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犬女ちゃんと花火

晩御飯は、

純心母がつくって振る舞った。


お嬢様は別荘の使用人に、

食事の準備をしてもらう

つもりだったらしいが、

ご馳走にまでなっては申し訳ないと、

食事はすべて純心母と女子達が

つくることにしていた。


普段は豪快で開放的な母だが、

こういうところは意外に律儀であった。


そういうことを気にしない人は、

きちんとした人付き合いをしていけない、

と母は言っていたが、

おそらく純心には理解出来ていないだろう。



大きなテーブルで、

一同が一緒にご飯を食べる。


犬女ちゃんの犬食いを、

ちびっ子達が真似しては、

教育上良くないということで、

どうするかということになったが、

犬女ちゃんだけ床で食べて

もらうのも可哀想なので、

結局、アーンしている犬女ちゃんに、

純心が食べさせてあげることになった。


それも、ちびっ子達が犬女ちゃんの

アーンを真似してしまったため、

お母さんと大きいお姉ちゃん達が、

食べさせてあげることになってしまった。


この辺りは今後犬女ちゃんが

いろいろな人や場所で、

食事をしていく上での課題でもある。

こうした食事のマナーが克服出来れば、

いずれは一緒に外食することも

出来るようになるかもしれない、

純心はそんなことを思っていた。


-


食事が終わった後は、

みんなで庭に出て花火をすることに。


花火大会で見た

打ち上げ花火もよかったが、

手持ち花火も楽しいものである。


ちびっ子達は、花火に大喜び。

犬女ちゃんも尻尾を振って喜んでいるし、

女子中高生達もはしゃいでいる。


手で花火を持てない犬女ちゃんは、

口に咥えて花火を持つ。

顔を火傷したりしないのか、

純心は過保護に心配したりする。



地面を走り回るネズミ花火。

動くものにつられてしまう

習性がある犬女ちゃんは、

ネズミ花火を追いかけ回す。


ちびっ子達も喜んで、

犬女ちゃんの後を追って走り回る。


突然ネズミ花火が破裂する音に、

みんなが体をびくんと

飛び上がらせて驚いた。


犬女ちゃんもちびっ子達も、

リアクションが一緒で微笑ましい。



追いかけていたネズミ花火が、

四歳児のユウちゃんとユアちゃんに

向かって突っ込んで来て、

二人は慌てて泣きながら逃げる。


二人は、そばにいた犬女ちゃんに、

「いぬおんなたーん」と

泣きながら抱き着く。


犬女ちゃんは、そんな幼児二人を

一緒に抱きしめてあげる。


犬女ちゃんも母性本能を

刺激されまくっているようだ。


まるで小さい頃に、自分と犬女ちゃんが、

泣きながら母に抱き着いたときのようだと、

犬女ちゃんのその姿に、母の面影を重ねる純心。


その母は今、

マイちゃん、ミイちゃんと一緒に、優しい笑顔で、

次の花火は何にするか、話をしている。



それからもロケット花火を打ち上げたときの、

ヒューという音に驚いたり、

打ち上げ花火の音にびっくりしたり、

ほぼちびっ子達と同じ反応を見せる犬女ちゃん


純心はそんな犬女ちゃんを微笑ましく見守りつつ、

記憶の欠片を見つけていた。


小さい頃、犬女ちゃんとおばあちゃんと

おばあちゃん家の庭で、花火をしていた思い出。


あのときも本当は母も一緒にいたのだ。

自分が思い出せていなかっただけで。


もしかしたら本当はその場に

父親もいたのかもしれない。

今の自分には父の姿が、

思い出せていないだけで。


そう思うと、自分の小さい頃の過去も、

そんなにはひどくないようにも思える。

少なくとも、毎日いつも

みなが泣いていたわけではないのだから。



この夏、短い間だったが一緒に過ごして、

母との思い出をだいぶ取り戻せた純心。

素直には言えないが、

思い出せてやはり良かったと思う。


しかし母ももうじき、

日本を離れ、海外に戻って行くだろう。

こうして一緒にいられるのも、

後残りわずかだ。



花火の最後はやはり線香花火だ。


線香花火をすると

何故かせつなくなってくる。

それはあまりにも儚いからだろうか。

ほぼすべての人が感じ、

思うことであろうし、

純心もそう感じていた。






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