療でも同じ金額になるのでそういう場合は他の治療院か薬屋を勧めている。


では何故患者が少ないのか?大きな理由は2つ。

1つは治療が一瞬で終わるから。

彼の治療魔法は病気であろうと怪我であろうと治療魔法を使うと一瞬で治してしまうので通院、あるいは入院というものが存在しないのだ。

そしてもう一つの理由は『痛い』のだ。

変な意味ではなく、純粋に痛いのだ。怪我や病気の度合いにもよるのだが、治療の一瞬に怪我や病気で経験した痛みの数倍大きい痛みを伴うものだった。

ちなみに治療なのでその痛みよる精神発狂などは起こらない、あくまで治療だからだ。

ただでさえ怪我で病気で辛いのに、治すのにそれ以上辛い思いをしなければならないと思うと二の足を踏むのはある意味当然の結果だった。


今日も彼は患者を治療しています。



「先生頼むよ〜、楽にしてやってくれや〜」

「ええ、大丈夫ですよ。すぐ楽になりますから」


クラックの治療院に珍しく怪我人が運び込まれたのはある日の午後だった。その日は天気も良く一面の晴れ空だ、気分が良くなるのは仕方がないのかも知れないがそれで油断してしまったのか、行商人が荷物置き場で作業中に荷物を崩して埋もれてしまったのだ。幸い同僚に助けられてすぐに助かった物の、落ちて来た荷物で全身の骨を数カ所骨折してしまったのだった。

周辺の住民から緊急ならと、クラックの治療院を勧められてここに来てしまったのだった。


「それでは治療を開始します」


クラックは患者を治療台の上に乗せて、その前で十字架を掲げた。この部分だけを見るとどの治療院も同じなのだが、十字架を掲げた男が身長2m程でその辺の騎士団よりも体格が良く筋肉質で、日々修羅場を生きているような強面なのでとても治療中には見えなかった。しかも掲げた十字架が男と同じくらい巨大な木製でできておりなぜか十字架の下に大剣でも支えるような柄が付いており、そこを握っていた。十字架全体に薄っすらと赤黒くなっている部分を見ると、治療というよりは懲罰官による断罪にしか見えない光景になっている。

患者の側からしてみると、今すぐ殺させそうな雰囲気を醸し出しているクラックをみて恐怖を覚えるのは至極当然の結果だった。


「神の祝福をここに」


クラックの体から後光のような神聖な光が放たれ、十字架に集まって行き、やがて十字架が目も眩むような光に包まれる。ただ、マッチョに後光が差しても単に怖いだけなのだが。

実際患者の恐怖はうなぎ登りである。

そしてクラックは十字架を上段に構えて精神統一して、目を見開き一気に振り下ろした!



「くたばれーーー!!!」


とても治療の掛け声とは思えない掛け声と共に十字架は光を纏ったまま患者に直撃し、そのまま患者を押しつぶした!


「ぎゃあああ!!!!!」


「え?…ええええええ!!!」


グシャー!という音と共に十字架下から血が飛散した。側で見ていた商人仲間も絶叫し目を疑った、この光景は異常としか見えなかったからだ。実際治療をしに来たのに、なぜか十字架による圧殺になったのだからそれは驚くだろう。

しかし、あくまでこれは治療なのだ。何故なら十字架の下から五体満足になった患者が出て来たのだから。痛みで悶絶し絶叫している以外に異常はない。

普通痛みで悶絶している時点で異常なのだが、ここではそんな常識が存在していなかった。


「ぎゃあああ!!!痛ってーーー!!!」


「治療は無事完了しました。もう大丈夫ですよ、痛みは時期に引きますからそれまでは休んでて下さい」


「え?は、はぁ。すごい痛がってますけど、本当に治ったんですか?」


「ぎゃあああ!!!!」


「ええ、治ってますよ。それに治療前の誓約書に記載してましたよ、『かなりの痛みを伴います』と」


クラックがキョトンとした顔で言っているが、この光景を見て不安になるのは当たり前だろう。

一応治療の前には確かに注意事項として誓約書に署名をしていた。内容は唯一『怪我の度合いにより、かなりの痛みを伴います』に了承する事だった。

『かなり』の部分が曖昧すぎて正直信用にかけるのだが、こればかりは明確に表せないのでどうしようもない。

そして、未だに悶絶している患者を治療台に寝かせたまま、彼は治療室を出て行った。


ちなみに今回の治療魔法は骨折部位が多かった為、全身を粉々に押しつぶし、そこから再生させるという魔法である。そして麻酔効果は無いので確実に死ぬような痛みを体験する事になる。

基本的に彼の治療魔法は筋肉神を信仰していると使用可能になる『力技治療魔法』である。病気であろうと怪我であろうと対象の箇所、或いは全身を粉々に押しつぶして再生させるというものだ。

心臓病の患者を治療する際に、胸もろとも心臓を拳で貫通させて再生させて治療した事もある。


「今日もまた、人を助けることが出来た。これも筋肉神のお導きだろう」


神官を思わせる純白の神官服を着て、その服に似つかわしくない程の筋肉を纏ったクラック・ガズウェル。厳格な神官を思わせる彼は今日も患者を治療した事による充実感を漂わせていた。

患者は今日も恐怖のどん底に叩き落とされ震えているのには気が付いていない。


魔王が復活した後、治療魔法で魔王と勇者パーティーメンバーを恐怖のどん底に叩き落とす男の話である。


今日も彼は治療をしています。

なかなか話の内容がギャグ方向にぶっ飛べないのが悩ましいです。


主人公は黒髪短髪、神官服を愛用しており筋肉質で強面という設定です。子供好きだったり治療に喜びを感じたりしており、見た目は優しいヤ◯ザみたいな感じです。

筋肉神という、マイナーな神様を信仰しており毎日のストレッチ、筋トレ、十字架素振りは欠かさず行なっている。

グラマーでドSかドMの看護師さんを所属させようかとも思いましたが、話の収集がつかなくなりそうで辞めました。

勇者パーティーでは回復役として参加するが、痛みのせいで恐怖の対象になる。それでも回復役としては、優秀な為外さない。

魔王の正体が魔素に汚染された過去の英雄だと判明後、勇者を治療するのが目的になる。しかし、治療の際の痛みがどうなるか不明な為魔王がビビり治療を拒否する。というような話があったら面白いかなぁ?と思いつつ書いてます。


ここまで読んで頂きありがとうございます。クスッとでも笑って頂ければ幸いです。

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