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犬女ちゃんとお嬢様

純心と犬女ちゃんが、

散歩を続けていると、

対面から大型犬を連れた

美しい女性が歩いてくる。

それは遠目から見ても

美しい女性であることがわかった。


純心の鼓動は高鳴った。

その女性が近づくにつれ、

鼓動が早くなる。


緊張と、意識し過ぎで、

歩いている自分の動作が

おかしくなっている。


その女性は、気品に溢れ、

上品さに満ち満ちており、

一目見てどこかのお嬢様だ

ということもわかった。


金髪碧眼で色白。

フランス人形がそのまま

人間になったような容姿。


光り輝くオーラを

放っているようでもあり、

まるで女神か天使のように、

純心には見えた。


こんな美しい女性が、

自分の横を通り過ぎる、

そして通り過ぎたら、

二度と会えなくなってしまう。


声をかけたかったが、

そんな勇気が純心にあるわけもなく。

ただ行き過ぎるのを

ずっと見つめているだけだろう。


純心はそう思って、

胸がせつなくなるのを感じつつ、

どうにも出来ない自分に

もどかしさを覚えていた。



しかしその時、

お嬢様が連れている大型犬が、

犬女ちゃんに吠えはじめた。

犬女ちゃんも身構えて、

低い唸り声を上げた。


「これ、おやめなさい」

お嬢様は大型犬のリードを引っ張り、

落ち着かせようとする。


「本当にすいません。

普段はおとなしい子なのですが、

あなたが連れている犬女さんに

一目惚れをしてしまったようで。」


お嬢様は純心にそう言ったが、

純心はお嬢様に見惚れていて、

よく聞いていなかった。


お嬢様が連れている大型犬は、

ハッハッと息を荒げながら、

犬女ちゃんをじっと見つめている。


人間も犬もオスはあまり

たいして変わらないようだ。


「こんなに可愛い犬女さん、

私もはじめて見ました」

お嬢様は犬女ちゃんを

まじまじと見つめそう言った。


『あなたのほうが、よほど美しいですよ』

暗くて人見知りの純心が、

そんな気の利いたセリフを言えるはずもなく、

そこから先は緊張して何を話したか

よく覚えていなかった。


「まぁ、そうなんですね。

おばあ様の形見の犬女さんなんですね。」


「え、ええ、そうなんですよ。

このまま引き取り手がいなければ、

保健所で殺処分にされてしまうかも

しれないということで。」


「それではあまりに可哀想なので、

おばあちゃんの形見ということもあって、

家で引き取ることにしたんです。」


「まぁ、お優しいんですね。立派ですわ。」


純心は好きな女子の前で、少し話を盛った。

まぁ年頃の男子にはよくあることだ。



純心と話していて、

何が楽しかったのかよくわからないが、

お嬢様はそのまま純心と近くの公園に行って、

しばらく話し込んだ。


公園で、お嬢様がリードを

外してしまったため、

犬女ちゃんはひたすら大型犬に

追いかけまくられた。


大型犬は犬女ちゃんに抱き着くと、

すぐに腰をかくかくさせて来るため、

犬女ちゃんは、蹴っ飛ばして必死に逃げた。



お嬢様はその容姿だけでなく、

その声も聞いていて耳心地よく、

純心にとってはまさに

夢のような時間であった。


「私、毎朝あの時間に、

うちの子とお散歩をしておりますの。

また是非お話をしてくださいませんか。」

お嬢様は顔を赤らめ、

少し照れて、はにかみながら、

純心にそう言った。


「は、はは、はい!喜んで!」

純心は緊張して噛みまくりながら応えた。


「よかった」

お嬢様が照れながら、

嬉しそうな顔をすると、

純心は悶絶死しそうなぐらいに萌えた。


純心は今までで、この時ほど、

犬女ちゃんを引き取ってよかったと

思ったことはなかった。


当の犬女ちゃんは、

大型犬にずっと追い回され、

ひたすら必死に逃げていた。



別れ際に、純心が名前を尋ねると、

お嬢様は『遥』と名乗った。

そして、お嬢様は純心の名前を

とっても素敵な名前だと言ってくれた。


純心は明日またお嬢様に会えると思うと、

なんだか幸せな気分だった。



こうして純心は、

犬女ちゃんのお陰で、

一目惚れしたお嬢様と、

仲良くなることが出来た。


その日は、特別にいい肉を

犬女ちゃんのご飯に出してあげて、

いつもより優しく世話をしてあげる純心だった。






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